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二人の少女
使用お題ひとつ
一枚の紙を少女が差し込む。それは少女にとって差し伸べられることのない希望へのチケットだった。
ぱさりと軽い、本当に軽い音が少女の聴覚に届く。
人が見ればただのポスティング作業員だろう。
よく見れば首をかしげざるを得ないぐらいにうつろな思い詰めた目を少女は持っていた。
長めのまつげが頬に影を落とす。
そのまつげが上がった時、少女の瞳は何かを吹っ切ったように澄んでいた。
たふんと靴音をたてて少女はその扉の前からはなれた。
ゆっくりと、徐々に弾むように、最後には駆け出す少女を止めるものは誰もいない。
かちゃりとドアが開かれたのは少女が立ち去った後。
ドアを開けたのは栗色の髪の少女。
その手には一枚の紙。やわらかなクリーム色のカード。
少女は頬を桜色に染めて微笑む。
混じりけのない幸福がそこにはあった。
春の日差しが降りそそぐ。
お題は〔差し込む、差し伸べられる〕です。
〔一人称視点禁止〕かつ〔色の描写必須〕で書いてみましょう。
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