孤独の月(前半
使用お題ひとつ
①カーテン
私の部屋にはカーテンはない。
窓はないのだから当たり前だ。
昔はこの部屋にもカーテンが揺れていたのだ。埋められてしまうまでは。
私は罪人の娘だそうだ。
だから、ここで生き延びることで罪の対価を支払う義務があるらしい。
暮らしは変わったけれど、同時に変わりばえはなかった。
ただ、求められるままに義務を果たす。
それは変わりのない生活。
恐ろしく感じたのは、慣れるまでの数日。
だって、変わらないのだもの。
私の個性が必要とされていないことは。
②強欲
あさましい。
そう言って、あなたは僕を見下ろした。
僕はその言葉を理解できなかった。ただ、与えられた食事を必死に頬張っていた。
みっともないこと。
あなたはそう言って、僕の食事の中に靴を差し込む。
少しだけめんどくさいんだ。
機嫌を損ねると次の食事が何時になるかわからないから。
だから、ちゃんと綺麗にする。
だって、少しでも量を食べたいから。そんなことぐらいで減らしたくないんだ。
それがあさましいと言われるならそれで構わない。
でも、そんなふうに支配したがるあなたは強欲って言うんだよね?
③子ども
手を伸ばす。
払われることを思いもせずに。
受け入れられることだけを疑わず。
愛してると全身で表現する。
それができなくなれば子供じゃないんだろうか?
雛鳥や無垢な子猫を見る。
無防備に戯れ遊ぶ。
親から引き離され、環境の変化に泣き喚く。
どれほどこの子どもらは不安に苛まれるのだろう。
離別に気がつけば無垢ではいられない。
離別を離別と思えなければどうなのだろう。
これはささやかなる疑問。
孤独。
独り、無垢な子らは無垢であるがゆえに受け入れる。
どうか、子どもらよ。
その進む道を私に見せておくれ?
④風
夢の中に吹く風は酷く凍った痛い風。
ポツンと広い場所に佇んで、ただ地平線を見つめる。
世界は果てしなく広くて、ひたすらに荒野が続く。
眩しい空。瞬きが眩しすぎて昼だろうが、夜だろうが見上げることなんかできない。
僕の涙に風が触れる。
涙の重みに解けた風が優しい花の香りを広げた。
望んでも、涙は落ちない。
風が、風が押すままに歩き出そう。
歩く理由。
それは、風が吹くから。
理由なんて、ただそれだけでいい。
⑤春休み
春って素敵。
たくさんの花が開く。
今までを卒業して、新しい世界に一歩踏み込むの。
希望と恐れの準備期間。
新しい世界。
新しい自分になりたい。
あなたへの10のお題は
1:カーテン
2:強欲
3:子ども
4:風
5:春休み
6:持つ
7:現実
8:思い出
9:親
10:月
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