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自縄遊戯  作者: とにあ
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トライアングル 3

続編

 


 わたしはリツ。

 昔はこの町に住んでいて、サリとコマの小さい時のことだって覚えてる。

 戻ってきて再会したサリは、そう、表情がなかったの。

 笑っているのに笑顔に温度がなかった。

 いっそ、泣いて流してしまったら楽じゃないかと胸が締め付けられた。

 専門学校とバイトに明け暮れつつ、余暇はサリを構う時間にあてた。

 何があったのかなんてわからない。

 コマは、何も知らない役立たずだし。

 それでもコマはなんとなく覚えてるみたい。

 サリは再会だっていうことを覚えてなさそうなのに。

 それともわたし、そんなに変わったかしら?

 ひと気のない道を軽くステップ。

 両手を広げて空を見上げる。見て構って大切にしたい宝物。

 夜空に浮かぶ一粒の月。


「サリ、夜は出歩いちゃ駄目よ」

 街灯の光の下。俯く少女。泣いてるの?

「リツ」

 顔を上げたサリに表情はなくてゆっくりと笑顔の仮面をかぶってしまう。

 無理に笑わなくていいのに、わたしにはそれを突っ込む勇気がないの。

 気がついてる?

 凍った表情がどんなに泣きそうに見えるのか、どれほど痛々しく見えるのか。

 ねぇ、笑って。

 本当の笑顔が見たい。

 取り戻せなくならないで欲しい。

「コンビニに買い物? 付き合ってあげる」

「大丈夫」

「だーめ。か弱いおひめさまの出歩く時間じゃないわぁ」

 大きく弧を描いて右手を差し出す。


 お手をどうぞ。おひめさま。


 芝居がかった仕草にサリが小さく笑う。

 知ってるわ。サリはおひめさま扱いよりナイトが好きね。

 それでもおひめさまよ。

 いつか月のように優しい涙を流せるといいな。

 それまで寄り添ってられるといいな。

 ブラウンのワンピース。深い藍色のコート。

 わたしはサリを救えない。

 それでも確かにサリを助けたいの。

「わたしは、リツはサリのそばが好きよ」

清く正しく生きようとしている文学少年と男をゴミ扱いする女性崇拝者が、泣かない少女を観察する物語書いてー。 http://t.co/33xpY0zF3g

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