控室
使用お題みっつ
歩き回る場所は控室の中。
ソファに沈むように埋もれるのは金髪の美少女。
青い瞳は冷たく冴えて私を見据えてくる。
「だってママ、立つとくらくらするんですもの」
私によく似たその青い瞳が私は大っ嫌い。
マグカップに温めたミルクを入れて渡しても娘は渋い表情で首を横に振る。
「どうして分かってくれないの?」
ミスがあってはいけないのに。
どうしてうまくいかないの?
そっと伏せられてしまった視線に苛立ちを抑えられない。
可愛い娘でなくてはいけないの。
人に受け入れられる娘でなくては。
「どうして分かってくれないの!?」
気がつけば娘を抱きしめて揺すっている私。
「ママ……」
憐れむような色を含んでまっすぐに私を映す眼を潰したくなる。なんなのだろうか。この攻撃衝動はどこかが熱くてしかたなく視界が滲んで見なくて済むの。
「放しなさい」
降ってくる冷たさ。声が痛い。
「パパ」
彼の手でソファに促され、私は娘に触れるあの人の手をただただ追う。
「ん、熱がでているね。ゆっくり休んでおいで」
どうして分かってくれないの?
「だって!」
闇のような瞳を向けられてびくりと身体が竦む。
「だって、アンジェリーナの、その子のお誕生会でしょう?」
お客様だって何人も来ているわ。
アンジェリーナには優しい眼差しとキスをおくるのに私には叱るような眼差しと呆れを含んで感じさせられるため息。
「来年もある。アンジェリーナの体調の方を優先する」
つきつけられる決定の命令。
彼はアンジェリーナをやさしく抱き上げて彼女の部屋へと向かう。
入れ替わりに入ってきた女性が困ったような表情で私を撫でる。
「……どうして分かってくれないの?」
どうして愛してくれないの?
「できない子って思われてしまうわ」
アンジェリーナのためにならないわ。
「心配しないで」
差し出されたティーカップ。
なにが心配しないでよ。心配に決まっているわ。
湛えられたダージリンも添えられたクッキーも癇癪を起して叩きつけたい。
彼は祖父が選んだ夫。
私を見たりしないのね。
私という名の卵の殻。内側の黄身の冷たさはきっとどこまでも冷えていく。
とにあさんには [ クッキー / マグカップ / ティーカップ ] なんていかがでしょう。
https://shindanmaker.com/68407
場所:控え室、状況・条件:体調不良、必須の台詞:『どうして分かってくれないの?』
https://shindanmaker.com/571142
とにあへのお題は〔きみのつめたさ〕です。
〔形容動詞禁止〕かつ〔「歩く」描写必須〕で書いてみましょう。
https://shindanmaker.com/467090




