第二話 お嫁様
秋尾は、スーツの男女にがっちりとガードされつつ、境内の石段を登る。
石段の両端には、狐の耳と尻尾の生えた私服の町人がずらりと並んでいる。
「な・・・なんですか・・・これは!」
「何って、一族の者です。仕事で外せない者以外は、お祝いに集まっております。」
スーツの女性の一人が答えた。
「秋尾様も、一族の血を引く者・・・今は、そのお力が眠っているに過ぎません。」
「お・・・お祝いって・・・」
「文字通り、ご婚礼のお祝いです。小孤様は、可愛らしいお方ですよ。」
本殿の敷地に入ると、参道脇に狐の像を乗せた石灯篭が並んでいた。
「狐灯篭です。江戸時代は蝋燭、明治はガス、昭和で電灯に切り替わっています。」
「しゃれてますね・・・」
そのうち、配線が光ケーブルになるだろう。
どばん!
突然、本殿の扉が開き、中から巫女装束の少女が現れた。
「やっほーっ!」
そのまま跳躍。
空中で一回転し、秋尾に飛びつく。
「ようこそ秋尾君!
あたし、小孤!
この町の守護にして在宮司の稲荷小孤!
今日から、あなたのお嫁さんだよぉ。」
見ると、小孤の尻尾は、九本ある。
「君・・・尻尾が・・・」
「うん。うちの一族はね・・・力の強さで尻尾の数が多くなっていくの。」
『狐灯篭』・・・いかがでした?