アクアウィッチ☆ハピエンまで遠そうだ
使用お題ひとつ
「恥ずかしいから見るな」
そっと耳先を赤く染めた先輩が顔を隠す。
先輩が可愛くて伸ばした手は目覚ましを掴んだ。
「遅刻する!!」
「馬鹿じゃないのか?」
トレバーが笑いながら小魚の入ったバケツを持ち上げる。
「悪かったな」
どーせ馬鹿だよ。
「できる男を目指すんだろう?」
口を動かしつつ動きが止まることはない。
そんなヤツを見ながら行動を止めてなんかいられない。
「俺はシャーリンをおとす!」
通りすがりのイルカに水をかけられて笑われた。
ムカつくぞ、お前ら!!
「仕事しろよ」
トレバーが笑う。
「クリスマスは大切な人と過ごす日だろう」
「ああ」
恋人と過ごす日だよな。ぼっち寂しい。
「今年はパパがこっちに来てるから一緒に過ごせるんだ。スゴく、嬉しい」
恋人と、過ごす夜……。
先輩、不遇?
「先輩はシャーリンと過ごすってはしゃいでたから、タクも先輩とシャーリンと過ごすんだろう?」
つまり、ケーキや夜食を持ち込めばクリスマスぽくなる!?
「サンキュートレバー!」
「あ、ああ」
よっしゃ!
ヤるぜ!
閉園後、普通にスタッフのパーティーがあった。
手元のサンドウィッチボックスが切ない。
水槽の向こうに影が過る。
水中でイルカ達が戯れている。
水槽にそっと寄ってきて俺の視線を得たのを確認して、水中で回転する様を見せつけてきた。
褒めろとばかりな行動に俺はつい笑って手を叩く。
きっと、沈んでるように見えた俺を励ましてくれたんだ。
「ああ、お前か」
「先輩……」
パーティーはどうしたんです。と問えば、お前はと逆に返されて困惑する。
「めぼしい料理も残ってなかったしな」
そう言ってガラス越しにイルカに合図を送る。
はしゃぐイルカ達を眺めながら笑う先輩はキレイだと思う。
「これ、一緒に食べませんか?」
何処か不審そうな眼差しが返る。
「シャーリン達を見ながらごはんしませんか?」
じっと見つめられている気がして息がつまりそうだ。
心臓が五月蝿い。
「ああ。ありがとう」
急速に安堵してボックスを落としそうだ。
「明日も仕事だしな。たまにはこんな時間も良いだろ」
美味いと笑う先輩は、きっとどんな料理も褒めるんじゃないかと思う。
「この時間が嬉しいです」
「ああ。シャーリン達を見ながらごはん。至福だろう!」
「はい。大切な人と過ごす夜。本当に特別だと思います」
ぎちりと先輩の動きが止まる。
これ以上進めば逃げられる。きっと過去がそんな気がする。
「来年も、こうして時間を過ごしたいです。期待せずに忘れててくださいね」
後輩男子と女性魔術師のカップルで、寝室のシーンを入れたハピエン小説を書いて下さい。
#ハピエン書いて
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ハピエン遠い




