桜姫
使用お題ひとつ
フレアスカートにボレロ。しとりとした黒髪は桜のモチーフのコームでアップにされている。きらきらしたミニクリップの花弁が花の周りに躍ってる。
トートバックを肩にかけて、きょろきょろと不安げに周囲を見回す。大きな時計の見える広場は待ち合わせの定番。大丈夫。約束の時間にはあと十分。
もたれて眺めていた柱から俺は一歩ゆっくりと踏み出す。
君の表情がぱっと明るくなる。
嬉しいと、蕩けるような笑顔に俺の霞ほどの良心が軋む。
走るのに向かないパンプスで君は俺に駆け寄ってくる。
「お待たせしました?」
息を切らせながら微笑む君に俺は頭を横に振る。
「時間前だよ。一番に君を見つけたかったんだ」
「私が来るあなたを待ちたかったんですけど?」
頬を照れに染めつつ、君はふてくされる。
「ダメだって、俺の特権」
わがままだと思う。そんな俺の言葉に君は曇りのない笑顔で腕に抱きつく。
「しかたないから許してあげる」
偉そうに。
きゅっと腕に感じる重み圧迫に君を見れば、やっぱり幸せそうな笑顔。
トートバックが重そうに見えて「持つよ」と言えば「ダメ」と返された。
ねぇ、君は俺が君の家族に頼まれて恋人のふりをしてるって知ってるの?
「ありがたき幸せ」
茶化すように告げれば君は「許してつかわす」と時代がかった言い回し。
「今日は映画よね? ステキなのやってるといいわね」
「アクションがいいかなぁ。で、どこでランチにしようか?」
君はちらりとトートに意識を向けた。
「まず、映画を見てからよ! 早く早く。ね!」
腕をひいて君は早歩き。
甘い恋人になりきれないのは俺のせい。
「今は恋人のふりをしてる この甘さが苦い」で創作してください
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