ひとつの経過。タイガ
使用お題ふたつ
後半
「ネネの正体は1年前あなたに助けられた狸です」
思考が真っ白になるってこういうことかなって思うんだけど、一瞬後には「またか」って感想が俺の中にはある。
「狸でもネネがネネならいいって。残念だけど、正直ちゃんと準備できる時間ができてほっとした」
もう、ネネがネネならそれでいいんだ。
母親が死んでその遺言で保護者になった夫妻の住む町に姉と共に引き取られた。
母の友人夫妻に引き取られなくても母の兄や祖父などの親族はこの町に住んでいて、結局はこの町に住んだんだと思う。
猫を追いかけて迷子になった女の子、それがネネだった。
おしゃべりが大好きで明るくて無邪気で自由。
環境が変わってどこか不安だった俺にとって憩いで、どんどんと心の占有率が増えていく。
専門学校に入って一年目ネネに告白された。
言われてあたりまえのように好きすぎて特別だったことを意識して照れくさい。
ほんとうにネネは俺の想像を超えていく。
困惑して次に焦って応えた。
照れ隠しの言葉もネネは受け止めてくれていつだってにこにこ。
腕に抱きつかれてその弾力に思考力が落ちていく。
我慢はネネの受験の成功とムードと共に瓦解する。
どうしようもなくネネがかわいくてしかたない。
それまでにも何度か思考を真っ白にさせられて固まることはあったけれど、夏前に恥ずかしそうに怯えるように告げられた「月のモノがこないの」という発言。
すぐに金銭面を考えるのは社会不適合者としての要素の多かった父親とそれを支えていた母親の関係性を姉に教えられていたからだ。
「頭が良くても夢を追いすぎる男性は実際にはちょっとね」
そんなふうに評される父だから。
真っ白になった後は保護者の許可なく籍を入れる方法とか、出産費用いくらかかるんだって現実的な現状だった。
まだ二人とも未成年だったから。
卒業にはまだ時期もあって就職の内定もまだで、もしかしたらダメになることも考えるとバイトのシフトを増やすことしかすぐにはできなかった。
親御さんへの御挨拶、謝罪からだよなとか、ああ、ネネのしたいことも邪魔することになるのかと思ったらヘンにへこんでまいった。
育ての父(実父の友人でもある)が笑って「頼っていいぞ」と言ってくれたし、それはチラ見で器用に察するイトコ(ほぼ二十年上)にも「援助くらいするから困ったら、ね」と囁かれもした。
目の前でネネが困ったようにマグカップをその両の手で包み込む。
「あのね、月のモノ、ちょっと不順になってただけでキタみたい」
「よかったな」
ほっとした。
まだ早いし。
「でも、いつか準備ができたら、うん、きてくれたらいいよな」
もじもじと不安そうだったネネにいつものネネらしい笑顔が花開く。
「タイガ大好き!」
時々恥ずかしくなるけどさ、うん。
「ネネが好きだよ」
ネネと彼氏:付き合い始め「くっ付くなよ照れるだろ」→1ヶ月後「へえ、意外と単純なんだ」→半年後「もうお前しか見えない!」→1年後「産まれてくる子供の為にバイト先探さないとな」
#loveeers
https://shindanmaker.com/186825
タイガと彼女:付き合い始め「これからはずっと一緒だね」→1ヶ月後「ダメ、人が見てる…」→半年後「やだこんなの初めて!」→1年後「私の正体は1年前あなたに助けられた狸です」
#loveeers
https://shindanmaker.com/185306




