粉色の都市
使用お題ひとつ
薄灰色の粉っぽいこの街は灰都と呼ばれていた。
広く作られた石畳の道は人通り少なくチリのような粉が積もっている。
ごく稀に歩く人はマスクをし、長靴にロングコート、マフラーに帽子ゴーグルという露出の少ない格好だ。
人が歩けば、風が起き舞い散る。
苦しげに咳き込んでから人は足早に道を歩いてゆく。
重厚な扉を押し開けて建物のうちに入る。
扉は音を立てて自動で閉じる。
舞い込んだチリ粉を追い出す空調のモーター音が響く。
ばさばさと生地を払いながらコートや帽子を壁に掛けていく。
すっかりチリを払えたらようやくもうひとつの扉に手をかける。
「ああ、ひどい目にあったよ」
「いらっしゃいませ」
そのうちがわは酒場だった。
「地下道が通行止めだってさ。おかげで表を歩いてきたよ」
外から歩いてきた人物は迷わずカウンター席につき、馴染みのバーテンに笑いかける。
「ああ、それは難儀なさいましたね。こちら、クロークキーになります」
「ありがと。まぁ苦労した分、酒が旨いわけだ。あっつくなるやつ頼むよ」
差し出されるカードキーを受け取りながら冷えた指先をうごめかせる。
「お任せを。……今宵も冷えますからね」
バーテンの言葉に客は笑う。
「ここは冬谷の灰都だからなぁ」
冷える冷えると客は指を揺らす。
この街に降る雪はチリのように細かく、そして溶けることを知らないかのように絡みつく。
「ですから店内は暖かく、どうか、今宵も外をお忘れくださいませ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
長く伸びる闇の影。
冬の気配が谷を包んでいく。
しんしんと冷える往来に煤のような粉雪が舞い散る。
とにあへの幻想お題
序章⁑粉色の都市
第3章⁑ここは冬谷
終章⁑長く伸びる闇の影
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