恋をした日
使用お題ひとつ
心が弾む。
お父さんの娘になって数年が経ちました。
髪を結い上げて、鏡の前で自分に微笑みかけます。
私にお父さんは人を魔族から救い出した英雄です。
私の自慢のお父さん。
なにもかも失った私に与えられた恵まれすぎた環境。
みんなが優しいこの街で私が返せるのはいつだって僅かに過ぎなくて。
強い者を決める武神杯で一度は優勝したし、奉納舞を舞う美人を決める豊穣の女神杯でも一番に選ばれて、舞台で舞を披露しました。
だから、みんなが勇者の娘にふさわしいと褒めてくれました。
努力は正しく認められるのです。
時々、お父さんがお父さんだからかもしれないと思うことはありました。
『勇者の娘』の名はとても重いです。
それでも、その期待を、その理想を私は追いたかった。
お父さんの自慢の娘になりたかったから。
私は自慢の娘になれたのでしょうか?
この国では十八で成人です。
自分の人生をどう進んでいくのかが問われます。
もうじき、お父さんの翼の下から飛び立たねばならないのです。
心細い。不安。でも、すごく期待でドキドキしているんです。
私の才能はどこまで通用するの?
どんなお仕事ができる?
代筆屋のおじいさんも酒場のマスターも就職は歓迎だと言ってくれます。
お父さんのお友達で国の将軍様もいつでも試験を受けにおいでと笑ってくれました。
そして、教会のシスターが微笑んで神に嫁ぐ道もありますよと言葉をくださいました。
恋人を作ってお嫁さんにいくのってお友達は聞くいてきます。
恋人?
好きなヒト?
お父さんが好き。
カノッサが好き。
ビオセが好き。
新年祭でだけ会える騎士様が好き。
教会の神父様も、お城の門番さんも近衛騎士様も好き。
宿屋の女将さんが好き。って言ったら男性だけって言われて、困惑した。
そうね。
特別な好きはお父さんビオセ、カノッサかしら?
私はお父さんの娘にふさわしい娘?
きっと、そればっかり追いかけてきた。
教会での奉仕活動。街の店舗でのアルバイト。礼法武道学術の習い事。城壁外に出て狩りや冒険したり。
充実している時間の積み重ね。
恋ってなぁに?
特別ってなぁに?
失いたくない人はたくさんいすぎてわからない。
小鳥達のさえずりに頬が緩む。
お弁当を作って待ち合わせしている広場に急ぐの。
彼は先に来て待っていてくれる。
待ち合わせより少し早くなぁい?
足を速める。
さぁ、おはようから!
お題は〔恋をした日〕です。
〔「かぎかっこ」の使用禁止〕かつ〔「朝」の描写必須〕で書いてみましょう。
https://shindanmaker.com/467090
エディン「私の恋ってどこにあるのかしら?」
カノッサ「害虫は駆除しまーす」




