秋心
使用お題ひとつ
好きになった彼女は他の誰かを好きだった。
それでも「大好き」と笑顔を振りまかれると嬉しくてしかたないだろうと思ってしまう。
きっと、俺に向ける好きが望むものでなかったとしても。
それでも、「おかえり」とその笑顔がすぐに浮かぶ。
一番は決まってる。
きっと、呼ばれたらなにを捨てても駆けつける。
たとえ、それで惚気を聞かされようと。
わらって。
笑って。
気がつかずに笑っていて。
そんなこと考えてたら、親父が封筒をくれた。
知り合いの芸術家の連絡先。
首を捻っていると、
「雑用係募集中らしいから行ってこい」
滅多に行動起こさないくせに唐突だよね!
「邪魔したくないし、見てたくないんだろう」
決めつけられて、俺は沈黙する。
だって、その通りだったから。
名前の書いてあるカードは二枚。
チケットは一枚。
『放浪するからおいでよ』
ちょっとイかれた文面。
日付は卒業式の翌日。
期間は最短一年。
親父を見ればすでにパソコン作業。
湧き上がるもやもや。
封筒と便箋を用意しよう。
シンプルで和調のものを。
心は、変わるかな?
でもきっと、連絡ひとつ届いたら俺はきっと駆けつける。
空は秋空。
風が吹き巻く枯れ葉の乱舞。
「好きだよ」
あ。
幻聴が聴こえる。
『うん。ネネもアキが好きだよー』
そんな絶対『違う』それでも、うんと頷くしかないネネの好き。
季節は秋。
「好きだよ。」
#季節と台詞とうちの子
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