恋猫ワルツ
使用お題よっつ
「恋はするものじゃない。されるものだ」
扉のむこうから聞こえてきたあいつの言葉にぎしりと胸が痛む。
前世っていうものがある事は物心つく前からわかっていた。
僕の前世は異国の兵士でいつだって戦争が終わることを望んでた。
あいつは敵国の兵士で、僕の国に捕虜として捕らえられていた。キツい折れない眼差しが今も変わらない。
もちろん、今は関係ないし、こんなことを言うほど馬鹿でもない。
今は平和な時代で平和な国で生活しているんだから。
「あー。帰ってたんだ。おかえり」
通話を終えたらしい電話をポケットに突っ込みながらにんまり笑うあいつは僕のために働く家政夫だ。
態度は悪いし、外見だってちゃらちゃらしている。
「……ただいま」
今だって悪びれることなくにやついている。
雇い主の僕の方が気まずげに自室に駆け込むのだ。理不尽だ。
「風呂と飯どっちが先だ?」
「少し、休憩してからお風呂」
「さっさと風呂済ませてから休めよ」
リモコンを押す音は自動給湯だろう。ジャケットをヒョイっと奪っていく姿は自然だ。
「どこにもたれたんだよ」
シワと汚れで判断したんだろう。
「公園のベンチ」
「イイけどなー。んじゃ、これ洗濯な」
僕は一人暮らしをしたことがない。
普段いない両親に出掛けていることの多い兄や姉。一人暮らししているようなものに感じていたけれど、祖父母の代より以前からうちの家に仕えている使用人一門がいた。
あいつはその中の一人で、落ちこぼれだったと言える。そう、俺様な性格で誰かに仕えることに向かなさ過ぎて。
僕は僕の家で落ちこぼれだった。
特に能力もなく、人を使うことも下手でうまく立ち回れない。
僕の家族は僕にセキュリティの高い家と数人の使用人を付けて「自由にしていてかまわないよ」と放任した。多分守られている。
見つけたバイトは書店の店番。
労働してみたいと言うワガママを家族にきいてもらったんだ。
少しづつ世話をしてくれる使用人を減らして、今はあいつだけ。
落ちこぼれ同士だ。
服を脱がされて入浴を手伝われる。
お仕事で外の人と会話するようになってそれがオカシイことを知った。
「一人でやると洗いそびれっだろ。大人しくしろ」
普通を覚えていきたい僕の言葉にあいつがそう言って耳の裏を指の腹でなぞる。
びくりと背筋に震えが走って反応できなくなる。そんな僕を当然のように見下ろして洗いあげるのだ。
だから僕はいまだに一人でお風呂にも入れない。
「ほーんとなんにもできねーよな」
今世で出会ってからずっとあいつは僕にそう言い続ける。僕は否定できずにただ俯く。
僕よりも僕の身体をあいつの方が知っている。
身体があいつの動きに逆らわない。
前世での出会い。
今生での出会い。
僕は彼に恋し続けている。
一方通行にしか見えなくてどこまでも切なくて滲む甘さにすがる。
醜いね。
君の掌でワルツを踊るほどの器用さが無垢さが欲しい。
恋の罪悪感に揺れるその瞳に、あの人の影を見る。
「おい。のぼせるぞ」
ゆるく頬を抓られてぱちりと目を瞬く。
ついでとばかりに自分も入浴を楽しむ君は猫のよう。
愛だの恋だの言わないけれど、きっと僕は君を手放さない。
君は今だって僕の虜囚。
あなたは5分以内に12RTされたら、兵士×捕虜の設定で前世の記憶を持ったふたりが再会する話の漫画または小説を書きます。
https://shindanmaker.com/293935
お題は
"一方通行にしか見えなくて"
"君の掌でワルツを"
"罪悪感に揺れるその瞳に、あの人の影をみる"
です
#karetahana
https://shindanmaker.com/698412
職業BLのキャラだったら
身長:166cm
職業:本屋の店員
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