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自縄遊戯  作者: とにあ
176/419

シガーキス

お題ふたつ

 縁側で紙巻きタバコに火をつけて膝に乗せた足首に肘をのせる。すこし居心地悪げに足の位置を組みかえる。

「また吸ってんのかい?」

 男は紙巻きを指で挟んでちらり視線を動かす。そこにはツツジの垣根から身を乗り出す女がいた。

 男の視線に人の悪い笑みをたたえながらその女が庭に入ってくる。

「ああ。昼に仕事はねぇからな」

「昼行灯かい」

「ちげぇねぇ」

 丸めた背を伸ばして紙巻きを咥えた男に女は呆れた息を吐く。

「昼行灯を認めんじゃないよ」

 灰になった先端を軽い振動で焼けた庭に落とすと男は顔を上げた。

 琥珀色の瞳が臙脂の和装に身を包んだ女を写す。

 シャンと立ち、呆れたように見下ろしてくる女の髪はすっきりとしたショート。

「あぁ……あっちぃ!」

 なにに動揺したのか、ぼとりと落ちた紙巻きが作務衣の上に転がり足を掠め落ちていった。

「愚行だね」

 女が鼻でせせら笑う。

 男はうっすら女の直視を避けながら、下駄に足を差し込みばさりと大きな動きで立ち上がる。

 作務衣を焼きそうな灰を払い落とし、責めるような視線を女に向ける。

「で、何の用だい。茶は出ねぇぞ?」

 袖で口元を隠して女は笑う。

「仕事の依頼さ」

「へぇ」

 下駄の足で紙巻きを踏み消し男は置きっぱなしの紙巻き入れに手を伸ばす。

「断るよ。アンタの持ってくる依頼はロクなもんがねぇ」

「そう言うもんじゃないよ」

 グイッと女の手が男の長い黒髪をつかむ。引かれたせいで紙巻き入れに手が届かない。

 男の目が不快げに平然と笑っている女を睨む。

 距離が近い。より近づく。

 唇に唇が重ねられる。

 ちろりと赤い舌が唇を舐めて離れる。

 二人の視線が絡み合う。

「紙巻きの味が濃いねぇ」

 ククッと笑う女に小さな悪態を吐きながらも男は話を促す。わざとらしく口元も拭う。

「今回の厄物(えもの)は不眠を呼ぶ『囀り貝』うまく封じないと眠れなくなるよ」

 けらけらと女は笑い、男の喉元を指す。先ほどのくちづけで妖物を注いだのだ。

 大元を封じなければ、男は眠れなくなる。

「っ、性悪がっ!」

「褒めてくれてありがとよ。報告期待してるからね」

 ひょいひらりと袖を踊らせ女は垣根のむこうに消えてゆく。

 男は掴まれた髪を手櫛で撫でつけると紙巻きを一本取り出し、咥える。

 吐きだされる紫煙がガチャガチャと不快な囀りをたてる。

「不眠は困るなぁ」

 ガチャガチャと騒々しい紫煙を見送った男はやる気もなさげに髪を払う。

旦那(だん)さま、おでかけです?」

 部屋の奥から少女の声が聞こえてくる。

「おでかけですよ。オクさんはだんさんのために準備してくださいな」

「ぁあーい。お支度いたします」

 軽やかな返る声に男は口の端を軽く上げる。


「まぁ、いきますかぁ」



新刊タイトルは


『シガーキス』

#あなたの新刊タイトル

https://shindanmaker.com/621864

年齢は二十代前半

職業は術者(怪奇を専門に扱う人。呪術や買った札を用いて怪奇を封じて神社に奉納し浄化して貰います)

髪型は長髪

目の色は琥珀

普段から着てる服装は和装(作務衣)

#ついがく大正浪慢

https://shindanmaker.com/624355

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