時は、シュガーに変わる
お題(キャラ条件)は全部でななつ
体言止め禁止学園モノ❸
彼女は、私にとってはじめはなんのこともない在りきたりな少女でした。
薄い茶色の髪は内ハネで穏やかに蕩けた瞳は翡翠色な夢見がちに見えるありきたりに人形のような少女のはずだったのです。
許嫁の第三王子が庶民の娘にうつつを抜かしていても型通りとわかる仕草で扇を揺らし微笑んでいるような、型通りの貴族令嬢だったはずでした。
変わったのは実家の没落それに伴う婚約破棄の後だったでしょう。
少女は周りに相手されることのない緑の髪を馬の尾のように結った少年にかまいはじめ、やたらと目につくようになってゆく。詳しい意図を尋ねたのは彼の成績が上がりはじめた頃だったでしょうか。
「だってワタクシにはもう殿下の妻の道はありません。おそらく他の方の正妻と選ばれるという道もありません。ですから、ワタクシはワタクシに出来ることを皆様にわかっていただかなくてはなりません」
ふわりと微笑んでみせる姿は心地良くしたたかさを表していた。
「教育者としての素養を持てば、ただの愛人に終わりませんわ!」
それはきっと無理でしょうね。
可愛らしく嬉しげにレージーナ嬢は微笑んで場を和ませる。
過ごしてきた灰色の世界に再び色が差し込まれてゆくのをただ見ていました。
大切な人も失い、私にはなにも残されずに滅ぶこともできないのです。
食事をしないでいれば、いつか私自身は消え失せるでしょう。それでも、私自身の本能に生かされるのです。食事はしてしまうのです。
『シュガーは手伝ってくれますか?』
そう言ったのは失われたと考えていたかつての主君でした。
主君は力をふるった量に見合う食事をしていないのでしょう。とても小さく消えかけでした。
それなのにキラキラと輝く茶色の瞳を信頼に染めて私を見上げるのです。
忠実なる臣下でありたい私にとって応えない選択肢などないでしょう。
あなたはどこまでもつれなくつめたいのでしょう。
笑いながらあなたは『君の冷たさには負けるでしょう』と告げるのです。
その言葉の刃の鋭さを知らぬように。
あなたは無自覚に残忍なのです。
そして私は、黙ってその言葉に従うのです。たとえ、その先に待つ未来があなたの望みからかけ離れていても従いましょう。
あなたの望みは恋しく思う女性から自分たちの記憶を奪うことと、彼女が望むままに幸せであることでしたね。
大切な家族を失って失ったことすら奪われる女性の心を考えつかないあなたは無自覚に残酷なんです。
慰めましょう。思い出せないようにしましょう。
誰にも彼女を不快にさせないようにしましょう。
それが、あなたの望みですから。
正しく、正しく彼女があろうとしたのはあなたとあの弟がいたからでしょうに。
なんて的外れでしょう。
彼女が望むわけもないのに。
「おまえは害を与えるのか?」
勇者の言葉に笑いがこぼれます。
「私は私の正しい道を選んでいますし、与えているのは知識と技術ですね」
教師ですから。
欲するのは常に欲深く生きる者でしょう。
喰民をただの不老不死な生命と誤認するような。
私達は長く若く生きるでしょう。
その絶望を知らぬ者には羨ましいことらしいのです。
だから、彼らは彼女をこの学び舎に閉じこめた。
喰民の研究をしていた父の知識を受け継いでいるはずと決めつけてなんて浅ましいことでしょう。
彼女は疑うことなく彼らからの面会を受け入れたのです。そう、止める暇もなかった。
数年前に彼女の父の研究資料をすべて奪いながらも、彼女が知っていること考える愚かさに彼らは溺れていただかないるのですね。
彼女が我が主君を売れば、私は彼女のすべてを滅したでしょう。
そうは、ならなかったのです。
彼女は打たれても「知らないです」と無知を示し続けたのです。
だから、我が主君は怒ったのでしょう。
王と王城を打ち払ってしまった。
耐えがたい渇きが身を苛むと知りながら。
幸いなのは彼女が生きていたことでしょう。主君は勇者の血をもって想い人をひと時抱きしめることができたのです。
生きるという事は生命の失えない欲求で、死にたくとも時に生きてしまう。それが生き物だと私は考えています。
それでも、意志の力で他者から与えられる死を受け入れることができるのが人でしょうか。
自己犠牲とは美しくも悲しいでしょう。
「魔王は滅ぶべきだし、終われば勇者だっていらないんだよ」
あなた達は目覚めたくて目覚めたわけでなく、偶然の運命なのでしょう。
「勇者なら私を殺しなさい」
そう呟いてもあなた達は聞きはせず私はまた置いていかれる。
あなた達のいた場所の記憶をひとつ残らず砂糖に変えて食べてしまいましょうね。
知らないでしょう。
空白の時間が多くなった人間がどれほど脆いのかを。
彼女は広い図書館でただひたすら本を読むのです。自分がなぜ読んでいるのかも知らぬままに。
守りましょう。安らかな眠りが彼女におちるまで。
「ワタクシできますわ。やろうと思えばなんでもできるんですの。ところで、テイル様をご存知ありません?」
「テイルくんですか?」
私が全て食べてあげましょう。彼らがいたのだと、存在していた時間を全てを。
だから悲しむこともないでしょう。
サラサラと小瓶に砂糖が溜まる。
「テイルさまですわ……?」
たどりつかない記憶に翡翠の瞳が陰ります。
「私が食べてしまいました」
あなたの過去の時間を。
「人を食べてはいけませんのよ!」
ですから笑っていてください。
いつか、私をおいていなくなるその日まで。
私のこの腕の中で。
清く正しく生きようとしている考古学者と健康的でいやに行動力のあるニートの一方通行な恩返しの話書いてー。
shindanmaker.com/151526
ーとにあの本ー
【内容】エリート学園が舞台で見下されていた主人公が、隠していた力を使いのし上がっていく下克上ストーリー
【主人公】元勇者
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タイトル:名なしの神 とにあの空の黒猫
主人公
髪色:思いやり溢れる緑
髪型:ポニーテール
目の色:キラキラした茶色
身長:198㎝
性格:肉食系男子
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タイトル:魔界の王 黒猫の時計を持ったうさぎ
黒猫
髪色:元気なオレンジ
髪型:坊主
目の色:キラキラした茶色
身長:0.49㎝
性格:優しい弟タイプ
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月のように白い髪、紫色の目を持つ悪食です。世界終焉までの時間をシュガーに変えることができ、小さな角を持っています。この世界を嫌っている、気品のある男性です。
#儚い悪食ったー
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女子になったら
身長:172cm 性格:天然 胸:Iカップ
髪:ミディアムの内ハネ 色:薄茶
目:タレ目 色:翡翠 好きなもの:ゲーム
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お題は〔きみのつめたさ〕です。
〔体言止め禁止〕かつ〔「声」の描写必須〕で書いてみましょう。
https://shindanmaker.com/467090
『体言止め禁止学園モノ』の続きは、ありません。




