トライアングル
使用お題はひとつ
私はサリ。十六歳。
私の目の前で二人は口論中。
はっきり言っていつもの光景。
止めずにどこまで続くか見ていようかと思う。
一人はひとつ年下の男の子。読書家眼鏡のコマ。
一人は、数週間前近所に越してきた派手な性別不詳の男嫌い。マフラーのっぽリツ。
ちゃんと考えた言いあいだったのにいまや相手をバカにする言葉ばかり。しかも頭悪そうで笑っちゃう。
「笑うなよ! サリ!」
コマの言葉に笑顔が引っ込む。
すぐにコマは言い過ぎたって表情になる。
「ヤダ。サイテー。女の子を怒鳴りつけるなんて。これだから男ってゴミ屑以下ね」
リツの言葉にそこまで言わなくてもと思う。
にこりと笑ってリツが私の名前を呼ぶ。その声は優しい。リツに言葉を封じられたコマは不機嫌そう。
否定すればリツの機嫌は損ねられる。
否定しなければコマが機嫌を損ねる。
私はどちらの味方がしたいわけでもないのに。
「私、帰る」
イヤだった。逃げた。引き止めるかのように二人の手が動いた。
すり抜ける。見えなかったふりで歩き出す。
どうして仲良く出来ないのかわからない。
どうして構ってくるのかわからない。
私を口実にして何をはじめるのかと思ってしまう。
私はコマの言葉ぐらい、驚くけど、怯えてはいない。
私はリツの持ち上げるような対応にくすぐったくも思うけど、同時にどうしてコマをそこまで酷く言うのかがわからなくて困惑する。
くるり。
マフラーの先端が円を描く。
「帰っちゃったわぁ」
「リツがキツイ言葉を選ぶからだろ」
軽くメガネの位置を直しながらコマがそっとこぼす。
きりっとリツはコマを睨むけれど、少し悪かったと思っているのかすぐに空へと視線を転じる。
「だっていろんなサリが見たいわぁ。笑ってて欲しいけど、驚いてくれたりするとちょっとお得な気分」
「サイアク」
「失礼ねぇ。エッチなサリも見たいじゃない?」
「最低だ!!」
赤くなって叫んだコマの姿にリツは笑い転げる。
「コマはサリのこと好きよねぇ」
リツはコマの頭を押さえ、その前進を阻みつつ笑う。
ぱっと手を放せばつんのめるコマ。リツはそれを横目に見つつ大きな動きでターン。ぐるんとマフラーが大きく軌跡を描く。
「わたしはねぇ、長くそばにいなかったから、そばで出来るだけ見てたいのよね」
軽いステップ。
体勢を立て直したコマは軽やかに歌いながらステップを踏むリツを見つめる。
「サリに嫌われるぞ」
俯いて呟くコマ。リツはステップを踏むのを止めコマを見下ろす。
上げられる手にコマがびくりと身体を震わせる。
「コマ」
ぐしゃり。
黒髪が乱雑にかき混ぜられる。
「ばーか。サリのことだけ考えてればいいんだよ」
清く正しく生きようとしている文学少年と男をゴミ扱いする女性崇拝者が、泣かない少女を観察する物語書いてー。 http://t.co/33xpY0zF3g




