ピクニックランチ
使用お題ひとつ
セマはピクニックバスケットからレジャーシートやお弁当を出して広げていく。
そこは丘の上の広場。
柳や桜が取り囲む少しだけひらけた場所。
すとんと地面はなくなって崖があると知っている。
ここはピクニックのベストポジション。
光に照らされる王都は美しいと評判だ。
それでもセマはその光景を見たことがなかった。
女王の血統に生まれた男子として期待され、その期待を裏切り続けた自分。
男であるというただ、それだけで価値を認められる。
誰も、セマを責めたりはしない。
『時が来た』だけなのですと言って。
天上には月もない。
新月の夜で星も雲で隠れている。
王都のわずかな人口の明かりだけがセマの瞳に眩しく映る。
昼の魔力は強すぎてセマは暗い部屋でしか息ができない。
「ああ、空が青いなぁ」
セマはレジャーシートにみっともなく身体を投げ出して、夜の青を見上げながら、暗い自室で耳に届く『素敵な青空』に心を馳せる。
恋しい。見たい。感じたい。
責められない自分。望まれない自分。
それはどこまでも自分が空気のようで切ない。
期待されない自分は確かにこれ以上期待を裏切らないのだろうと苦い笑いがこぼれる。
夜露を含んだ青い植物のにおい。
風がしだれる木の枝を揺らす。
そんな世界だったんだ。
この世界は違った。
この渡った世界は呼吸しやすい世界だった。
体を循環する魔力に酔って、姉妹を少し傷つけてしまった。
少しでも役に立ちたかっただけなのに。
ここは違う世界。
王都は見えない。
夜の青より薄い空色を見上げる。
花が光と風を浴びて揺らぐ。
その光景は笑みをこぼさずにはいられない。
ああ。
昼ってなんて美しい。
とにあさんは一時間で
お題:「 昼 」を作って下さい
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