最低だ
使用お題ひとつ
目を開ければ青空だった。
夢の中の過去から聞こえた「幸せになれよ」ってあいつのセリフ。
あんたといるのが最高の幸せだったのに。
叩き落として、叩き落とした奴が何を言うんだ。
夢見が悪いにもほどがある。
あいつの行動発言は何時だってついていけない唐突さで。
そこも好きだったんだ。
そう、「幸せになれよ」って拒絶されるまでは。
「冗談だよね?」
って往生際の悪い私にあいつは困った笑い。困ったのは私だよね?
あの理不尽な別れから二年。
あいつから連絡はない。
私の前からフッと姿を消してしまったから。
共通の友人たちに聞いても誰もあいつの行き先を知らない。むしろ聞き返されたくらいだ。
「どうして?」
そう問い返されるのが嫌で問うことを止めた。
誰も気を使って聞いてこなくなった。
「ふざけんな!」
ロクでもない夢にあたるように腕を振り上げた。
「ぅお!」
驚きの声に驚く。ベンチで昼寝になっていたのだ。
「心臓に悪いよ」
笑っているあいつの顔が心臓に悪い。
なんで、いるの?
「なんか面白いことないかなって思ってさ。したら、お前がいた」
ああ。本当にもう、ふざけんな。
ここはいつものデート待ち合わせ場所だけどさ。
「なぁ、幸せ?」
スッと視線と表情が私から逸らされる。
ああ。
本当に勝手だ。
本当に最低だ。
「幸せだった?」
「問いに問いで返すなよ」
あの時みたいに困った笑顔。
「答えてよ」
「幸せだった……訳ねぇじゃん。お前いねぇもん」
もんってなんだ!?
本当にふざけんな。
「ばっかじゃないの!」
幸せじゃなかったんならいい気味だ!
だってお揃いじゃない。
「幸せになれよ」
この言葉を返すよ。
にんまりとあいつが笑う。
「ああ。お前と幸せになるよ。まだ、俺が好きだろう?」
はぁ?
ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。
調子にのるな!
怒鳴りたいのに声が出ない。
怒りだ。
これは怒りなんだ。
「それとも、パートナーがいる、のか?」
あいつの声が揺れた。
ああ。
本当に最低だ。
本当に勝手だ。
こいつは私が恋人を作ることなく自分を待つって信じていたんだ。
「幸せになれよ」って言いながら。
……恋人作ってとは言ってないけどさ。
ああ。
最低だ。勝手だ。
本当に。
なんで、私は不安そうに架空の恋人に嫉妬しかけているこいつをかわいいと思ってるんだ?
ほだされ過ぎだろう?
どうして、しかたないなぁって思ってるんだ?
甘いだろう?
繰り返すぞ?
「浮気男は好きじゃない」
パッとあいつの顔が明るくなった。
あ。他の女に惹かれたわけじゃないんだって安堵している私がちょろいよ?
でも、私がフリーなのもばれた。悔しい。
「海が、呼んでいたんだ!」
意味がわからない。
「電波発言はほどほどにしろ!」
あいつが満足そうに笑っている。
ああ。
しかたないなぁ。
「幸せにしろよ」
「俺の幸せはお前が作るから、頑張ってお前の幸せになれるようにするな」
「うわっ。当てにならない!」
言いながら空を見上げる。
「ひでぇ!」
ああ。
この時間が幸せだ。
青空に白い雲が薄く流れていく。
「移植のドナーやってたんだよ。リスクない訳じゃないしさー」
ちゃんと説明させた理由に話が殴ったのは正当行動だ!
そのくらい説明しておけ!
ああ。
本当に最低だ。
本当に勝手だ。
本当にしょうがない。
「なんか面白いことないかな」「心臓に悪いよ」「幸せになれよ」という3つの台詞を盛り込んで、デートするお話を創りましょう。
https://shindanmaker.com/616070
ん?
デートしてるのかしら?




