ドラム缶
使用お題ひとつ
気がつけば漆黒の闇の中、頭にくらくらくる刺激臭。
ホテルから出た俺は彼女との待ち合わせである映画館に向かっていた。
今はやりの実写化ものだったか。
彼女が見たいと言ったんだ。
ただ、その内容が記憶に残っていない。
ポップコーンにドリンク、パンフレットも買って席に着いたまでは覚えているのに。
光が差した。
俺はその光を追う。
グロスでてらりとした赤い唇と白い歯が見えた。
「ヤダ、起きちゃったの? うふふ。まぁいいけど」
軽くさざめく笑い声はどこから聞こえてきてるのかよくわからない反響を伴って。
「言ってたでしょう? 誰にも見つからない場所にいきたいって」
何の話だ?
この女は何を言っている?
「人数を集めるのが大変だったわ。でもあなたが最後の一人。大災害でも起きなければあなたは誰にも見つからない場所にいくの」
いく?
いくってどこに?
「大丈夫よ。あなたのパーソナルスペースは守られるわ。だから安心して眠っていていいのよ」
どろりとした重圧が女の言葉を裏切っている。
俺は、円柱の中でただ眠る。
そこにはいくつもの円柱が静かに並んでいる。
怖いお話お題は
『ホテル』
『ドラム缶』
『映画館』
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怖くならない




