前世を思い出した私は前世の私に感謝を捧げる家族に囲まれツライです。
使用お題ひとつ
青い澄んだ空を見上げて思うことは、私、あそこから落ちたんだなってことでした。
起き上がろうと動かした手がとても軽くてそして小さくて意識が一気に覚醒しました。
身体が縮んだ訳ではなく、私は死んで生まれ変わって生きていると言う夢想なのか事実なのかわからない状況に身体を起こせば、私はほんとうにまだ小さくて、落ちたらしい場所は高くて、生きているのが不思議なくらいです。
覚醒とともに私は流民の家族のひとりで流れついた街であぶれ仕事をする両親や兄姉の手伝いをしようと森に入り込んだと把握することができました。
森に自生するツル植物のコブや根を持ち帰るつもりで、そのツルを引っぱった勢いで崖下に落ちたという現実を。
足元にはちぎれたツル植物が散乱しています。
私の知っている植物です。
大地の魔力を分解して成長する繁殖重視の植物です。
魔力の強い地なら適度な魔力の分解に使えて、それを主食に据えるとその身体は魔力を成長させられない器へと成長をするので、最終的に魔力を生体存在の基礎とする魔力種を弱体化、および素体維持不能に追い込む兵器植物です。
街でも魔法使いは食べようとしない食材だったとちゃんと記憶してます。
私の家は大家族の貧乏さんですからがっつり主食に採用していましたね。
まぁ、前世は前世。今世は今世。
思い出せる範囲に私を殺そうとする母も面倒ごとを持ってきてはなんとかしろと言う父も、いないんです。
今の私は今の私らしく生きていくだけです。
そんなことを考えていた私は半日もたたないうちに頭を抱えることになりました。
持って帰ったツル植物を母や姉弟妹が喜びます。
うれしくてヘラヘラしていたのですが、コレ、ずいぶんと植物の影響下にある家族ということですね。
植物自体も強い繁殖力を持ちます。
強い魔力を溜め込む前に数倍の次世代に存在する力を譲るのです。もちろん、それを主食に据えるということはその性質を子に伝え特化していくということです。
魔力を存在する必要分しか保有できない数だけはいる私達家族の位置はどこまでも最底辺にしか位置取れません。
この世界は魔力を保持する量が多い者ほど長く強く生きるというコトワリの中で廻っているのですから。
祖父母、両親、三人の姉、三人の兄、四人の弟、二人の妹、母の腹部は次の出産を待っている。
上の姉は二児の母。
魔力を保持する体を持たない私達家族の先は何処までも最底辺。
思い出さなければ、これまで通り家族のいる幸せに笑っていられたのでしょうか?
理不尽に泣いても傷ついても、「生きてる」それだけを感謝して生きていけたのでしょうか?
私は姉が連れ帰った子供達をかわいいと無邪気に笑って迎えました。
貧しい家族に娘は商品でもあるのです。
食事に疑問を持たずに生きて、笑って迎えました。
理解してもそれ以外の反応を求められていないことはわかっているんです。
私は前世と違い、家族を愛おしいと想い、絆を感じている幸せを知っているのです。
この家族には、前世では縁遠かった家族の愛が、肯定が、感じられたから。
過去を、前世を思い出した私は変えていきたいと最底辺を這いずり他の姉や妹達が父のわからない子を抱く姿を見たくない。そして、もちろん自分自身が蹂躙されたくない。
私は自分の浅ましさがこの家族にふさわしいと思えずぼんやりと聞こえてきた言葉に反応が遅れたんです。
「聖女の祝福を採ってきてくれてねぇ」
それは私が採ってきたツル植物。ツルの膨らみを茹で上げて潰したり、スープにしたり。そのツルも葉もそれぞれに歯ごたえが違って楽しめることから食卓は『ソレ』一色です。食べられる他の採取物は上の兄が売りに行きました。なんとなく買い叩かれたんだろうなと思います。家族は臨時収入に嬉しそうでしたけどね。
ところで聖女の祝福ってなんですか?
上の兄をじっと見てみればにこにこと食卓を示して、
「おまえが採ってきてくれた植物はマグレッチェの祝福って呼ばれててな、大昔、定住できない人々の為、聖マグレッチェがくだされた作物なんだよ。救世の聖女の恵みとか、祝福って呼ばれているんだ。ありがたいよなぁ」
そう祈る兄に私は思うんです。
兵器だからね。と。そして、前世に私は確かにマグレッチェという名前でしたが、聖女などではありませんでした。
時代の時の流れっておそろしいと真剣に思います。
そう、私の家族を生き延びさせ、そして最底辺を這いずる道しか残さないこの植物は前世の私が創り出したんです。
魔力種を滅ぼすためでした。確か父の政策でしたか。
父の期待に応えればいつか、いつか認めてもらえるのではないかと信じて信じて裏切られて裏切られて誰も信じることができない前世。
「どうした?」
「明日も行くならお姉ちゃんも一緒に行くからね」
最底辺だけど、家族は無造作に手を伸ばして抱きしめてくれるんです。
しあわせだと思うから変えたいんでしょうか?
ふわふわと思考が踊ります。
幼い私の意識が目覚め私は眠るのでしょうか。
鈍い痛みに目覚めた私は状況がわかりません。
姉達に手を引かれ街中に連れられてきた私は意外に多い冒険者達の存在に興味深々、彼らに撫でられて笑っていたはずです。笑ってられる状況ではないじゃないですか。私に危機管理能力はないようでした。
「お口がお留守だよ。マグレッチェ」
「ねぇ、マグレッチェの中って温かいねぇ」
居るはずのない二人の声です。
「だって、マグレッチェ起きたでしょ。俺らはマグレッチェの魂と契約してるんだからね。ちゃんと飲み込んで吐いたりしちゃダメだよ?」
叩き込まれるのは魔力の強力な流れです。分解植物を主食に生きてきたこの体には過剰すぎて死ぬかと思うほどです。
二人は前世私が使い魔として使っていた魔力種源精獣です。
「俺らが来たの意外?」
頭を抑えられ身体中を撫でまわされて中は魔力の強力な暴走で朦朧と私が壊された感があります。
今の私は壊れてしまったというのでしょうか?
私の感じた記憶、見た記憶すら断片化されて拾い集めようにも動けずすり抜けていくのです。
「ここは休眠期とはいえ魔王の領域だ。マグレッチェには危険だし、俺らと共に在れる程度には力を戻してもらわないとな」
私の意見など聞く気のないサラマンダーの言葉に被せるようにコカトリスの声も聞こえてきます。
「この辺、マグレッチェのツル植物の所為で魔力値低いやつらしかいなくてつまんねー」
彼らがここに居る。言い換えれば私が彼らのそばにいる。つまり、私はしあわせな家族から引き離されたのです。
色を売るのは才無き流民が滞在する為の税処理的な義務です。拾い集めた私の記憶ではそう理解しているようでした。
魔王領付近ということで土地が沈まない。武芸者の労力を求められる土地。秩序が無ければ治安の悪化は容易く、街は滅びます。
流民を招き入れるのは安い使い捨ての労力です。
弱く才なく、いえ、多産で数だけは居るというのが流民です。多産で従順、これも一種才のひとつでしょう。しかも代を重ねて高い魔力はまるで毒か何かのように受け付けません。
つまり、強い魔力を保持する者の子を孕む確率は低いのです。コレは意外に便利と扱われます。
実際には数をこなせば、体も魔力に慣れてそこそこいけるのですが、その前に体に溜まったその魔力を分解排出を目指して双子や三つ子、複数の子供を生み出すのです。
ツル植物と違う点は、その際に命を落とす母体も多いということでしょう。
よくある妊娠期間は季節一巡り。私達流民はおおよそ二季節。ここも主食とした植物の影響下なのでしょう。
こんな生態を持つ私達流民は多くの種の人に下に見られています。
言うなれば、言葉の通じる家畜でしょうか?
男衆は人の嫌がる雑務を命じられ、その雑務が終われば野ねずみの干し肉ひとつをもらって喜びます。例えば一区画分の道路掃除をして野ねずみの干し肉一枚です。私達流民はそれで喜ぶのです。
女衆は色を望まれればどこであれ拒否しません。
ヒト扱いされてないのです。
誰かをはめる事のないだますほどの知能もあやしい脆弱な労力。それが私が創った植物が生み出した民族です。
そう、今の私は理解しています。
私がそう目的を持って創ったのですから。
ただただ使われる事を使い捨てられることを疑問に思わない民。
裏切られることに疲れた私がただひたすらに望んだ心の平穏です。
ただ、感謝と愛を。
その中で育てばそれが普通であり、疑問を持たないのです。
私は思い出してしまった。
だから、そう、だから。
家族を愛したから、私は私の罪深さに打ちのめされます。
私は聖女などではないのです。
愚かしくも世界の破滅を望んだ者。
前世の私は全てが憎かったんです。
生きることが難かったんです。
だから、全てを滅ぼしたかったんです。
「マグレッチェ、家族んとこ帰る?」
「え。いいんですか?」
「マグレッチェは好きに過ごせばいいよー」
「危害を加えるものからは守ってやるさ。セイジョ様」
にへらと穏やかなコカトリスの言葉に感動しているとサラマンダーが茶化してきます。
今の時代、マグレッチェは聖女とされています。
「過去の私は男なんですけどね」
本当にどこで歪んだのか誰かの悪意すら感じそうです。
とにあさんを幻想生物に例えるなら?
1.メドゥーサ
2.コカトリス
3.ワイバーン
4.サラマンダー
shindanmaker.com/586988
コカトリスサラマンダーが同率
登場しただけだなぁ
続きは不明




