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第一話「運勢が最悪の日」




まあ運命とか信じる方でもないし

なんとなく平和で生きていければいいって思ってるし

でも始まりはやっぱりこの日だったんだろうなって

今はうん、そう思うよ




『今日の星座占い、ザンネンながら12位はみずがめ座のアナタ!』


たまたま珍しくテレビを点けたらこのザマだ。




「はあ…」


僕は本日何度目とも知れない溜息を吐いた。


(なんでこういう日に限って外に出ないといけない用事があるんだ…)


靴紐を結びながら、僕は溜息の数を一つ追加した。


「行ってきまーす」


まあ家に誰もいないんだけど。一応の習慣だ。




『うそかじへ:ホント悪い!今日行けなくなった!!』


友人からそんなメールが届いたのは待ち合わせ場所についてからだった。

因みにうそかじっていうのは僕のあだ名だ。


「マジか…」


というかアイツから呼び出したのに来ないってどういうことだよ。

ケータイをポケットにしまいながら、僕はがっくりとうなだれた。


「どうしようかな…」


このまま家に帰るのもアリだけど、

せっかく外に出たんだし、という気持ちもないわけではない。


(いつもはいけないとこに行こうかな…電器屋さん?

ゲームセンターもいいな…いやここは思い切ってレンタルビデオショップの…)


そんなことをつらつら考えていると、




どん。




何かにぶつかる感触がした。

恐る恐る顔を上げると、びっくりしたような顔を向けた人と目が合った。


「ごっ、ごめんなさい!」


ああもう今日は本当についてないな。


「いえいえ、俺も前見てませんでしたし…」


黒いフードを目深にかぶり直したその人は口元だけしか見えなかったけど、

困ったように笑いながら言っているのはなんだか雰囲気だけで分かった。

当の僕は「因縁とかつけられなくてよかった…」なんて思っていたのだけど。


「ホントにすみませんでした。じゃあ僕はこれで」


そう言ってそそくさと踵を返そうとする僕に、その人は意外にも声をかけてきた。

男なのかな?女なのかな?ちょっと高めの声だけど、口調は男の人のソレで。


「あ、ちょっと待って」

「?」


なんだろう、と訝しげに振り向くと、

その人の瞳が一瞬赤く光ったような気がした。

…けど、フードで隠された目元は今は見えない。


「君にいいことがありますように」


口元が弧を描いていたのでその人は笑っていたのだろう。


「はあ…?」


初対面で馴れ馴れしいし、胡散臭い人だなと思った。

こういう人は速攻で離れるに限るな、と僕が判断するより前に、

その人は人ごみに紛れて消えてしまった。


「…なんだったんだろ」


誰に聞かせるでもなく僕は呟く。

呟きも、あの人と同じように人ごみにかき消されてしまうようだった。


『君にいいことがありますように』


そんな声が嫌に頭にこびりついた。

まるで、僕に暗示をかけるかのように。


(いいこと、なんて)


今朝の占いを見た時点で今日の僕の運勢にケチはつきまくっているのに。

いやまあ星座占いを頭から信じている訳ではないけれど。


(…帰ろうか)


これ以上変な目に遭うのも嫌だ。

そう判断した僕は、早めに家に帰ることに決めた。




やっぱり今日が運の悪い日だったってことを

思い知るのはだいぶ後の話になるんだけど

何も知らないよりかはよかったから

そう悪くもなかったのかな?




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