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自縄遊戯  作者: とにあ
287/419

覚めない夢

使用お題ふたつ

 目覚めない夢の中でもがくように俯いて生きてきた。

 いきなり貴方は消えてしまった。

 貴方の囁く愛の言葉も記憶のノイズにかき消されていく。

 私の何が悪かったのかと繰り返し繰り返し自分の醜悪さを暴いて棄てられた理由を自分に理解させる。

 それは終わることのない自殺。

 肉体の傷は伴わない自傷。

 バスから吐き出されて見知らぬ場所。

 体を生かすための仕事のさなか。

 見知らぬ場所で私は涙をこぼす。

 呼吸できない。

 苦しい。

 公園のベンチに座って子供を見守る姿に立っていられないぐらいに震えて震えてしかたない。

 視線に気がついたのか、貴方が顔を上げる。

 慌てた表情で貴方が走ってくる。

 どうしてと追求する言葉も出ず、ただ私は見ているだけ。

「どこか、具合が悪いんですか?」

 掛けられた声は凍てつくのに十分な他人の声。

「あの、とりあえず座って、落ちついてみましょう?」

 手を引いてベンチに座らされる。

 手のぬくもりは確かに貴方なの。

 どうして、どうして?

 これはまぼろし?

 現実?

「お兄様。そのおばさんダレ?」

 冷ややかな少女の声。

 美少女が、そこにいた。





 公園で再会出来た貴方は私を覚えていなかった。

 それでも貴方は優しくて私の心を生き返らせた。

 もしかしたらそれはとても残酷かもしれない。

 今の貴方を私は何も知らない。

 貴方は時おりあの再会の公園にいた。

 ラフな服装でいなかったはずの妹さんの面倒をみている。

「……あの、やっぱり彼氏さんとかいますよねぇ」

 困惑し歯切れ悪い言葉は学生時代の貴方の告白の焼き直しのようで。

「ああ、泣かないでください。あー、その、あの日、初対面だとはわかっていたんですが、目が離せなくて。その、泣かせたままでいさせたくなくて。ほんと、今思えばあやしいですよね」

 何か返そうとする私の言葉を遮る手の動きに私は甘える。

「好きです。答えを下さるなら、すみませんが、これまでの人生すべてを捨ててもらうことになるので、答えないでくださいね。僕の自己満足です。ごめんなさい」




「どうしたっていうのよ」

 ツンっとした美少女が紅の筆を持って睨んでくる。

「思い出していたの」

「すべてを捨てろって言われてあっさり頷く人間なんて信じられないわね」

「だって、あの人はあの人だもの。私はただ、あの人がいない場所では生きていけないの」

「……。そうね。お兄様もあなたを忘れるぐらいならすべてを忘れてかまわないって言ってたもの。この星をはなれるって最後の思い出づくりにあの公園に行ったのに。あーぁ、なんて執念かしら!」

 彼女はこの星の外に生まれた存在で、家出した姉を迎えに来てあの人を見つけたのだ。

 当の姉は亡くなり末裔であるあの人がいた。

「お兄様は私達よりだもの。連れて帰らなきゃいけないの」

 記憶を消して帰るのが当たり前と洗脳したと悪びれることなく笑う。

「ごめんね」

 貴方は困ったように笑う。

「私は貴方が好き。貴方に棄てられたら生きていけないの。私は身勝手なのよ」

「もう、忘れたりしない。愛してる。君だけを」

 私達の故郷はもはや遠い。

 それでも私は貴方と共にいられるの。



「行方不明になった恋人を見つけ出したら洗脳されている」状況を全力でハッピーエンドにしてください。

クリアできた貴方の人間レベルは【43】です。

#バッドエンドを覆せ

https://shindanmaker.com/716282

与えられたお題は

「目覚めない」「夢」「自傷」

です。頑張って混ぜてください。

#3つのお題で創作

https://shindanmaker.com/716352



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