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ある日の話

元旦。

作者: 九条 隼

窓がカタカタ揺れていた。

千歳遠矢は四角形の炬燵に肩まで入り寝転がっていた。ひとつは、彼。ひとつは、赤桐楓。ひとつは、香川康樹。四つのうち三つが埋まっていて、あまり広くはない炬燵の中では先程まで蹴りあいが起こっていた。

赤桐は当然、千歳も誰かのため足を折り曲げることなど考えもしないため、結果実力行使になったわけである。

そしてさんざん暴れたあとは、こうして微睡みに浸っていた。

「赤桐ぃーみかんー」

半分目を閉じたまま左に顔を傾ければ、うつ伏せになりドウジンシとやらを読む赤桐が目に入る。

相変わらず変なもん読んでんなあ……。そんなに面白いのだろうか。しかしその横顔は無表情である。

「あかぎりーぃ」

「赤桐さんはみかんじゃありません」

ぺらりと一枚ページを捲ったと同時にピシャリと言われる。仕方が無い。

「じゃーあー、やっすー」

「じゃあじゃやだ」

めんどくさい女かお前は!

やけに綺麗な姿勢で座る香川を見上げ、ため息をついた。まあ大体は予想していたさ、俺だって。

「なー、雪降るかな……」

ふと重たいカーテンをみてつぶやく。

相変わらず風は五月蝿い。

かしこの部屋といったら、まるで正反対。それはもう、静かである。

別に、居心地悪いわけではないけれど……心の奥底で何かが溢れた急き立てるのである。


時間はもうないのだと。


ちらりと赤桐を見てみれば、何も変わらないいつもの無表情。さっきから何も変わっていない。

あと少しで、きっとこうして一つの炬燵にはいり寝転がることも出来なくなるだろう。

ああ、なんだかなぁ……。

自分で決めたはずだったのに、まさか情が移ってしまったのだろうか。俺ってば、冷徹と言われた千歳遠矢だぜ?

まーさか、なぁ。

「雪降ったらさあ、雪合戦しよーぜ」

まさかこの俺が、利用対象に気を許すだなんてさ。

いっそバレなければと願うなんてさ。

「わー、いいね!かまくらとかも作ろうよ!餅焼こう餅!」

「かまくらか、たまにはいいこと言うなやっすー。見直したぜ」

「かまくらで!?」

ばっと乗り出してくる香川にケラケラ笑って、それでも千歳は赤桐に近寄る。

「どう?どうよ、赤桐ぃ」

お願いだから、それまではそばにいさせてくれよ。

いつかお前の大切な幼馴染みを、俺が殺してしまうまで。

それにお前が気づいてしまうまで。


ただの、お前の親友の男子高校生でいさせてくれよ。


なあ、頼むからさ。



昔の俺は嫌いなんだ。





へらりと笑ったその先で、相も変わらずなんの表情も変わらない赤桐は言った。


「寒いのでその日は冬眠してます」


「……馬鹿!ものぐさ!男女!!」



ぺらりとまた、ページがめくられた。


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