『ワタクシの実力をお見せいたしますわ!』
体言止め禁止学園モノ❶
人里離れた場所にある学校でワタクシは手紙を受け取りました。
大人たちの争いに負け、ワタクシの実家が力を失ったという内容でした。
第三王子殿下との婚約も白紙です。
連絡がワタクシに届いたように他の方々にも届いたのでしょう。潮が引くようにワタクシの周りには誰もいなくなりました。
それは生徒だけでなく、先生方もでした。仕方のないことと理解はしております。派閥の影響は瑣末にまで届くのものですから。
そんななかでシュガー先生とレトロ先生は変わらずにいてくださいました。
分をわきまえていない、無礼な人たちと嫌っていましたが、ワタクシがわきまえていなかったのです。
ワタクシは生徒で彼らは教師なのです。
区別差別特別視をあたりまえに望むワタクシがわきまえていなかったのです。
お父様が失脚した今、ワタクシこそが家のために領民のために力を尽くさねばならないのです。
殿下はワタクシに見向きもしてくださいません。
殿下に人前で突きつけられたワタクシに政略結婚の先はおそらく望めはしないでしょう。
望んでいただけたとして、殿下より影響力は望めませんし、ワタクシを妻にという事で王家に睨まれることを考慮すれば、ワタクシが嫁げる先は限られ、もしかしたら愛人として囲われることすら家のためには必要でしょう。
それとも教師になれるでしょうか?
それなら可能性はあるかもしれないのです。
ワタクシはてはじめに、落ちこぼれ教育をして自分の素養を確認することにしたのです。
「馬鹿じゃねぇの」
ワタクシは彼がなにを言ってるのかが理解できませんでした。
ワタクシが馬鹿ですって?
ワタクシが気がついた時には彼は姿を消していました。
「なにをしているのかな」
と、シュガー先生に言われて気がついたんです。
シュガー先生はハニーミルクのような髪を女性のように長く伸ばした殿方です。
ワタクシは先生に彼を導きたいと思ったという野望を伝えました。
聞き終えた先生はワタクシを一度つま先から頭のてっぺんまでご覧になりました。
「本気なのかね?」
ワタクシは先生から目を外すことなく頷き返しました。
「彼は、最低辺の成績でこそないが、学内ではそういった扱いだと知っていながらかね?」
そんな存在に関わる危険性は、リスクはとても高いと思います。
「ワタクシはこの試練を乗り越えてみせますわ!」
それからのワタクシは彼を理解する努力を致しました。
課題の提出が遅れてると聞けば、資料室で課題作成を共に行い、ダンスの成績が悪いと聞けば練習をこれもまた共に行い、演奏の授業に向けては適正の高い楽器を共に探しましたわ。
乗馬や武芸の授業には幸いにして好成績ですので、お作法の基礎だけが問題でした。
彼はメキメキ教育の成果を出していきます。
ワタクシの導きの正しさにワタクシ自画自賛ですわね。
彼の武術は武術の先生に近く、学生内では敵うものはいないほどであり、ダンスのステップもリードも王室舞踏会に出席しても恥ずかしい思いはしないはずです。
具合の悪い令嬢を荷物運びしないということだって言い聞かせてありますもの。
野蛮人も教育しだいだとワタクシは知ったのです。
ワタクシ、自分に自信が持てましたわ!
呪われた体言止め禁止学園
お題はまだ秘密




