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第四話「カツアゲに遭った日」




俺はなるべく可もなく不可もなく生きたい

そこら辺の通行人みたいな存在感がいい

しかし ただ一つ俺の願望を阻害する

それ即ち 俺自身




俺の名前はセンコウ。

もちろんあだ名だ。

この学校の中等部に在籍している、ごく普通の男子高生。


簡単な自己紹介を済ませたところで、

今の状況をリポートしてみよう。


「おら、出し惜しみしてんじゃねえぞ?」

「あぁ?なんだその生意気なツラは?やる気かコラァ!?」


ええ、今俺はカツアゲというやつに遭ってるらしいです。

漫画でしか見たことねえけどこんな感じなのか。

そしてひたすらにめんどくさいな。


「……」


ご丁寧に体育館裏の壁に追いやられちゃってさ。

逃げることもできやしない。

あと、この人ら制服見た感じ高等部っぽい。


そんなことをぼーっと考えながら俺は無言で相手を睨んでいた。

めんどくせえな本当。


「金出しゃ解放してやるよ。おお?」


テンプレ通りのセリフ、ご苦労様。

ていうか早く帰らせてくれ。

夕飯が俺を待っているんだ。


「……」


何を言うのもめんどくさいので無言を貫き通していたら、

二人の不良なセンパイのこめかみに青筋が浮かんできた。


そろそろ殴られっかなー、と、思った瞬間、

パリーン!!とけたたましい音を立ててガラスが割れた。


「なっ、なんだぁ!?」


カツアゲしてきたセンパイ方はガラスを浴びて、

みっともないくらいにうろたえていた。

角度のおかげか、俺はかすり傷ひとつない。


(おっ、チャンス?)


そう判断するや否や、俺はそそくさとその場を去った。


「こらーお前ら!!何をやっとる!!」

「「げっ!!」」


後ろの方で、そんな声が聞こえた。

たぶん、ガラスの割れた音を先生が聞きつけたんだろう。


(……それにしても)


ボールとかが当たったような感じでもなかったけど、

なんであの窓はいきなり割れたんだろうか。

おかげで助かったけど。


まあ、わからないことを考えていてもしょうがない。

早く家に帰って夕飯を食べよう。

そう期待に胸を膨らませて校門へ向かうと、


「おいてめえ……

まさかこれで終わったとか思ってんじゃねえだろうなあ?」


さっきの不良の片割れが待ち構えていた。

マジかよ。足速いな。


「……しつこい男はモテないよ、”センパイ”」


あと、ココの足りない人もね、と言いながら

俺は自分の頭を指でさして忠告した。


「ナメた口利いてんじゃねえぞお!?」


大きく腕を振りかぶる不良。

そのままその拳は俺の右頬へ――


「ぐはぁ!?」


当たったと思ったのだろう瞬間、

俺ではなく相手の身体が吹っ飛んだ。


「だから忠告したじゃん」


赤い瞳を光らせながら俺は言う。


「人の話は聞いた方がいいですよ、センパイ」


にっこりと笑って、俺はダメ押しの一言を付け加えた。




この超能力みたいなのを俺は『目を返す』って呼んでる。

簡単に言えば、

目で見たものをかかっている力と逆の方向へと返す力だ。


カウンター専門だから、手を出されない限りは何もできない。

だからさっきみたいな膠着状態に陥ってたんだけど。


そして、この能力の問題は。


「……っ痛ー」


袖を捲ると、俺の右腕には真新しい切り傷が出来ていた。

どうもこの力、返した力に応じて俺の身体に傷ができるらしい。


「絆創膏また足りなくなるな……まあいっか舐めとけば」


それよりもとっとと家に帰りたい。

俺は宵闇の覗く空の下を今夜の夕飯に思いを馳せながら歩いた。




でも 本当は

矛盾を抱えたこの現状が嫌いでもないんだ

だってほら

能ある鷹は 爪を隠すみたいで格好いいだろ?




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