第七話:事件の前触れ
第七話
急に目が覚める。悪夢を見た。
正確には過去の夢だ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
キモチワルイ・・・。
布団をたたみ家を出る。今はそれが、緩慢な動作になってしまう。
そして駅へ向かう。電車に揺られる。なにも考えない・・・、考えられない・・・。
電車からでて改札を通る。学校へ向かう。何気ないいつも通りの動作。
それが今はつらい。ものすごくだるい。今日は思いを伝える日なのに・・・。
気がついたら学校にいた。聞いてみると三限目だったらしい。
それ以外のことについては、みんな答えてくれなかった。
授業を聞く。しっかりとノートをとる。
相変わらずの生活。
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また脳内の時間が飛び、気づいたときには屋上にいた。
今は何時だろう?腕時計を見る。
12:40
今は12時40分か。ってことは、先輩に答えを伝えるときか・・・。
「え〜と・・・空君?」
ソプラノの声が聞こえてくる。心地よい。
こんな気持ちになったのは久しぶりだ。
「もしも〜し?起きてる?」
先輩の声が聞こえる。
「起きてますよ?ぼーっとしてただけで。」
「そう?ならいいのだけれど・・・。」
心配そうな顔で、俺を見つめてくる先輩。そして微笑みながら本題に入る。
「先輩、いきなりですけどあの話、答えを伝えようかと思います。」
ぴくっと強ばり、こっちを先輩がじっと見てくる。
「え〜と・・・、受けようとは思うのですが・・・。」
俺はお茶を濁す。言った瞬間目を輝かした先輩だったが、お茶を濁したとたんまたじっと見てくる。
そして俺は決意する。
「一つ、お話をしようかと思うのですけどよろしいですか?」
「ええ・・・いいわよ?でもなんでそんなことになったの?」
それには答えず、言葉を紡ぐ。
「5年前、ある小学校に一人の男子生徒がいました。彼はとても臆病で、この世界に生きることに、何の意味も持たず暮らしてきました。だけどそのときに、二人の男子生徒が現れました。
二人とも、彼と似たような感情を持っていました。でもただ一つ違ったのは、彼らは「生きたい!」と思っていることでした。
彼は次第に二人に惹かれていきました。そして少しずつ心の傷は広がらなくなっていきました。」
話し終えたとたん、先輩は声を出さない。そして俺が続きを声に出す。
「俺の過去話ですけど、どうでした?あまり文章力なくて、うまくまとめられませんでしたけど・・・。」
「その彼って言うのは・・・空君?二人の少年は誰なの?」
こんな話だけだといろいろ疑問点はあると思う。だけど今は答えない。
「黙秘・・・。ということにしておいてください。それと答えなんですけど、こんな僕でよかったらつきあってください。」
あっさりと言葉を発した俺に、先輩は驚いたみたいだ。そして先輩も言葉を発する。
「い、いいの・・・?ほんとに!?」
訂正。「驚いている」だ。
「過去のことについては、あまり詮索はしないでほしいですけど、それ以外ならあまり嘘はつかないんで。」
「ほんとに・・・?そう・・・、よかった・・・。」
そう言い残し、先輩は階段を走って下りていった。
「転ばないようにしてくださいね〜〜。」
一応そう声をかけておく。転ばなかっただろうか?
そう案じながら、真っ青な空を見上げた。
さつきside
「どうしよどうしよ!!!」
「な〜にがどうしよなの?」
今日は返事を出される日だ。自然な顔で会いに行くのも、難しいと思ってしまう。
いろいろ考えてみた。
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「き・・・・さつき!!!おきろ〜!!!」
「ひゃう!!!」
いきなり怒鳴られた。どうしたのだろう・・・。
問いかける。するとリョウは信じられない、といった顔つきでこちらを見る。
「もう昼休みだよ?」
もう昼休みだよ?、昼休みだよ?、昼休み・・・・・・・・・。脳内リピートを繰り返す。
その事実を脳が受け入れたとたん、口を大きく開けかけた。だが、そこは何とか声を出さずに押さえる。
12:30
・・・・・・・・・・・・・、まずい。これでは、もしかしたら空君を待たせているかもしれない。
そう考えた瞬間、体は動いた。弁当をすぐにとり、ものすごい勢いで「いただきます」すら言わずに食べ始める。
しばらく時間経過・・・。
リョウが私にことを、ものすごい目で見ていたような気がするけど気にしない。
「ごちそうさま!」
私はそういい時計を見る。
12:35
まだ間に合う。ほっと一安心し、歩き始める。リョウがまだ後ろで、変な目をしていたけど。
屋上へ着く。ドアをそっと開けてみる。なんかぼーっとしているみたい。声をかけてみる。
「空君???」
その声に空君は振り向く。でもまだねていたような感じが、ぬぐい切れていない。
「もしも〜し?起きてる?」
「起きてますよ?ぼーっとしてただけで。」
「そう?ならいいのだけれど・・・。」
どう考えてもそれ以外に考えつかないし、平気じゃないかな。
どうやって話しかけよう?考えてみる。
思いつかない・・・。
こんな時こそ自分の頭の悪さを呪いたくなる。こればっかりはどうしようもない。
そんな思考を、ものすごい勢いで働かせる。空君は、そんな思考を紙のように突破してきた。
「先輩、いきなりですけどあの話、答えを伝えようかと思います。」
いきなり!?私の魂の叫びも空君には届かない、って心の中での魂の叫びなんだから当然よね。
ちょっと待って、心の準備が・・・。そんなことを考えてる暇なんてない。
「え〜と・・・、受けようとは思うのですが・・・。」
ほんとに!?でもどうしてお茶を濁すのだろう・・・?
「一つ、お話をしようかと思うのですけどよろしいですか?」
そのことが何の関わりを持っているの?何のため?どうして?
聞きたいことはたくさんある。でも、今は聞かなきゃいけない気がする。
「ええ・・・いいわよ?でもなんでそんなことになったの?」
「5年前、ある小学校に一人の男子生徒がいました。彼はとても臆病で、この世界に生きることに、何の意味も持たず暮らしてきました。だけどそのときに、二人の男子生徒が現れました。
二人とも、彼と似たような感情を持っていました。でもただ一つ違ったのは、彼らは「生きたい!」と思っていることでした。
彼は次第に二人に惹かれていきました。そして少しずつ心の傷は広がらなくなっていきました。」
そのことを聞いた瞬間、何のことだろう・・・?と思った。私には全然わからない。
でもとてつもなく重い話なのだろうと思った。それが過去話と聞いたから余計に。
今は声が遠くに聞こえる。でもそれだけははっきりと聞き取れた。
「・・・・それと答えなんですけど、こんな僕でよかったらつきあってください。」
「い、いいの・・・?ほんとに!?」
本当にいいのだろうか・・・?でもうれしい!心が温かくなっていく。
そして恥ずかしくなったから、急いでそこからでた。なんか空君が言っていたような気がするけど気にしない!
「リョウ〜〜〜〜〜!!!」
「なにさ?いきなり?」
私はリョウのところへ走っている。そして簡潔に要求を伝える。
「空君の過去のこと調べて!!!」
「うるさい!!!ちょっとはだまらんか!」
怒られた。確かにうるさかったかも・・・。
謝って、なんとか約束を取り付けた。
ちょっと危なかったかも・・・・・・。
リョウside
私は家で今「市ヶ谷空」とやらの情報を集めている。
全然集まらない。かろうじて集まったのは噂でも一件だけ。
市ヶ谷空は、人殺しだ・・・。
のんびり書いているはずが・・・
結構速く更新できました
更新速度二週間に一度改め不定期に変えます
きがむけばたくさんUPするので