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自縄遊戯  作者: とにあ
230/419

母子

使用お題ひとつ

 燃え盛る炎が天を焦がし、残ったものは何もありはしなかった。

 老人はただ空を見上げる。

「後悔しているのかしら?」

 柔らかくかけられる老女の声は素通りしていく。

 子供たちの歓声が風に乗って響き渡る。

 燃え盛る炎が飲み込んだ幼い子供たちの姿。

「三十年、三十年の間あなたは耐えたわね」

 老人はただ空を見上げる。

「とても、とても長かった」

 老人がポツリこぼす。

 新たな大樹は育たず、ようやっと大地を這う草があらわれはじめた。

「とても、とてもながかった」

 ここには学校があった。

 燃え尽きてその痕跡は広い校庭。

 焼け焦げた大樹の根がぐずりと崩れ去る。

 老女が老人の手をそっと掴む。

「お疲れ様です」

 老人が老女を振り返る。

「……そこに、おられたのですか」

 老人の問いに老女は静かに頷く。

「ずっと、おりましたよ」

「もう、よいのでしょうか?」

「もう、よいのです」

 かさりと殻が剥がれるように風が吹いていく。

 青年は老女の手を握る。

「守れなかったんです」

「いいえ。あなたは守ったの。よく、頑張りましたよ」

 いきましょうと老女の引く手に青年は頷き、ついていく。

「力が足りなかったんです。不甲斐ないです」

「あなたは力を尽くしたのでしょう?」

「はい」

「ちゃんと見ていますよ。みぃんな」

 校庭の跡地に這う草は雑木を呼び、じわりじわり山に還っていく。

「私の力不足は赦されますか」

「もちろん、あなたは最善を尽くしたのですもの」


とにあは『焼けた学校の跡で、空を見上げる老人と傍にいる老女』を書/描いて下さい。

#世紀末の二人

https://shindanmaker.com/462378


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