甘味好きな梟
使用お題ふたつ
ふわり甘い香りが街に満ちているかのようだった。
「チョコっぽい匂いの危険溶剤だろうか?」
「間違いなくチョコですよ。今日のオススメデザートはエクレアです」
探偵事務所の所長だと言う女性が不思議そうに頭を傾ける。
「今日はバレンタインで女性がチョコを贈る日だったかな」
「世界的には感謝を伝えたり、プロポーズしたりする日だとか。男女問わず」
「今日はチョコはもういいよ。妹がキッチンをチョコまみれにしてヒドイものだ。私はもちろん、参加しなかったとも」
僕は大変でしたねと他のデザート候補を勧める。
「ラズベリーのムースとオレンジショコラのタルトがありますが」
「そうだね。スパイスティでしめて欲しいな。頼めるかい?」
甘いのは気分じゃないと彼女は笑う。
「では、チーズを添えましょう」
「てんちょー、はっぴーバレンタイン。いっつもありがとーお」
どーんと飛び込んできたのはキュートな梟の着ぐるみ少女。
差し出された箱からは甘い香り。
「上手ではないけどさ。レシピ通りに作ったから!」
くらくらするほど嬉しい。
僕はそっとカフェオレとチョコレートエクレアをカウンターの定位置におさまった彼女に差し出す。
「ハッピーバレンタイン。いつも、来てくださってありがとうございます」
「ぉお。美味しそうなチョコエクレア!」
器用に羽先の一部を外し、手を露出させエクレアを頬張りかけて、動きが止まった。
「てんちょーは箱開けてくんないの?」
見えないけれど、ものすごく見上げられてるイメージに心臓が止まりそうになる。
箱を開けるとなお甘い香りが広がる。
チョコレートとナッツ、ビスケット、ビスコッティかな?
「料理は苦手なんだ。買った方がいいかとも思ったけど、てんちょーに……ぅ、あああああ。やっぱりいい。食べないで。返して。ダメだ。きっと美味しくないんだもん!」
奪い取られる前に一口放り込む。
絶叫とテーブルを殴る音が聞こえる。
砂糖が多いのか、愛情投入が過多なのかとてつもなく甘い。
「甘いですね」
コレが君の気持ちだと言うのならそれは僕を甘く蕩かせる。
「とても嬉しいです」
「……うん」
俯く梟の頭に思うことは、どんどん、その着ぐるみの下が気になってくるということ。
笑って、くれてるのだろうか?
照れているんだろうか?
エクレアが魔法のように消える。
「てんちょー! これすっごく美味しい!!」
てんちょーが作ったのは甘いエクレア。昔の記憶を辿って作ってみた。優しい味わいで、食べた人は二度と忘れられなくなる。
https://shindanmaker.com/704024
きぐるみ女が作ったのは激甘のビスコッティ。ネットで検索したレシピで作った。言葉で形容しがたい味わいで、食べた人は穏やかな気持ちになる。
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