月は嗤う
使用お題ふたつ
やれやれ。今日みたいに月の美しい夜は、静かに過ごしたいものだね。
「おじいさま。冷酒をお持ちしましたよ」
ああ、いつものところに置いておくれ。お前はいつだってよく気のつく子だよ。
うっとりと月見酒。酒のアテは丸ままの柿。同じカキなら生牡蠣がいただきたいね。醤油とレモンをちょいっとひと垂らしさ。
「もう、潮時かも知れません。私では、私にはおじいさまの跡を継ぐことなんて無理だったんでしょうね」
おいおい。お待ちよ。お前はどうしてそうすぐ諦めてしまうんだい?
さぁ、大丈夫だ。私の若い友人が悪いようにはしないさ。
「だって、おじいさま。人にはそれぞれ踏み込んではいけない地雷ゾーンがあるんです。私は、それを自分で抜けることが出来るまでそっと見守りたいんですよ」
おや?
私に持ってきてくれた冷酒じゃないのかい?
いや、いいんだよ。お飲み、お飲み。お前ももう、小さくないからね。
見守ることも思い切ることも大事だからね。
一番大切なことは失いきるという最悪の運命を避けることだとも。
見守るべきに見守り、時に踏み込み、歩き出せるような道を探求し、道の補助をすることこそが我々、探偵の務めだとも。
結論を出すのは雇い主。
我々が手を貸すことで、救いになるのなら、それこそ、そう、本望だと思うよ。
「それなのに、あいつときたら!」
おや?
珍しく怒り狂っているのかい?
女の子は笑っている方がいいと思うけどねぇ。
もちろん、おばあさんはあんまり笑わない照れ屋さんでね。誰よりも美しいんだよ?
あの月のようにね。お前は、よく似ているよ。
「ああ、もう! 掻き混ぜてばかり!」
ああ。
女の子がサラミを切りもせずに食いちぎるのはどうかと思うんだよ?
wildっていうのかい?
「どうして、あんな依頼引き受けたんだろう。いつだって、あいつは滅茶苦茶なんだ」
引き受けたのは、依頼だからだろう?
お前は後悔しているのかい?
私の跡を継いだことを。
おや?
誰か近づいてくるね。
背後で障子が力任せに開かれる。
ああ。
月が綺麗だね。
「トリックオアトリート!」
「ふざけるな。南瓜頭っ!」
「ずるいなぁ。独りで呑んでいたのかい。呼んでくれればいいのに」
子供達がにぎやかに出て行ってしまう。
月を、一人見上げようかねぇ。
「また、きますよ」
若い友人がそう言って障子をそろりと閉める。
月の光が畳に反射する。
最悪な結末なんてきっとこない。
あの子達の運命は厳しくともきっと優しいのだ。
見上げれば月が嗤う。
すべてを奪う悪魔は月に潜む。
私は何を失い、ここにいるのだろう?
しんだことに気づいていない探偵と人生を嬉々として踏み外していく大人によって日常が壊された人物の話書いてー。 http://shindanmaker.com/151526
「月」「地雷」「最悪の運命」を使って創作するんだ!ジャンルは「サイコミステリー」だよ!頑張ってね! #sandaibanashi http://shindanmaker.com/58531
サイコミステリーってなんですか?(ぁ




