止まらぬ風
使用お題ふたつ
『なぁ。どうして人の為に呪術を使うんだ。穢れがこびりつくのに』
仔犬が店主を見上げて小首を傾げる。あざとくもかわいいその姿に店主は甘く相好を崩す。
「すり減るからね。すり減って穢れすら残さず磨耗しきってしまう。誰かを煌めかせるために磨耗していく者への救済と言いたいところだが、自己満足だね」
人の為にと言いつつ、一転させ自分のためと歌った店主に仔犬が吠える。
『感心したのに! 感心したのに!』
店主はきゃんきゃんと吠える仔犬を抱き上げて頬ずりをする。
「ああ。本当に可愛らしい!」
前半部分も真実だが、自分のためというのも真実なのだと店主は笑う。
『呪術を正しく使えば穢れから遠ざかるのに!』
「ああ。そうだね。そして人からも遠ざかる」
『穢れ続けて磨耗するより正しいだろう!?』
吠える仔犬をなだめるように撫でながら店主が笑う。
「優しい子だね。人に添うことこそが選らんだ正しさなんだよ。穢れ過ぎても人から遠ざかる。それでも人に添っていけるんだ。いつか人に添っていけるんだ」
『……吾には、吾には、添うコトはないと言いよるか?』
「君に?」
本当に思いつきもしないことを言われたかのように目を見開いた店主に仔犬は焦れて怒りを含ませた唸りをあげる。
『そう。吾にだ』
「おかしなことを言うね。君は穢れてはいけない存在だ。はじめから遠いし、いくらなんでも君を穢れに染めたりするコトはできないよ。いつまでも美しいかわいいまま変わらずにいてくれないと」
取るに足らぬとばかりに聞かぬ店主にギリと仔犬の目に赤い光が灯る。
『吾は、そなたに添うと定めた。変えはせぬぞ!』
吠えたてながら撫でられた手を荒く振り払い、すっと立ち上がる。そこに立つのは一人の娘。茶の髪を色布で結い上げ蔓帯紋の羽織りを纏った赤い目の娘。爛々と光る眼は怒りを湛えている。
「吾はそなたの穢れを喰らおう。吾がそなたと共にあれるように」
「君は……」
店主は何かを語りかけて、面白くて仕方ないとばかりに笑いだす。仔犬が変じた娘が心許なげに視線を揺らす。
「なにがおかしい。今の吾に尾や耳が立ち残っているとでもいやるか」
「いいや。いいや。実によく変化しているとも。しかしね。穢れ続けてもはや戻れないし、君にはふさわしくないのだけどね」
「瑣末なことぞ。吾が求めたことよ。吾にふさわしきかは吾が決める!」
吠ゆる娘に店主はただただ楽しげに笑う。
「でも、人の為に呪術をふるうよ。君に口出しはさせない」
「吾も手伝う。吾は勝手に決めるからな!」
「やめろ」
「やめぬ。吾は穢れることを畏れたりせぬ」
「ダメだ。君は変わってはいけない。穢れてはいけない。かわいい無垢なままでいて欲しい」
「愚かだ。風が回ればそれが止まるを覚えるのは死の時ぞ」
視線が混じる。
「吾は定めた。これは吾が定めたことぞ」
「共にあろ」
神狼です。茶色の髪、赤色の瞳を持ち、蔓帯紋の羽織に着物をまとってリボンで髪を結った妖です。とある人間に命を救われたことがあります。
#和風幻想譚
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呪術師です。人懐っこい雰囲気ですが、たまに黒いです。真っ黒です。居候の妖の面倒を見ています。
象徴する植物は【アネモネ】です。
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