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自縄遊戯  作者: とにあ
109/419

ズルい

使用お題ひとつ

 


 君と久々のデートは植物園。

 薄曇りでまだ過ごしやすいかと思っていた。

 テーブル型や動物にカットされた大きめの鉢に植えられた木々。色を揃えて作られた花の絵画。

 小さな名も知らない花。

 手を繋ぎたいのだけど、君に拒絶されたらと思うとこわくて手が伸ばせない。

 君の格好はいつも通りラフ。くせっ毛を無造作に束ねてタンクトップに薄いパーカー。スキニータイプのジーンズはラインがわかりやすいんだよね。

 ベイビータイプの日焼け止めローションの匂い。

 曇っていても紫外線はあるから、塗りなおしを勧める。

 告白は君から。

 僕は君を知りたかった。

 だから付き合いはじめた。

 会えるのは週に一度か二度。それでもその時間が大事だった。

 間違いなく君が好きだ。

 だから、君が『他に好きな人ができたら言ってね』と口にするのが嫌だった。

「僕が嫌い?」

 君は首を横に振る。「違うの」と。

 僕は君を手放す気はないのに君はいつも離れたがる。僕はイヤな存在になっているんだろうか?

「僕は好きだよ。永遠不変の愛じゃないけどね」

 びくんと君の肩が揺れる。

 表情は傷ついた色。

 永遠の愛を語って欲しかった?

「どうして、わかってくれない?」

 視線が僕から逃げる。

「わかってるよ」

 君はわかっていない。

 ポツリと額に水滴を感じる。君も感じたようで一緒に鉛色の空を見上げた。

 生温い風はじっとりと絡みつく。

 顔を見合わせて僕らは走り出した。

 辿りつくのは少し広めで屋根のある休憩所。

 壁はないがざあっと降りだした雨の直撃だけは避けられる。

 喫茶店や売店、温室、屋内観覧の施設が近ければよかったのに。

 薄いパーカーが濡れて張りついている姿に目のやり場が困る。

 君はそこには無頓着。

 君の額にはりついた髪をそっと払う。

 汗だろうか、雨だろうか?

 どちらでもよかった。

 君の眼差しは不安そう。

 きっと僕も不安そう。

 そのヒヤリとした額に口付ける。

「好きだよ。変わらない感情なんか約束できない。出会った時から心は変わり続けているから」

「……そぅ」

 君は傷ついた色を強める。

 ああ。

 君はズルい。

「どうして分かってくれないの。僕はどんどん君を好きになるのに」

 変わらない愛なんて無理だよ。

 僕はどんどん君をとらえておきたくなっていくのに。

「……痛いよ」

 囁く君の声が嗜虐心を揺らす。

「嫌われても、逃がさないから」


場所:動植物園、

状況・条件:悪天候、

必須の台詞:『どうして分かってくれないの?』

http://shindanmaker.com/571142

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