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第1話

はじめまして。工藤nanokaと申します。

このサイトで先人の皆様がたの素晴らしい作品にあこがれまして、こうして投稿を、となった次第です。

まだまだ若輩の身、文章力も到底ありませんし、皆様のお目汚しをしてしまうかもしれません。

ですが、足りないところは精進していく所存であります。

叩かれ覚悟ですので、できるならば、生暖かい目で見ていてやって下さい。

それでは。

「お主、名はなんという」


厳かな雰囲気の中、見るからに高級そうな玉座に座る、見るからに王様みたいな人に俺は名前を聞かれた。


「…は、ハイっっ! っさ、佐藤 裕樹とっ、も、申しますっ!」





今の状況において、俺はテンパりながらも考えをめぐらせた。

ことの発端は、俺はついさっきまでカラオケにいたはずだった。中総体が終わり、所属していた中学校のサッカー部の友人と、打ち上げをやろうという話からはじまったはずだ。

さっきまで歌うたいながらみんなで楽しく騒いでいたはずなのに、目を開けてみると石造りの知らない部屋の中に座っていた。それからのことは、展開が早すぎてあんましよく覚えていない。


結構省略したが、それで今に至るわけである。

名前を告げるとき、あまりにも情けない声をだしてしまった。周りに居並ぶ大臣や貴族、はてにはバトルジャンキーじみた騎士の方々も控えていらっしゃる。


これは笑えるね。大ピンチだね、俺。

さっきの自己紹介で、醜態をさらしてしまったせいか、周りの視線が厳しい。


「…これが勇者なのか?」「まさか召喚に失敗したのか?」「…これではこの国はどうなる!?」

ヒソヒソ。ざわざわ。  等等



どうやら俺は異世界トリップをしてしまったようだ。まず文化が違う。王座の間とでもいうのだろうか。

広い石造りのホールに百を余裕で超えるぐらいの人々がいるわいるわ。

ホールのつくりも中世ヨーロッパのようだ。

それに重臣たちの話が結構な大きさで聞こえてくる。服で階級がわかれているのだろう、これまた高級そうなというか品があるというのか、玉座に近い位置で、上品な套をまとった十数人の人たちだ


俺は異世界トリップものの小説は好きなほうだったが、実際我が身に起こるとなると話は別だ。

まずなにがおこるのか、まったくわからない。

だが、話を聞く限り、俺は勇者としてここにいるようだ。


小説の中だと勇者にはとてつもない魔力があったり、すごい身体能力があったり。

いわばチート野郎だ。

しかし、ぶっちゃけ自分にはそういった類のものがないようだ。


何でわかるのかって?


それは、あの王様に魔術師みたいなやつが報告してる内容が聞こえてくるからだ。


「…おいヴァルゴ、あやつは何だ?あんな頼りなさげな奴が勇者だと申すのか?」

「はい。一応勇者召喚の儀式は滞りなく成功いたしましたゆえ、間違いはないかと…。まあ、私も多少驚きましたが」

「しかし、余には何の力も感じぬ」

「はい。それは私も同じですが、万が一ということもございますれば…」


勇者かもしれない者を前にして、ずいぶん失礼なやつらだ。

しかし、自分の身なりはわかるし、状況が状況なので反論はできない。


「…うむ、まあよい。早速あの者に探査の魔法をかけよ。」


その一言で俺は別室へ連れて行かれた。

なんか俺に魔法をかけるらしい。

それにしても、やはりお城。とんでもなく広い。移動に3分もかかるとか。

ウル○ラマンにアヤマレ。


「失礼します、勇者様」


さっきのヴァルゴとかいうやつだ。あいつはなにやら詠唱をすると、手に持っていた杖を俺に向けてきた。全身が不思議な感覚と光に包まれる。体中が変にあたたかい。魔法というものは全部こんな感じなんだろうか。俺にはよくわからない。


光が収まってきた。どうやらさっきの魔法が終わったようだ。ヴァルゴがこちらをむいて微笑む。

あ、こいつ意外とイケメン。


「勇者様、魔法が終了いたしました。王より、貴方様にお話がございます。この部屋の前にいる侍女がご案内いたしますので」

「は、はぁ…、わかりました」


部屋の前にいた侍女が「こちらへ」というのでついていく。

そういえば、なんで俺こっちの世界の言葉がわかるのだろう。あ、そういえば石造りの部屋にいた巫女っぽい服を着た女の子がなんか俺に魔法をかけてたっけ。気が動転していて思い出せなかった。

侍女さん、いいお尻してるなぁ。


そういえば、俺は帰れるのだろうか。俺が異世界に来ていることは、確実だろう。これだけ現代の日本と比較して違うことが多ければ、逆にここがどこなのか説明してほしい。

さっき頬をつねってみたが痛かったので夢ではない。まあ、夢ならば「これは夢か」とか頬をつねるとかはやんないだろう。


フィクションではあるが、小説だと勇者はみんな帰れないことが多かったはず。俺としては、帰れるなら帰りたい。今までの生活にも満足していたし、頭は悪いほうじゃなかったので、進学する高校も合格判定はAだった。友人もいいやつばっかりだったし、両親や兄弟とも、あまり喧嘩もせず仲良く暮らしていた。


やはり俺は元の世界に戻りたい。彼らと会うことがもうできなくなるなんて…


「………ま。…ーキ様」

「え?」

「ユーキ様?泣いておられましたが、どうかなさったのですか?」


俺は泣いていたらしい。侍女さんは、俺を気にかけてくれていたみたいだ。

今では腕を組んで歩いてくれている。さっきから、何度呼んでも返事がなかったそうだ。ありがたいことだ。

俺を心配してくれている人がいる。これだけでも十分心が軽くなる。ありがたいありがたい。

腕に彼女の豊満な果実が当たっている。ありがたいありがたい。


「ユーキ様、どうかなさいましたか?」

どうかなさっています。はい。


「い、いえ。なっ、なんでもありません」

「はぁ、左様でございますか…」





王の待っている部屋へと着いた。

先ほどのホールではないにしろ、この部屋も随分大きい。

部屋の奥、中央の玉座にはやはり先ほどの王が座っている。その周りには、これもやはりというべきか、先ほどの十数人の重臣たちが居並んでいる。この人たちは大方この国の重要な役職、それも政治を動かすレベルのポストについている人たちなのだろう。正確に数えてみれば16人だった。


玉座の前で俺は頭をたれ、ひざまずいた。さっきの侍女さんにいわれたことだ。

王と重臣たちは、値踏みをするような目で俺を見ている。冷たく、刺すような視線が痛い。

王が重々しく口を開く。


「面を上げよ。ユーキ殿」

「は、はい」


俺ははじめて王の顔をしっかり見ることができた。

しわが刻まれ、顔はいかつく、その目は疑り深く人を絶対信用しないと物語っている。

どうやったらこのような男が国のトップにたてるのかというくらい、いうなれば、殺人鬼じみた風貌をしていた。

その点に関しては重臣たちも同じようだ。見回すと、みな一癖も二癖もありそうな顔をしている。こんな奴らが国の頂点にいて、本当に大丈夫なのかと疑いたくなるような面々だった。

再び王が口を開く。


「単刀直入に言おう。ユーキ殿」


この国を救ってくれとか、悪の魔王を倒してくれとか頼まれるのではないか。俺は気が気でなかった。

そんなことを頼まれても俺にできるわけがない。死ぬのは怖い。

どうやって逃げようか、しかし逃げてしまえば元の世界には帰れなくなってしまうかもしれない。

それは嫌だが命の危険もある。

そんなことを考えると不安で、怖くてしかたなかった。

しかし、王の言葉は俺の予想とは少し違っていた。


「余はこの国、すなわちこの偉大なるシャルナリア王国の王、ファーロス・シャルニアスという。此度はお主も気づいておろう。この世界とは別の世界から、勇者としての資質があるものをこの世界に召喚したというわけであるが、それにお主が選ばれたというわけだ」


実は、それらの話はここへ来る途中、侍女さんに教えてもらった。


「…は、はい。その話はここへ来る途中で、み、耳にいたしました」

「そうか。ならば話は早い。実は、どうしてもお主に手伝ってもらいたいことがある。そのために呼んだのだ。わざわざ、お主一人のために莫大な金を費やして」


その言葉に腹がたち、いくらか落ち着くことができた俺は怒りを面に出さないよう、つとめて冷静に気になっていたことをたずねた。


「そうなのですか。それで、その用件とはどのようなものでしょうか」


できるだけ丁寧に物腰柔らかにたずねたつもりだったが、王や重臣たちには気に召さなかったらしい。

周りの視線が一層鋭くなる。


「ユーキ殿。立場をわきまえられよ。貴殿に質問権はござらん。黙って聞いていてくだされ」


ハァ?!

何言ってんだ、こいつら。

重臣の一人の声に、俺はぶちぎれそうになった。

わきまえろもくそもあったもんじゃない。好きでこんなところに連れて来られたのではない。それに頼む立場なのは向こうだ。それなりの礼儀というものはないのだろうか。

畜生、畜生、畜生!

考えれば考えるだけ頭が痛くなってくる。悔しさで涙がでそうだ。

俺の今までの生活を返せと、そう叫びたくなった。




無情にも話は進み、俺はこの国、この城に滞在し、彼らの頼みを聞くことになった。

俺に拒否権はなかった。周りに控えていたやつらは全員武装していた。

まず、元の世界に帰る帰らない以前に俺の命が危ない。俺は彼らの言葉にうなずくしかなかった。

悲しさと恐怖、怒りと緊張、憎悪と不安。いろんな感情が入り乱れ、冷静な判断力が残っていなかったのも理由のひとつだ。

しかし、頼みを聞いてくれれば、俺を元の世界へ帰してくれるという。これが決定打だった。


かくして俺は異世界で一人、だれも信用できる人がいない状態でこの城にとらわれることとなった。



因みに、彼らの頼みごとの内容はまだ聞いていない。

「今は、まだそのときではない。この城で、強くなるための訓練に励め」

とのことだった。

理由も目標もないのにがんばるのは無理があるとは思わないか?





俺はこの城での客間、まあ自室というやつに案内された。

ひどく汚い部屋だ。暗いし、奥にあるベッドのシーツには汚れがついている。

床やベッドの近くにある机にはほこりがたまっているし、部屋のかどには蜘蛛が家をつくっていた。

そして、何よりも狭い。

小さなベッドと机でほぼ部屋が埋まる。予想以上の待遇の悪さだ。


俺はこの世界にきてから、嬉しいとか、楽しいとか、そんな感情を抱いていない気がする。

食事もひどかった。

パンと水。

異世界の食事はどんなだろうと、少なからず期待していた俺が馬鹿だった。

しかも、執事が運んでくるので、あの汚い部屋で食べなければならなかった。


もう最悪だ。

俺は何で彼らの頼みを聞かなくてはならないんだろう。





「これ、ヴァルゴ。あの勇者のことは何かわかったか?」

「はい、王様。呪文の結果は出ました。しかし…」

「どうした?何か、何かあったのか?はっきり申せ」

「…はい。これは大変申し上げにくきことではございますが…。 

 彼は呪いつきであると判断したほうがよいでしょう。これといった特技も持ち合わせておりませんでした」

「な、何!それは真か?!

 冗談であろう?冗談だと言ってくれ!

 奴は呪いつきで、特技も持ち合わせていない…。それならば余は、余はいったいどうすればよいのだ?!」

「申し訳ありません。しかし、これはすべて事実でございますれば…」

「な、何故だ!

 何故こんなときに!?あれだけの財をつぎ込んでまで、勇者を召喚したというのに!」

「王様、これは運でございます。此度のことは諦めるしかありません。

 それより、問題はあの少年です。

 彼は腐っても勇者としてこの世界へ召喚された者。磨けば光らないとは限りません。この際、やはり当 初の予定通り育ててみてはいかがでしょう?

 幸いにも、彼についている呪いは他者に悪影響を及ぼすものではありませんでした」

「…そ、そうか。そちが言うのであればそのように手配いたそう。 しかし、ものにならなかったときは どうする」

「そのときはしかたがありません。

 召喚した勇者が呪いつきで、しかもものにならなかったとあらば、臣下も国民も黙ってはいないでしょ う。それこそ、この国の士気、ひいてはこの国の存亡にかかわってくるでしょう。

 それはなんとしても避けねばなりません。

 見つからないように殺してしまってください。殺したあとは、国民には勇者は旅立ったとでも伝えてお けばよいでしょう」

「そ、そうか。それもそうだな。それならば安心じゃ。

 …それにしてもあの勇者、絶対に許さぬぞ。この大事なときによくもあのような奴が…」





あれから三週間、訓練は熾烈を極めた。

訓練でわかったことがあった。俺には何の才能もないということだ。

…最初からわかってはいたが、実際、目の当たりにすると意外と傷つくものだ。


俺は今、剣術と魔術の訓練を受けている。これでもまだ俺は15歳。元の世界でいくらサッカーをしていたからといって、やはり、剣術では使う筋肉がまったく違う。

午前は剣術の訓練を行う。剣術の教官はこの国の騎士だそうだ。

ここでも俺は嫌われている。これは訓練というより、虐めだろう。よってたかって5人以上の大人に罵られながら、ボコボコにされている。そのせいで、毎日毎日筋肉痛と痣がひどい。

こんなもの、剣術の訓練になるはずがない。心の底からあいつらを打ち殺してやりたかった。


しかも、そのあとに、午後から魔術の訓練がある。講義形式なので眠くて眠くてしょうがない。

やはり俺は嫌われている。


「こんなことも理解できないのか」「剣術もできないのに魔術の才能もないとは」


いつも罵声をくらいながら、講義をうけている。

仕方ないだろう。今までそんなもの使ったこともないのに。逆に、翻訳魔法の効果が切れて、この世界の言葉の勉強と平行して訓練とか。

そいつはちょっときついでしょうよ。


さらに傷つくこともあった。

俺のことを心配してくれていたと思ったあの侍女さんも、俺が能無しとわかると手の平を返すように冷たい態度をとるようになった。


俺はこの世界で一人ぼっちになってしまった。







それから半年の間、俺は一人でずっと自主トレを続けていた。

朝は、元の世界でいうところの4時に目を覚まし、走りこみと木刀の素振りを続けた。

夜は、魔術の講義が終わると自室で魔力をコントロールするためのトレーニングをした。

城の人間はみな、「できそこないが、無駄なあがきをしている」などと馬鹿にした。

俺は悔しかった。

頼んでこちらの世界にきたのではないのに、だれも救いの手を差し伸べてくれるひとはいない。

どんなにこの城の人間が憎くても、節度と礼儀をもって接してきた。

それなのに誰も俺を人として見てくれる人はいなかった。それが悲しかった。




しばらくすると、自分でもわかるような変化がみられた。

剣術は、あまり上達が見られない。それはそうだ。こういったものは何年もかけてものになっていくものだ。それに関しては、あまりショックはうけていない。

しかし、魔術。

これは、日々の自主トレのたまものか、基本的な魔法はほぼ完璧に操れるようになった。それも、どうやら俺には苦手な魔法がないらしい。


因みに、この世界には、さまざまな種属の魔法がある。これは、自分で調べた。

前に、城の書庫を借りて訓練に励んでいたときのことだ。



たまたま手に取った本が、この世界の魔法について詳しく説明している本だった。


「へえ。この世界にはいろんな魔法があるんだなあ」


予想していたよりも多かった。

魔法は種属と種類というわけかたが、この世界では一般的のようだ。

種属は主に、その魔法が属している系統のことで、火や水、氷などのさまざまな系統に分かれる。さらに特殊な系統もあるらしいが、残念ながらこの本にはそこまで詳しくはのっていなかった。

種類は、その魔法の効果をあらわす目安のようなもので、攻撃魔法とか、補助魔法とか、これまたいろいろあった。

俺が使いやすかった魔法は、回復魔法と補助魔法だった。

何故かわからないが自分にかけることはできなかった。こっそり城のなかにいたひとたちにかけてみたのだが、効果が出ているのかわからない。だから、得意かどうかまではいまひとつつかめてはいない。


この世界の言葉も習得した。

といってもまだまだ怪しいうえに、たった一つの言語だけだ。


文法は、日本語とあまり変わらなかったので、覚えるのは楽だった。

もしも、英語と同じような文法だったら俺は多分死んでいた。

ほかにもいろいろ種族や地方によって言語があるとのこと。この大陸では、この城の人間が使っている言語(ルワン語とよばれているらしい)が公用語のようだ。


そしてこの世界のことについてもわかってきた。

この世界には、人間やエルフ、獣人といった、ファンタジー世界の住人たちが存在する。しかも種族も多種多様である。両手の指ではあまるぐらいに。


ところで、エルフ族は美人が多いらしいので、是非ともお会いしたいところだ。

やっぱり、ファンタジーの世界は目に優しくないとやっていけない。

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