第十四話「反撃の日」
相手が有利で こっちが不利
文字通り 絶体絶命ってやつだけど
そろそろ 反撃をしよう
やられっぱなしじゃ いられない
オレ達は西館の二階の教室に避難していた。
この学校は、西館|(4F建て)、
東館|(5F建て)、本館|(4F建て)という構造を成しており、
連絡通路を通じて丁度T字型になるようなシンプルな作りだ。
因みに昇降口は本館にある。
「奴らは咲野と榎木。
咲野はオレ達の能力をコピーする能力を持ってるみたいなんだ。
榎木の能力はテレパシーに近いものらしい」
一息ついたところで、
オレは男子生徒――センコウに出来る限りの情報を提供する。
と言っても、「何故狙われたのか」
「どうして執拗に追ってくるのか」
という質問には答えることができない。
こっちが知りたいくらいだからだ。
「ふうん……それでさっきの危機的状況ってわけか」
顎に手を当ててふむ、とセンコウは言った。
「まあさっきの続きになるんだけど。
恩を返すっていうとアレだが、俺はクロトと……」
センコウがチラリとオレの方を気まずげに見てくる。
そういえば名前言ってなかったな。
「ヤマトだ」
「ヤマトか。よろしく。
とにかくだ、俺はクロトとヤマトに加勢したい」
その言葉を聞いて、
お前相当お人よしだろと思ってしまう自分が憎い。
しかし、普通の神経ならば、
さっきの殺伐とした状況で
間に割って入るなんてできないだろう。
「でも彼女からどうやって逃げるの……?」
ずっと無言だったクロトがぽつりと言った。
心なしか、声が震えている。
「逃げるんじゃない、勝つんだ」
その自信はどこから来るのだろうか。
センコウは、自信たっぷりの不敵な笑みで言い放つ。
「勝算は?」
「そんなのこれから相談して決めるんだよ」
ねえのかよ。
あっけらかんと言うセンコウに
オレ達の緊張の糸が少し緩む。
「つまりいきあたりばったりってことだな」
「そうとも言う」
そうとしか言わねーだろ、
と心の中でツッコむのは忘れない。
グダグダ言ってはいるが、
オレもそろそろこの鬼ごっこを終わらせたかった。
だが、みすみすやられる気もない。
オレはそんなセンコウに対し、
勝利のカギになるかはわからないが、
”ずっと引っかかっていること”を口に出すことに決めた。
「なら二つ、気になってることがあるんだが……」
所変わって本館一階、昇降口。
オレ達が遠くから様子を窺うと、
遠目からでもわかるほど
苛立った様子の咲野の姿を認めることができた。
「じゃ、打ち合わせ通りに」
怖気もせず普通に歩きだそうとするセンコウの制服の裾を、
クロトが引っ張って止める。
「ね、ねえほんとに大丈夫!?
咲野さん僕の能力使ってくるんだよ!?危ないよ!」
「クロト、落ち着け。大丈夫だって」
焦るクロトに落ち着くよう促す。
それを聞いたクロトは、キッとこちらを睨んできた。
「なんでヤマトはそんなに呑気なのさ!
そんなんだから童貞なんだよこの三十路トマト!」
「おまっ……!童貞は認めるけど三十路じゃないから!
あとトマト言うな!」
というかこんな状況でそんなこと言うな。
「お二人さん仲いいのはいいけど俺そろそろ行っていい?」
「「仲良くないから!」」
生暖かい視線を向けるセンコウに
オレ達は見事なハモり具合で否定の言葉を口にした。
「んじゃま、行ってくるわ」
「気をつけてね……!」
「うーい」
心配そうに見つめるクロトにひらひらと手を振りながら
センコウは悠々と昇降口へ近づいて行った。
負けるつもりは全然ないし
負けるわけにもいかないから
勝ちに行くことを考えよう
諦めなければ攻略の糸口はある




