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第十七話「新しい仲間の日」




赤い目を 閉ざしながら

私達は 今日を生きる

赤い目を 光らせながら

私達は 今日も集まる




廃校舎の保健室。

それだけ聞くとホラースポットに聞こえて

ちょっとドキドキするけど(私だけ?)、

蓋を開けて見ればごく普通の綺麗な設備の整った部屋。


うん、むしろ、普通の学校の保健室より

もっとずっと綺麗なんじゃないかな?


「おば!」


カラリと扉を滑らせて、私はお決まりの挨拶をした。


「おば!」


片手をあげてこちらを向いて挨拶を返したのはイシカ。

この、グループとも言えない、

集団の実質上のリーダーみたいな役をやってる。

(本人は中間管理職って言ってるけど。上司は誰?)


「おば……?」


怪訝な顔でこちらを見てきたのは、

昨日出会ったウソカジさん。


「ああ、ユカリの挨拶で、

『おはよう!』と同じと考えていい」

「はぁ……」


そんな彼にイシカが通訳する。

あ、なんだか通訳って言うと

別の言語喋ってるみたいでかっこいいかも。


「ウソカジさん、おば!」

「お、おば……?」

「うん、そんな感じだな。

あと、『はまじ』って言うのもあるぞ」

「何それ!?」

「はじめましてーって意味だよ」


これは私が言い出したんじゃないんだけどね。

完全に私達に置いてけぼりにされているウソカジさんは、

異郷の地に流れ着いてしまったかのような顔をしながら、

片言で「オハヨウゴザイマス……」とぼそぼそ言っていた。


「それにしても二人とも早いね?まだ8時にもなってないよ?」


いつもここの扉を開けるのは私の役目。

だから、2本あるカギのうち、1本は私が持っている。


もう1本を持っているのはイシカ。

私とは逆の理由、扉を閉めるのが大抵イシカだからだ。


誰が決めたわけでもないけれど、朝早起きで、

ここに一番に来るのが私、

夜型の生活で、ここを最後に去るのがイシカ。

だから自然と、カギはこの二人が持つことになった。


「ああ、俺たち泊まったんだ」

「寮に?」

「うん」


そうなんだ。イシカはともかく、

ウソカジさんは家とか大丈夫だったのかな?


「そう言うユカリさんも、随分早くに来るんですね」

「私はこれが普通だから。

ユカリでいいよ、ウソカジさん。

年も同じ位だろうし、敬語もいらないかなぁ」

「じゃあ、僕……俺のこともウソカジって呼んでよ」

「うん、わかった」


あ、一人称が俺になった。

無理してたのかなぁ、今まで。


「かじやんもこれからメンバーになるからな。

交流を深めるに越したことはないな」

「かじやんって何!?」

「かじやんもメンバー?ってことは」

「定着した!?」


うんうん、と一人納得したように言うイシカに、

ウソカジもといかじやんはツッコミを入れる。

かじやんって呼びやすいなぁ。

私も使わせてもらおう。


「能力、やっぱり持ってたんだ」

「『やっぱり』?」


きょとんと目を丸くしたかじやんに、

私は理由を説明する。


「うん。だってあの赤目の人達、

カズだけじゃなく、かじやんを襲いに行ってたもの。

イシカからあの人達の特徴、聞かなかった?」

「『俺達みたいな能力者を襲うということ』……

『彼らも能力者らしい』ということ……」

「そうそう。かじやんが一般人だったら、

カズだけが襲われてたんじゃないかなぁ」


んーっと顎に指を当てて私は言った。

なんだかおはぎが食べたい気分。

お茶請け、まだあったかな?


「で、どんな能力なの?」

「うーんと、どうも、

『自分が目を合わせた相手を一定時間眠らせる能力』らしいんだ」


へぇ、そんなことがわかったんだ。

ってことはもしかして……。


「昨日俺に使ってもらったんだが、いやぁ見事に爆睡して」

「また無茶したんだねイシカ……」


案の定、自分を実験台にしていた。

リーフの時も実験台買って出て凄い目に遭ったのに、

懲りてないんだろうかこの人は。

イシカもそのことを思い出しているのか、

たはは、と頭を掻く。

まぁ、結果オーライ?かな?


「ま、その後10分くらい経過したところで起きたんだが、

その後はかじやんがカクリと寝ちゃってな」


かじやんが少し遠い目をした気がした。

何かあったのかな?


「そのまたきっかり10分後にかじやんは目が覚めた。

ということは、だ。かじやんの能力のリスクは

『相手を眠らせただけ眠らなければならない』と見ていいと思う」

「へぇー」


確かに、能力のリスクとしても筋が通っていると思う。

それに、考えようによっては凄く役に立つ能力だ。

そんなことを冷静に考えながら、私はふと言った。


「じゃあ、正式に仲間になるんだね、かじやん」

「そう……なのかな?」


頭に疑問符を浮かべながらかじやんは言った。

昨日の今日で仲間だのなんだの言われてもピンとこないよね。


「まぁ嫌でも仲間に入ってもらうけどな」

「拒否権無いのか……」


あっけらかんと言うイシカに、

かじやんはがっくりと肩を落として言う。

それをフォローするように、彼女は説明した。


「大丈夫、仲間って言っても別に何か活動があるわけでもねえし。

でもちょっと俺達にとっては

世の中が物騒になりつつあるから集まっとこう?みたいな感じで」


一人より二人、二人より三人の方が安心だろ?

と言うイシカに、かじやんは納得しつつ、

さらに脱力したようだった。


「指針が無くて緩やかなのはそういうことだったんだ……」

「だって堅っ苦しいの俺が無理だもん。ムリムリ」


自らの顔の前で手を振りながらイシカは言った。

うん、確かにこの集団、必要以上に緩い気がする。

それは私も思う。


「じゃあ、ユカリも来たことだし、茶でも入れるか」




新しい加入者

私達と同じ赤い目を持つ彼

まだまだ戸惑ったような顔だけど

まずは「これからよろしくね!」




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