硝子越しに
使用お題ひとつ
カラカラと転がる木剣。
息が上がります。
お父さんの娘だからって武芸者の人に勝負を挑まれました。
はじめての時、私はこわくて逃げました。
女将さん達は危ないからそれでいいよ。女の子だしねと慰めてくれました。
それなのに私は忘れられなかったんです。
「逃げるのか」
と言い放った武芸者の人がその時浮かべた印象が。
お父さんすら低く見られたと思ってしまったんです。
悔しかったんです。
誰が、お父さんが気にしないと言っても、私を通してお父さんを見た武芸者さんがいやです。
違います。
逃げた私が嫌なんです。
お父さんの娘として、私は褒められたい。
カノッサが護身術や魔法を教えてくれます。
先生達に習うものより少しだけ実践的だそうです。よくわからないです。
私、辻試合で勝ちました。
お手伝いで貯めたお小遣いで皮鎧とショートソードを買って使い慣れれるように頑張ったかいがありました。
お父さんは「よく努力しなさい」と言ってました。
努力は本当に大事です。
武芸者さんが押し付けていった袋にはじゃらりとお金が詰まってました。
辻試合は最初に御断りすれば『逃る』だけですが、試合がはじまると負けた方は勝者に見逃し金を払って命を買い取るというカタチをとるので敗者になることは本当に生活直結です。
お父さんに辻試合に勝ちましたと報告すると危ないことはしないようにと注意されました。
見逃し金は私のお小遣いに混ぜていいと許可してもらいました。
これで欲しかった物が買えるんです。
欲しい物は硝子の小箱で少しだけ高価。
お父さんとカノッサから贈られた家族になった記念日の贈り物や新年の贈り物をしまうんです。
硝子越しに見えていればきっと嬉しいのです。
素敵なリボンやチャーム。押し花のしおり。造花の髪飾り。
今度の家族の日には私からも二人に贈り物をするんです。
家族の日に硝子の小箱が三つになりました。
宝物が増えていくんです。
そっと小さな鍵を回して小さな仕掛けのかみ合う音。
そこに詰まっているのは優しい思い出の欠片達。
お題は〔硝子越しに〕です。
〔感動詞禁止〕かつ〔音の描写必須〕で書いてみましょう。
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