やまないあめ
使用お題ひとつ
雨に沈んだ世界で少女は窓の外を眺めています。
いくら窓の外を眺めても雨はやむことを知らないかのように降り続けます。
「お母さんはいつ帰ってくるのかしら?」
少女は鈍く歪んで見える窓の外を眺めます。
買い物に出かけた母親の帰りを心細く待っているのです。
少女は窓の外を眺めていることに疲れてしまい、うなだれました。
「おなかすいたよぅ」
少女はとぼとぼと力なく台所にむかいます。
そこには母親が出かける時に準備してくれた料理が蓋のある入れ物に入れて置いてありました。
少女は手を伸ばしかけてはためらうように手を引っ込めて、頭を振ります。
「お母さんと一緒に食べるんだもん」
なくなったら、母親が帰ってきてくれない気がして少女は手を伸ばしては引っ込めてを繰り返すのです。
しばらくしてひとつだけ焼き菓子を持って少女は窓のそばに戻ります。
雨は降り続き、やむ気配がありません。
心細くて泣き出してしまいそうな少女の耳にドアを叩く音が届きました。
「お母さんかしら?」
母親なら鍵を持っています。
「おはようございます。お届けものです。こちらに置いてまいります」
ドアの向こう側から配達の人の声が聞こえます。
少女は転びそうな勢いで走って玄関を開けました。
そこには大きな箱だけがぽつんと置かれていました。
少女はその荷物を引きずって部屋の中に入れます。
重くて重くて持ち上げることはできませんでした。
それでもなんとか玄関の内側に運びました。
バタンと音を立ててドアが閉まりました。
少女は箱を開けようと刃物を差し込みます。
「お母さんが帰ってきたの?」
違うと思いながらも少女は希望をのせます。
箱の中にはたくさんの食品が入っていました。
少女は母親から習ってどうするべきか知っています。
同時に気がつきました。
「お母さん、帰ってきてくれないんだ」
雨は降り続きやみません。
朝が来ても少女は気がつけないのです。
雨はやみません。
お題は〔最悪の雨〕です。
〔体言止め禁止〕かつ〔「朝」の描写必須〕で書いてみましょう。
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