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自縄遊戯  作者: とにあ
153/419

一緒に

使用お題ひとつ(たぶん

 



「栴檀は双葉より芳し」


 そんな想いで引き取った子供を見つめる。

 それともこれはタダの親バカだろうか?

 あの日、妹は笑っていた。

 柵の上に腰掛けて渦巻く海を見下ろして。

 押しつけられた幼児が腕の中で暴れていた。

 月光が妹の黄色の髪を照らしている。

 こちら側に引き戻したいのに動くことができない。

「この世の終わりはまだ遠いわ。でもね、わたしはもう……おしまい」

 機嫌良く終わりを歌う妹が綺麗で理解できなくて。

 泣く姪を煩わしく思いながらも近ずくこともできない自分こそが不甲斐ない。

 ろくでなしの家庭。

 ろくでなしな俺たち。

 きっとこのろくでなしブルースはこの世の終わりまで続くんだろう。


「もうおしまい」とその身を投げた妹に俺は手を伸ばせない。


 妹によく似た姪が泣き喚く。


 柵のあたりに咲く花が月の光に晒されてふわり芳香を広げる。

 潮騒と揺れる花。

 無力な兄は姪を抱いて帰る。



「お父さん。大好き」



 笑う姪の周囲はみんなが不自然に優しい。

 すべてが姪に優しい。

 とても優秀な娘なのだ。

 小さな妹が帰ってきたようにも思えた。

 妹が俺は嫌いだった。

 特別と愛されてきた妹が。

 両親や好いてくる相手より俺の行動を阻害することに嬉しそうに笑う妹が好きでいられるはずもなかった。

 俺の記憶に残るために美しいまま逝ったのか?

 陽射しを厭う体質は母からの遺伝か。



 玉石混交。



 おまえはなによりも輝く宝石。

 俺にはおまえを忘れることなぞできない。

 あの日、妹が腰掛けていた柵に姪がもたれてる。



「もうおしまい」




 なにを言ってるんだ?





「お父さん。一緒にいこう」











 天使が笑った。

本日のお題。

 栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし) / もうおしまいと その身を投げた / ろくでなしブルース この世の終わり

https://shindanmaker.com/620432

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