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自縄遊戯  作者: とにあ
279/419

甘味好きな梟

使用お題ふたつ

 ふわり甘い香りが街に満ちているかのようだった。

「チョコっぽい匂いの危険溶剤だろうか?」

「間違いなくチョコですよ。今日のオススメデザートはエクレアです」

 探偵事務所の所長だと言う女性が不思議そうに頭を傾ける。

「今日はバレンタインで女性がチョコを贈る日だったかな」

「世界的には感謝を伝えたり、プロポーズしたりする日だとか。男女問わず」

「今日はチョコはもういいよ。妹がキッチンをチョコまみれにしてヒドイものだ。私はもちろん、参加しなかったとも」

 僕は大変でしたねと他のデザート候補を勧める。

「ラズベリーのムースとオレンジショコラのタルトがありますが」

「そうだね。スパイスティでしめて欲しいな。頼めるかい?」

 甘いのは気分じゃないと彼女は笑う。

「では、チーズを添えましょう」

「てんちょー、はっぴーバレンタイン。いっつもありがとーお」

 どーんと飛び込んできたのはキュートな梟の着ぐるみ少女。

 差し出された箱からは甘い香り。

「上手ではないけどさ。レシピ通りに作ったから!」

 くらくらするほど嬉しい。

 僕はそっとカフェオレとチョコレートエクレアをカウンターの定位置におさまった彼女に差し出す。

「ハッピーバレンタイン。いつも、来てくださってありがとうございます」

「ぉお。美味しそうなチョコエクレア!」

 器用に羽先の一部を外し、手を露出させエクレアを頬張りかけて、動きが止まった。

「てんちょーは箱開けてくんないの?」

 見えないけれど、ものすごく見上げられてるイメージに心臓が止まりそうになる。

 箱を開けるとなお甘い香りが広がる。

 チョコレートとナッツ、ビスケット、ビスコッティかな?

「料理は苦手なんだ。買った方がいいかとも思ったけど、てんちょーに……ぅ、あああああ。やっぱりいい。食べないで。返して。ダメだ。きっと美味しくないんだもん!」

 奪い取られる前に一口放り込む。

 絶叫とテーブルを殴る音が聞こえる。

 砂糖が多いのか、愛情投入が過多なのかとてつもなく甘い。

「甘いですね」

 コレが君の気持ちだと言うのならそれは僕を甘く蕩かせる。

「とても嬉しいです」

「……うん」

 俯く梟の頭に思うことは、どんどん、その着ぐるみの下が気になってくるということ。

 笑って、くれてるのだろうか?

 照れているんだろうか?

 エクレアが魔法のように消える。

「てんちょー! これすっごく美味しい!!」

てんちょーが作ったのは甘いエクレア。昔の記憶を辿って作ってみた。優しい味わいで、食べた人は二度と忘れられなくなる。

https://shindanmaker.com/704024

きぐるみ女が作ったのは激甘のビスコッティ。ネットで検索したレシピで作った。言葉で形容しがたい味わいで、食べた人は穏やかな気持ちになる。

https://shindanmaker.com/704024



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