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自縄遊戯  作者: とにあ
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あそべない

使用お題ふたつ

「私はあの子が好きであの子の家族になりたくてあの子に家族になって欲しいのよ」

「駄目だよ」

「駄目じゃないわ。かぼちゃのケーキにジンジャーマンクッキー。子供たちのかけっこを見守るの」

「駄目だよ。あの子には母親がいる。君の、僕らの子供にはなれないよ」

「ねぇ、子供は守られるべきだと思うの」

「君はあの子に傾倒しすぎだ」

「だから会わせてくれないの?」

「僕らの息子だけじゃだめだというのかい?」

「お兄ちゃんができれば喜ぶわ。あの子達、仲がいいのよ」





「ねぇ。誤動作が最近多いのよ」

「治療法を探してるから! 君がいないとダメなんだ!」

「ねぇ。最後のお願いよ。ぼうやに、あの子に会わせて」

「それは、……申請してみよう」

「約束よ」




「ママ?」

 手を差し出せば、嬉しそうに駆けてくる。

 その笑顔がどうしてこんなに切ないの?

「ママのこと、覚えててくれた?」

 ふわふわした笑顔。この子は私を憶えていない。それでも、笑顔で甘えてくる。かすかに感じるのは怯え。

「また、一緒にかぼちゃのケーキやジンジャーマンクッキーを作って食べたいわね」

 抱きしめて撫でる。

 不安にならないで。

 私ではこの子を守ってあげられない。

「グランマ、えほんよんでくれる?」

 恥ずかしそうにささやく言葉。

「きっと読んでくれるわ。連れて、帰ってあげられなくてごめんね」

「ママ?」

「楽しくて、嬉しくてママはしゃぎすぎちゃったわね」

 クスクスと笑うあなたを撫でる。

 条件が揃えば思い出せるのかと思えば、切ない。

 それは幸せの記憶?

 それはただの記録?

「許してくれる?」

 あなたを助けてあげられない駄目なママね。

「ママ?」

 わかってない不思議そうな表情。

 頬に押し付けられるキス。

 嬉しそうに笑ってもう一度。

「愛してるわ」

 そう告げれば嬉しそうに笑う。愛おしい私のもう一人のぼうや。

 誰かに呼ばれて名残おしそうに部屋を出て行く。

 なんとかできないかと思う。

 エゴ?

 それでいい。

 身勝手?

 かまわない。

 心配そうな夫に微笑む。

 私が子供を産む事にあなたは反対した。

 その後、私達の子供にはあなたは関心を持たない。

 私のことは愛してると言ってくれるのに。

 ふらっと訪れた見舞客。

 他にもいるかも知れない。代わりになってしまう子もいるかも知れない。

 それでも、私はあの子だけ考える。

 もう一人のぼうやには母がついてる。

 ぼうやには守ってくれる影が見えないの。

「あの子を外に出してあげたい」

 可能性に賭けたいの。素敵な人に出会えるって。

「もう、君と賭けをして遊べないのかな?」

「最後の遊び。きっと最後の賭けだわ。そして、あの子は幸せになれるわ」

「ほら、賭けにならない。二人とも同じ方に賭けたいのだから。個人的事情もあるからね。動ける限り動こう」

 見舞客(ともだち)は素敵。

 夫は彼を苦手視するけど、私は彼を信用してる好きだ。

 恋愛じゃない。ラブじゃなくてライク。



 夫に出会ったのは学生時代。

 やんちゃだった彼が本を読む私にぶつかったことが出会い。

 ボールから庇ってくれた彼がそのまま突っ込んできた。

 私はその衝撃が訪れるまで気がついていなかった。

 めまいをおこした私を彼は慌てて救護室に連れて行ってくれた。

 お姫さま抱っこに胸がときめいた。揺れて気持ち悪かったことよりときめきがかっていた。

 きっと恋してた。

 友達から恋人。心臓に疾患を持つ私に「結婚しよう」とあなたは言った。「子供より君が大事」あなたはそう言った。

 私は「私が大事なら子供を欲しいと思う私の意思を優先して」とわがままを突きつけた。折れたあなたに甘えて、きっと今だって甘え続けてる。

 あなたへの愛は裏切らない。

 でも、きっとあなたの望みをかなえない私はあなたを裏切っている。

 そしてあなたがしかたないと笑う笑顔が好きだから。

 最後まであなたの心を乱したい。



 だってあそべなくなるまでの時間は少ないの。



 素敵な記憶も困った記憶も怒った記憶にだって私は私を焼き付けたい。


 私は私が好きな人の心に残りたいの。


 愛する夫。

 愛しい子供たち。

 

 欲しい物がすべて手に入らないことなんかわかってる。


 だって、すべて手に入るなら、私は健康な体が欲しい。


 でもね。言わないわ。


 走ることはできなくてもあなたの走る姿、子供たちの走る姿は大好きだし。




 あなたの愛を手に入れてる私はきっと贅沢な生き方が出来てる。



 わがままで満たされた人生。


 あわただしい足音が聞こえる。

 あなたが駆けてくる。



「愛してるわ」


 






お題は〔あそべない〕です。

〔直喩禁止〕かつ〔「走る」描写必須〕で書いてみましょう。

http://shindanmaker.com/467090

とある職人と図太い性格の心臓に爆弾抱えた病人、二人の過去についての話書いてー。

http://shindanmaker.com/151526

直喩ちょくゆとは、比喩の一種で、比喩であることを明示する表現をいう。明喩めいゆともいう。

それに対し、文字通りに解釈すると比喩であることがわからない比喩表現を、隠喩あるいはメタファーという。

直喩は明白なつながりのない2つの事物を比較する言い方で、典型的には「雪のように白い」「ひょうたんに似た形」「死ぬほど退屈」などの言い回しを用いて表現される。

ウィキペディアより




こなせてないかもしれない。

難しい。

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