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自縄遊戯  作者: とにあ
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姉弟

使用お題ひとつ

「ああ、弟君は知らなかったんだね。あの女がすべての元凶さ。あの女さえいなければ弟君は両親の愛に包まれて過ごしていられたんだ。あの女がいたからすべてが奪われたのさ。両親も、立場もすべて」

 言葉を失った少年に老女は語り続けることをやめない。毒を注ぎ、内側から壊そうとでもいうかのように。

「アタシはね、あの女が生まれたから片目を奪われ焼かれて突き落とされたのさ。絵師として認められかけた矢先にね」

 少年は聞くまいと耳をふさぐが、その行為こそ無駄とばかりに老女はにたにたと笑う。

「弟君もアタシみたいに何かを奪われるために飼われてるのさ」

 毒は時間をかけて注がれる。

 老女にとって少年はいつしか作品だった。

 自らの恨みを代行させる刃という名の作品。そのことを当の少女は知ることはできなかった。



 少女が生まれた家は古いしきたりに縛られた家であり、少女は生まれた時からしきたりに縛られた人形である自分に違和感を覚えたりすることなく育っていた。

 六歳の時にできた弟のこともしきたりにそった範疇で愛情を注いだ。それ以外は知らなかった。

 そう、姉である少女は何も知らされずに育っていた。

 弟が大切にしていてた猫が屍で見つかった時は慰めた。

「かたちあるものはいつかこわれてしまうのよ」

 弟は黙って聞いていた。姉は弟が理解してくれたと喜んだ。

 少女は弟に愛情を注いでいるつもりだった。そう、姉は弟に殺意を向けられていることに気がつかなかった。猫を殺めたのが自分であると誤解されている事を知らなかった。


「姉様」

「おはよう。ケイン」

 少女は(ケイン)の呼びかけに笑顔で微笑む。

「朝食ですよ」

 弟は料理上手だった。

「今日は私が作るつもりだったのよ」

 少女は弟を見つめて笑う。

 なんの疑いも持たず少女は弟の作った朝食を口にする。

 屈託のない信じているかのような他愛ないさえずり。

 疑いも持たず毒の皿をあけていく。

 弟は血の繋がらない姉を見つめる。

 人の悪意に触れることなく育てられた姉だった。

「食べ過ぎちゃったのかしら。気分が悪いわ。美味しすぎるのも困っちゃう」

 姉だったものはニコニコ笑っていた。

「馬鹿ねぇ。馬鹿ねぇ。困っちゃうわねぇ」

 致死量の毒だった。

 姉は笑っていた。



 ぼとん。

 もう長くはないであろう老女の前に落ちてきた頭。

「馬鹿ねぇ。馬鹿ねぇ。会いたかったの?」

 少女はニコニコと笑って弟の頭を踏みにじる。

「会いにきてあげたわよ。馬鹿なおかあさん」



「馬鹿ねぇ。馬鹿ねぇ。ちゃんと寂しくないようにたくさんたくさんおくってあげるわ」


 少女だったものはもういない。

ねーとにあ、壮絶な人生を歩んできた芸術家と血の繋がりのない弟によって、命を狙われることになった女の物語書いてー。 http://shindanmaker.com/151526

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