第九話:お墓参り
第九話
悪夢の中で見えたカレンダーは5月8日。明日だ。
明日は命日・・・。
最近気分が重いのはそのせいか・・・?
俺はがばっ!と布団から起きあがる。今日は5月7日。
いつものように出かけた。
栄介たちとテストの話をする。いろいろ問題を出し合いながら駅へと向かう。
まだ栄介はほとんど努力をしていないようだ。逆に健介は努力をしているようで、俺より頭がいい。
というより俺と栄介は、集中していかないと全然覚えられないという頭なのだ・・・。
やがてそれも問題がなくなり、野球の話になった。
「お前ら部活どうなの?レギュラー入ったか?」
『そりゃもちろん!』
「だって8人しかいないしな〜。な、健介。」
「そうそう。俺らがほとんど追い出してやったからな。」
さりげなく物騒だし・・・。つーか・・・。
「追い出したって?しかも八人じゃでれねーじゃないか。」
「大丈夫!一人当てがあるから!幽霊部員という。」
「栄介。空は今、そんなことを聞きたいんじゃないんだろう・・・。」
栄介と健介は二人で会話を進めていく。入る隙間がない・・・。
「ちょっとね・・・、不良のたまり場になっていたんだよ。野球部。」
「だから俺たちが試合で勝ったらでていってもらうことにして、勝っちゃった訳ですよ。」
「よかったじゃん!健介!栄介!」
素直にほめる。こいつらは普段から、破天荒なことばっかりやっている。だからこそこんな行動しても、俺はなにも言わないわけだが・・・。
「それよりお前、一人称僕に変えていないのか?」
「栄介・・・、どうでもいいじゃんそんなこと。」
俺はその話をスルーする。そして俺はおとといのことを二人に告げる。
だけどそれはほとんどスルーされた・・・。さっきの仕返しのつもりかよ・・・。
「そうだ、空。助っ人として野球部に来てくれないか?」
「健介・・・、俺は今は出来ない。」
「嘘はよくないよ、そら〜。おとといデートしているときに、グローブ買っただろ?」
「な、なんで知ってるんだよ・・・、栄介・・・。」
「企業秘密で!というわけで、でなさい!」
強制かよ・・・。諦めるしかなさそうだな・・・。
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学校でテストが終わった後・・・。
「テストどうだった?」
俺は栄介と健介に尋ねる。
健介はばっちりだったみたいだ。
栄介はがっくり来ているらしい。
実際は二人とも本当は俺より頭がいいのだが、栄介は授業を聞かないので平均点並みしかとっていないらしい。
「野球の話だけどどうすんだ?」
「幽霊部員でるって言ってたからでなくていいぞ。」
なにそれ・・・!こちとらわざわざ来てやったというのに・・・。
「すまないな空。まだまだお前に頼れる状態じゃないだろうし。」
健介はいつも俺をいたわってくれる。ありがたい・・・!
「んじゃあもうそろそろ予選だろ?俺もメンバー入れておいてくれ。」
二人はまず固まった。唖然呆然という言葉がよく似合う。
「どうしたんだ?二人とも・・・、なんか変だぞ?栄介だったら、これ幸いにと「じゃあレギュラーで入れとくから。」とか言いそうなんだけど。」
「本当にいいのか?お前・・・大丈夫?熱でもないか?」
「健介・・・、そんなベタなもんはいいから。心配しなくても大丈夫。それくらいはOKだから。」
大丈夫というサインをだす。栄介は固まったまま・・・。
俺と健介は栄介をほおって起きながら歩く。
「明日は授業なんだっけ?」
「俺たち明日は行かないだろ?お前どうしたんだ?」
明日・・・?もしかして・・・
「墓参りか?」
「わすれてんじゃね〜〜!!!」
栄介がスライディングで俺に突入してきた。俺が跳んで避け、健介が捕縛。
栄介が縛られ、どっかへとばされた。
俺はしかとしてさっさと家路についた。
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「ごめん空。俺風邪ひいちまって一緒にいけない。」
「というわけですまないな。看病しなくてはいけないからな。こんなでも、一応兄だし。」
まじかよ・・・。諦めるしかないのかなぁ?神よ・・・。って俺は無神論者だけど。
9時10分
俺は、雨の中、遠出をしていた。秩父の方まで行って親戚の家に顔を出す。
といっても俺が顔をまともに会わせるのは二人だけだが。
「ただいま花梨、叔父さん。」
「おかえり〜〜〜、空!」
「おかえり、空。」
二人が俺と顔を会わせてくれる人だ。雅弘叔父さんと花梨。
「墓参りには行ったのか?」
「まだだけど・・・。それと後で花梨に相談があるから。」
「わかった。というわけで親子の会話楽しんできなさい!」
花梨の明るい気遣いを受けて、雅弘叔父さんにさりげなく気遣ってもらい、俺は傘を持って墓地へ行った。
とぼとぼと、墓への道を10分ほど歩いていく。
ついた。だがこのときになって、花を持ってくるのを忘れていたのに気がついた。
市ヶ谷家の墓と記してあるところにひざまずき、傘を手放し1分ほど黙祷を捧げる。
そして俺はしゃべり始める。
「久しぶりお父さん。1年ぶりだね。僕は元気だよ。
高校やっと入って、友達も何人か出来たし。栄介と健介も、また同じクラスなんだ。というより、無理矢理転入してきたっていう感じだけど・・・。
あいつららしいだろ?家の中もしっかりと掃除しているし、俺のことは心配しなくても大丈夫だよ。
もっと話したいことはいっぱいあるのに・・・、どうして言葉に出来ないんだろう?それが本当に残念だよ・・・。
もっともっと教えたいことがあるのに・・・!なんで死んじゃったの?って、いつもここに来ると泣いちゃうな・・・。
もう泣かないって決めているのに・・・。ここだとどうしてか泣いちゃう。もう、断ち切らないといけないのかっな・・・?ぅっ・・・」
最後の方は泣きも入ってきた・・・。透明な液体が雨と一緒に流れ落ちる。どうしてまだ泣いてしまうのだろう?
そんな風に考えていたことは、後ろから聞こえた一言で、うち破られた。
「あ〜空?ひさしぶり〜」
お気楽な声が後ろから聞こえる。もしかしてこの声は・・・。
「大門か?」
「そのとおりだよ〜、ひさしぶり〜。大門なんていう風に呼ばないでよ〜。せめて和樹と呼んで〜。」
「懐かしいね。半年ぶりくらい?」
「確かそんなものだよ〜〜、お墓参りに来たんだよ〜〜。」
間延びした声なのに、聞いていると心地よくなってくる。だからこそ俺たちをまとめられたのだと思う。
「おまえ・・・、そんなでかいなりしてそんな声で話すなよ・・・。」
大門の身長は180cm。俺よりかなりでかい。
「まぁいいじゃ〜ん〜。そんなことより〜墓参りしているんでしょ〜?終わったみたいだし帰ったら〜?それと、栄介と〜健介は〜一緒じゃないの〜?」
「あいつらは風邪ひいた。というより栄介だけがひいた。んじゃーな。また会おう。」
そういって墓地を立ち去ろうとする。後ろから声がかかってきたが、聞かなかったことにした。
大門はこういっていた気がする。
「野球をまたやらないのか?」
叔父さんの家に戻り、花梨を呼ぶ。
「どうしたの〜?空。私に相談って?年の功があるから答えてあげるわよ・・・、ってびしょぬれじゃない!風呂入ってきなさい!」
速攻で言われ風呂に入る。でてきてまた花梨を呼ぶと先ほどと同じようにハイテンションで問いかけてきた。
俺は言う内容を考えていなかったが、勝手に口から言葉が紡がれる。
「また始めようかな?っておもってるんだけど・・・。」
「なにを?」
「野球。でもやってもいいのかな?っておもってて・・・。どうすればいいのかわからないから・・・、僕はどうすればいいの?」
「私にあなたの行く道を決める権利はないけれど・・・、空がやりたいと思うことを今はしなさい。そのためにね、こっちはこっちでお金を貯めておいたのよ。バイトなんかしなくてもいいように、空がいつかそんなこと言うなんて、分かりきっていたことなんだから。」
そういわれて目の前にだされてきたもの。それは・・・。
「なんだこの通帳?」
通帳だった。何なのだろう?
「これは空のお父さんの生命保険でもらっていたお金。それと私の貯金も少しばかり入っているわ。自由に使いなさい。」
「え・・・・、な、なんで・・・こんなのが・・・?」
「私と父さんで生命保険に加入させておいたのよ。無理矢理ね。」
俺は唖然とする。その表情のまま固まっていた。花梨が言葉を続ける。
「もっていきなさい。暗証番号は○○○○よ。」
「あ、ありがとう・・・。僕はやりたいことをやっていいんだね?」
『もちろん!』
叔父さんがいつの間にか現れて言っていた。
俺はその二人の気遣いに感謝して、この家を去り、自分の家に戻っていったのだった。
一昨日投稿したばっかなのに・・・
なんか速くなっている気が・・・・