お父さんはよくわからないです
使用お題ひとつ
エディンの物語。
昔のお話をしてほしいとお父さんに頼んでみたら、無視されました。
泣いてしまった私はきっと悪い子です。
お手伝いをさせていただいている宿屋の女将さんはエディンはいい子だと褒めてくださいますが、お父さんにとって良い子でないといけないんだと思うのです。
しょんぼりしているとカノッサが甘いお茶とお菓子を出してくれます。
お父さんに嫌われてしまいましたと報告したら、髪の毛をくしゃくしゃにされました。
お家を出されるかもしれないって私は不安だったのに。カノッサはとても楽しそうなんです。
事情を聞いてくれたカノッサは私の鼻先をツンっとつつきます。
安心なさいと言われて、手を引かれるままに台所でお手伝いです。
お家のことは全部、全部カノッサがしています。
お掃除もお庭の手入れもお料理もです。
黒い疾風が過ぎったと思えばカノッサなんです。
台所で、カノッサと一緒に料理を作ることが私は大好きで、お父さんに嫌われてお家から出されたらカノッサとも一緒にいられないんです。
そのことを思いついて泣きそうな気分です。
それでも、手際よく準備は終わります。今日のお夕飯はお弁当仕立てです。お庭の東屋でいただくのかと思っていたら、お家から出てまだカノッサは私の手を引いて進みます。
そこはお城の門でした。
もう夕方ですからお城の方と面会はできません。
ビオセが兵隊さん見習いとして頑張っているのは知っているけれど、会えないでしょう。
カノッサが門番のおじさまになにか伝えています。
寄って行って挨拶をした私におじさまは笑いかけてくださいます。
気立てよくいなさい。
上の方にお会いする時は礼儀正しくするようにと教えてくださったおじさまです。
その奥からお父さんがヌッと出てきました。
なんだか大きなおじさまとご一緒です。
お父さんは大きなおじさまを押しのけてこわいお顔でずんずん近づいてきます。
気がつけば、私はお父さんに抱き上げられてお家の東屋に帰って来ていました。
いつの間に先に帰っていたのか、カノッサが飲み物を準備してくれています。
そして、たどたどしくお父さんは昔のお話をしてくださいました。
気がつけば一人だったこと、多くの魔物や野盗魔族を倒してきたこと、神意を受けた魔王をしりぞけた功績を持ってこの国で邸を与えられていること。
今の生活費は城で戦術指南して稼いでいること。
ぽつんと、お父さんは子供の扱いがわからんのだとこぼしたのです。
私はお父さんが好きでそばにいたいと思うと伝えてみました。私のことを嫌いじゃないですかって。
じっと私を見るお父さんの眼差しがこわいです。
もう、答えなんていらないと叫ぶ寸前に。
エディンはこれ以上ない良い娘だ。いい親でなくてすまんな。
違うんです。違うんです。
お父さんは良いお父さんなんです。
ちゃんと期待に応えることができない私に良い子じゃないんです。
手を叩く音で私とお父さんはカノッサを見ました。
カノッサは楽しそうなんです。楽しそうに笑っているんです。
それで、両想いじゃないですかって笑うんです。
お父さんは私を撫でて、ハムの厚焼きを薄切りパンで巻いて食べます。
旨い。エディンは才能が豊かだな。
お父さんが褒めてくれました。
カノッサがクスクスと笑ってます。
旦那さまは街の方々にお嬢様の評判を聞いたりしてるんで。
言葉はお父さんの手でさえぎられて、でも、その、それってすごく恥ずかしいです。
しどろもどろにお父さんはすまんと、言ってくれて、でもその後にみんな、エディンは優しいいい子だと褒めていたぞ。と。
私は心に決めました。
お手伝いに行った時には私のお父さんはどんな人ですかと女将さんや店主さんに尋ねることをです。
でも、今はもう一度伝えます。
お父さん、大好きです。
お題は〔昔の話をしてほしい〕です。
〔句読点以外の記号禁止〕かつ〔色の描写必須〕で書いてみましょう。
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