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自縄遊戯  作者: とにあ
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月鬼

使用お題むっつ

 黒の厚底靴がガタガタに舗装された坂道を走る。

 秋の最新デザインに身を包み、長い脚を使ってゆったりと走る。

 ぬらっと縦にばかり伸びた体から伸びる手足はぼきりといきそうなほどに細長く鈍い金色の髪はよじれた棘をいくつも持つ鬣のよう。

 辿りついた場所には男女が二人だけの世界を作り上げている。

 公園の寒々しい東屋。ベンチに腰掛けてお互いだけ。


「もう、さよならね」


 女の声に男の手が所在なさげな形で止まる。


「貴方に開けられたピアス。貴方にもらった初めての誕生日プレゼントね」

「ダメ、なのか」

「ええ。私は形のない幸せに疲れただけ。私はあなたを待てない」

 男は女を切なげに見つめ女は男を見下ろして微笑む。

「あいしてるわ」

「あいしてる」


 愛を語り合いながら別れを語る二人の姿を呼吸すら忘れて見つめてる。

 あのピアスは二人の学生時代にお互いの誕生石を送り合った贈り物だと知っている。

 そしてそのあと起こることを知っていながら目を閉じれない。

 しっているから目を閉じることができない。


「愛してるのよ?」

「愛してるさ」


 二人はどこまでも愛し合っていた。

 さいごまで。

 女のナイフが男の首を切り裂き、男が持っていた出刃包丁が女の腹をえぐる。


「ああ、ごめんなさいね」


 女が空を見上げて微笑む。

 鬣のような髪を揺らし、女が見上げたろうモノを見上げる。


「ゆき」


 空から幻のように、ふわりふわりと広げた掌におりてくる雪。

 二人はさいごまでその手を握り合ったまま終わる。

 雪でぬかるんだ足元に靴が汚れていく。

 女が付けていたピアスと色違いのそれがちらり耳元で光る。


「さよなら」


 ひらり振られる手。

 こぼれる声はまだ幼く。


 月に鬼が哭く。

 月に晒された影は鬼。

 繰り返される愛の惨劇。


 女は笑うのだ。


「なかないで。あいしているわ」


 雪が幻を掻き消してゆく。

 ぬらり長い手足を動かして鬣の鬼は離れ歩く。


「さよなら、かーさん、とーさん、もう、こねぇ」


 眼の下の黒い影を誰もふれない。

鬱題は、

形のない幸せに疲れただけ / 汚れた靴 / 貴方に開けられたピアス です。

https://shindanmaker.com/520497

あなたへのお題は【な(泣/鳴/哭)かないで】の一文を含んだものになります。

素敵な文章をお待ちしてますね。

https://shindanmaker.com/529115

あなたに贈るお題は、「高校生の頃に、相手の誕生日プレゼントを選ぶ二人」です。

https://shindanmaker.com/449385

『チャラい中学生のゲイ男子です。髪はゴールド系スパイキーヘア、身長は高く、体型はガリ、ファッションはモード系、特徴は目の隈』です。

https://shindanmaker.com/444021

空からは雪が舞い降ります。花のようにふわりと掌に降りてきます。

https://shindanmaker.com/390319

とにあに与えられたテーマは『幻想』です。

https://shindanmaker.com/337810



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