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自縄遊戯  作者: とにあ
144/419

ヒール

使用お題ひとつ

 

 マリッジブルー。

 結婚前の憂鬱症。

 時々聞く範囲で『先輩』は多分、そういうタイプじゃない。

 むしろ、タマキの彼女の方が不安じゃないかなぁと思う。

 知り合いは少なく、見知らぬ国。どこまで自分らしさを出してイイかもわからない。

 ミコトの相手は付き合い長いし、環境は彼女にとっても身内からでないから、迷ってもそこまでじゃないだろう。周りが気遣うだろうし。

 タマキもミコトも時々鈍感だからなぁと思う。

『私とタマキが困ってるのを見つけたらまずどっちを助けるの?』

 小学校の時に恋人っぽくなった女の子の問いに『タマキに決まってる』と返した。だって、困ってる時ってあいつにとっては致命的な時だし。

 中学の時は『ミコトとの約束と私との約束どっちを優先するの!?』と聞かれて『ミコト』と答えたのはミコトと先に約束してたからだ。

 もちろんあいつらに恋愛感情なんか向けてない。そんな噂を立てる女子に嫌悪感を抱いた。秋口に別れてクリスマス前には新しい彼女って流れが多かったなぁ。

「タマキ」

 タマキの彼女の声に寝そべった体を動かそうとした瞬間、背中をぐりっと踏まれた。

 そのまま肩甲骨付近を抉られて、あ、効く。

「アレ、先輩?」

「ハリエットはこっちに知り合いが少ないな?」

 ほぼいないが正解じゃあ?

 あ。効く。そこイイ。

「友達に紹介する機会を作れ」

 うん。それは必要。

 相性も段階もあるだろうからちゃんと確認していかないと。

 機会って言えば結婚式をするって二人が言ってれば二回に渡って必然的に知り合いが増えてきっかけになっただろうけど、しないって言うし。

 つまり、

「合同パーティーだね。あとそのあとも何度か親交企画立てて一度で終わらせず友達になれる相手を探す。イイね」

 披露宴って言うか二次会?

 そして式の真似事もして盛り上げてっと。会場と呼ぶメンバーを考えていかないとなぁ。

 背中から重みがはずれた。ちょい残念。

 起き上がって軽く予定確認の為、端末を引っ張り出す。ミコトとタマキがシブい表情だ。大丈夫。面倒はかけない。

「ムサシ、凝らなくてイイから!」

「むっちゃん、忙しいだろ?」

「大丈夫。ダチのための時間くらいいくらでも捻出できる」

 遠慮がちな二人のために色々盛り上げるのはいつだって楽しい。

「ほんと、むっちゃんは変わらないね」

「おう」

 そう簡単に人は変わらないね。

「オネーサンももちろん、参加ですよね。タカぶーの二次会から企画組むか。うっし」

「ついでに合コンも組んだら?」

 タマキの提案に俺も頷く。出会いの場は重要だよな。話題もお互い探り合いやすくなるかもだし。

「イイね。幹事はそのまま任せとけ」

「ついでに彼女見つければ?」

 は?

 企画中になんて忙しくて無理に決まってるのに?

「フリーなんだ」

 さっきまで俺を踏んでたオネーサンの言葉にブイサイン。

「数日前に仕事と私どっちを選ぶのと聞かれて仕事って答えたら振られました!」

「仕事とこの企画どっちを選ぶの?」

 タマキが茶化すように言ってくる。

「仕事都合つけて当日は有給休暇使ってでも時間作るね」

 当然。

「彼女にもしてやれよ!」

 ミコトが怒鳴るんだが、なんでだ?

「俺はさ、きっとアイツどうしてるのかなって懐かしく思われる過去の男止まりなのさ」

 仕事の予定と二人のオフ日とハリエット嬢のタイプ。紹介するならミコトの相手でもあるトレバーにタカぶーの妹二人、あと適当にかぁ。

「あの、あまり気になさらないでくださいね」

 困ったように笑顔を向けられて俺は笑い返す。

「同じ言葉を返します。友人に幸せを運んでくれる貴女に幸せを。と言うのは当然。どーせです。結婚式の真似事もやっちゃいましょう」

 なぜか、タマキに殴られた。理由を言え。

「でも」

「待っ」

「ドレス姿綺麗だと思うしね。衣装はミコトの家でいくらでも斡旋出来るから」

 タマキの言葉を遮る。

「タマキだって、彼女の綺麗な姿見たいだろ?」

「そりゃあ」

 ハリエット嬢の視線がタマキを見てる。

 なにを気兼ねしてるのかわからないけれど。

「あ。タマキ」

「な、なんだよ」

「他の男にハリエット嬢のドレス姿見せたくないとか、心狭いこと考えてね?」

「あ。俺はトレバーのドレス姿とか他に見せたくない」

 ミコトのリクエストは当のトレバーに拒否られるからスルー。トレバーはきっと一番に『パパ』に見せるだろうから。

「カジュアルもイイけど、仮装イベントぽくしてもイイだろ?」

 女性はきっとドレスにドリームあるからウケるだろうし。

「特殊空間はきっかけ作りに使えるしな」

 はぁってタマキが溜め息。

「費用貯めてるとこなんだよ」

 費用?

「ハリエットに贈る白いドレス用の」

 ……。

 不定期アルバイターだよな?

 持病持ちの。

 視線に気がついたのか、視線が思いっきり逸らされた。

「無理だって思ってるんだろ」

 思考を巡らす。

 うん。

「無理だろ」

 副業を持ってるのも知ってる。

 それでも家賃を払わずに居られる環境が準備されている上での生活で、あまり余裕はないはずだ。

「それでも、だ」

「ん、んー。まぁイイけどね。妥協点は二人で話あえばいいし。紹介できる友人候補のことも考えなきゃだし、ぼちぼち練っていくぞー!」

 あー。

 やる気出る。

「張りがあるってイイね」

 ミコトとタマキが苦笑する。

 いないと思っていたらオネーサンがツマミをテーブルに並べてくれた。

「オネーサン、良ければまた踏んで」

 あの肩甲骨ラインは快感だった。

 色々とヒットな女性って奴はだいたいが売約済みだとしみじみ思う。

「フリーならおつきあいしないってナンパするのにな」

 フッとオネーサンが笑う。

「マゾはおことわりだ。ボウヤもいつか幸せになれよ」

「マゾじゃねぇし。もちろん、幸せになるよ」

 とりあえず、タマキの貯金を秋までは待つ!

 涼しくなってからの方が衣装にはバリエーション出せるしな。


「アイツどうしてるかな」「変らないね」「幸せになれよ」という3つの台詞を盛り込んで、秋のお話を創りましょう。

https://shindanmaker.com/616070

秋は出かけたまま帰っては来ませんでした

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