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第十二話「加勢の日」




平凡な 人生

平凡な 日常

平凡な 毎日

それらがつまらないなんて思わないけど




(さて、帰るか……)


日直の仕事で居残っていた俺は、

んーっと背中を逸らして伸びをしながら廊下を歩いていた。


ただ、昇降口へ近づいた時、ただならぬ気配を感じた。

俺は下駄箱の陰に身を隠して様子を窺う。


(……何だ?)


数人かの話し声が聞こえてくる。

顔をあっちから見えるか見えないかの

ギリギリの位置に動かして視界を確保し、

そっと話し声の方へ耳をそばだてた。


「クロトさん、反撃すればいいのに」


見えたのは、膠着状態の中等部女子二人と、

中等部女子と高等部男子二人だった。

どうも、口ぶりからして中等部女子二人組の方が優勢らしい。

状況が見えない俺は、もう少し傍観することにする。


「あのカツアゲされてる子を助けた時みたいにさ。

壊しちゃえばいいじゃない」


カツアゲされてる子……とても心当たりがある。

ていうか俺か。そうなのか。


さて、依然話は見えないが、

俺が全く無関係という話でもなくなったようだ。

クロト、カツアゲ、助けた、壊す。

これらのキーワードは、俺が動くには十分な情報を与えてくれた。


「面白そうなことやってるじゃん」

「!?」


俺の声に、睨み合っていた

四人は驚いたように一斉に振り向く。


「俺も混ぜてよ」


そんな反応は気にも留めず、

俺はにっこりと笑って

悠々と中等部女子と高等部男子の方へ歩いた。


「……何?君。

今君の相手をしているヒマはないんだけどなあ?」


苛立ったように

ツインテールの中等部女子二人組の片割れが吐き捨てた。

その瞳はピンク色に輝いている。


(もしかして……能力者か?)


俺は内心の動揺を気取られないように努めて笑顔でいた。


「まあ、そう言わずに。

見たところこっちの方が劣勢だろ?だったら俺一人加勢しても――」

「うるっさいなぁ!邪魔しないでよ!」


俺の言葉は最後まで言うことが出来ず、遮られる。

ツインテールの女子生徒がヒステリックに叫んだと同時に、

昇降口のガラスに一斉にヒビが入った。


「やっべ、怒らせちまった?」

「ちっ、一旦ここは退こう!あんたも来てくれ!」


男子生徒が叫び、弾かれた様に二人共が走り出したので、

俺はその後を追った。




「はぁ……はぁ……」

「とりあえずオレの能力フル稼働だな……

近づいてくる前に場所移らねーと……」


げんなりしたように男子生徒が言う。

その瞳は赤く輝いていた。


「もしかして、あんたも能力持ち?」


その言葉に、目つきの悪い男子生徒は

さらに目つきを悪くしてこちらを見てきた。


「お前は一体?」


その言葉に、ロクな自己紹介もしていなかったことに気づく。


「あーっと。俺はセンコウ。そこの子に借りがあってさ」

「僕?」


女子生徒がきょとんとした顔で自身を人差し指で指しながら問う。


「うん。クロト……だっけ?

カツアゲの時にガラス割ってくれたのって」

「お前そんなことしてたのか」

「えへへー」


男子生徒が呆れたように言い、

クロトは照れ臭そうに頭を掻いた。

時間もないし、手持ちの情報を早く見せて

信用してもらった方がいいと判断した俺は、

自分の能力についての説明を始めた。


「俺の自分の能力を『目を返す』って呼んでる。

簡単に言うと、力のベクトルを跳ね返す能力だ」

「へっ!?能力!?」

「まさかオレ達の他にもいたとは……」


クロトがびっくりしたように目を見開き、

男子生徒もちょっと意外そうに目つきの悪い目を少し和らげる。


無理もない、俺もさっきまで

自分の他に妙な能力を持っている人間がいるだなんて

思ってなかったんだから。


「あんた達の能力は?」


次はそちらの番だ、

という意味も込めて俺は質問を投げかけた。


「僕は『目を壊す』。見つめたものを壊すことが出来るよ」

「オレは『目を染める』。

一度目を合わせた相手の視界に自分の視界を切り替えることが出来るんだ

……っと、咲野が近づいてきてるな、少し移動するか」


そう言うと男子生徒は、瞳を赤く輝かせながら、

俺達を次の避難場所へと導いた。




少しの 非凡

少しの 非日常

少しの 異常事態

それらが少しくらい盛り込んである方が断然面白い




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