死地へ
使用お題ふたつ
陽が沈んでゆく夕焼け空の中、君は手すりにもたれて泣いている。
久しぶりの雨の降っていない夕焼け空。
戻ってこないロレンツォに君は涙するのか。
それとも他の戻ってこない誰かに対してか。
何かを想い束縛する権利などもたないおれの嫉妬などきもちわるいばかりだろうと苦笑が漏れそうだ。
乱立するビルは酸の雨でずいぶんと欠けている。
ビル街はそれでも雨をしのげるから、街の外には砂漠が広がっている。
真夜中だろうが昼間だろうが人を狩る新たな異形たちが騒がしく走り回るのだ。
そのままのけぞって落ちていきそうな君の腕をつかんで引き留める。
見開いた眼からは大粒の涙が零れ落ちる。
泣かないでほしいと抱きしめる。
君のきゃしゃな体。おしのけようとあがかれても君の力はひどく弱く無意味。
君の胸を飾るブローチをそっと外す。
君は声を出せない。
だから誰にもばれない。
ああ、ばれないと知っての行動だ。恨んでくれてかまわない。
「ロレンツォに届けていいか?」
君の動きが止まる。
次は、おれの番。
どうか、無事を祈ってほしい。
この恐れを君にだけ知ってほしい。
そして、どうか、強がるためにおれの怯えを持っていてほしい。
「行ってくるよ。スフィア」
お題は〔きもちわるい〕です。
〔三人称視点禁止〕かつ〔「夕焼け」の描写必須〕で書いてみましょう。
https://shindanmaker.com/467090
お題
砂漠
真夜中
ブローチ
涙
なんとも言えない感じの物語にしてください。
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