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記憶の鎖  作者: 空き缶
31/31

最終話:記憶の鎖

最終話

さつきside

次の日も、その次の日も、空君は学校に来なかった。

学校を抜け出した事では怒られたけど・・・。

毎日、彼の家に行って手を握って、何度も話す。

無駄かもしれない。でも、私は話しかけずにいられなかった。

空君がここにいるだけでいい。ででも、どうして話した後は、涙が出てきちゃう

んだろう?


「さつき先輩〜!よけて!!!」


大きい声が私の思考を中止させた。風を切る音。そして衝撃。


「キャっ!」


どかっと音がして、その衝撃に目をしかめる。飛んできたほうを向くと、梓が走

ってきていた。


「大丈夫ですか?先輩。」

「大丈夫。ちょっと驚いただけだし。」


ただそれだけなのに、梓は異常とも言えるほど心配してきた。


「本当ですか!?」

「いや・・・だから・・・。」

「ほんとにだいじょぶですか!?」


・・・ちょっと対応が心苦しくなってきた・・・。逃げよう!

そうと決めるまでに0.1秒。即決で梓から逃げ出した。


「まってくださ〜い!!!」


ドップラー効果で変な事になっているけど・・・、無視!

そもそもこの場合ってドップラー効果って言うのかな?


「どこいく霧月!」

「ランニング行ってきます!!!」

「ならよし!!!」


その声を聞きながら走り始めた。いいわけないでしょ!っと後ろで騒いでいる声が聞こえる。

先生ご愁傷様。だけど私は気にしない。

ただ走った。そして走っている途中で気がついた。


「私、どこへ行こううとしてるんだっけ・・・?」


そもそもこの逃走劇には目的はなかった事に気がついてしまった。

いまさら戻るのも心苦しいし、どうすればいいのかな?

約一分、私は歩きながら考えた。特に名案も思い浮かばない。

ランニングする程度の時間じゃ空君の家にも行けない。


「歩いているしかないかな・・・?どうせならランニングしようかな・・・。」


ぶつぶつ言いながら考えをまとめていく。その時、栄介君がやってきた。鬼気迫るような表情で声を放った。


「空を見てないか!?」

「どーゆーこと?」


鏡がないから分からないけど、今の私の表情は不安で塗り固められてると思う。


「空が家からいなくなったんだ!」

「え・・・!?」


単純に驚き。その感情が私の心を占める。なんで?


気がつくと、私は彼を脅していた。


「なんで空君がいないのよ!」

「ちょっと目を離した隙にいなくなったんだよ・・・。・・・くるしぃ・・・」


そういって彼はご臨終・・・。っていうのは嘘だけど気絶した。首絞めてたらそうなっちゃっただけだ。

決して私は悪くない。・・・そう思っておこう。



唯―――彼の姿はいつまでたっても見つからなかった。



警察に捜索願を出したもののあまり相手にされず。結局試合の日を迎えてしまった。

私の表情は、日増しに暗くなっているらしい。いろんな人からそのことを指摘された。

理由はわかっているのに、動けない。根本的な解決方法がないから。

あー!いらいらする!空君はどこよ?


テンションが低いまま試合会場へと向かう。試合に集中しないといけないのに。家を出たところで、目の前にリョウが立っていた。


「おはよー。こんな朝早くにどうしたの?」

「・・・、ちゃんと試合に集中しなさいよ。今日負けたら部活引退なのよ?」

「・・・わかってるわよ・・・」


いわれると即答できない。何かをを見透かしたかのように、リョウは畳み掛けてくる。


「ホントに分かってんの!?あんたもっとサッカーしたくないの!?」

「うるさいわよ!ほっといて!!!」


ここまで自分にとって彼の存在が大きくなっていたなんて。

それは知っていたけど、知られたくはなかった。


だからって叫ぶなんて・・・。最低。


いつの間にかグラウンドについていた。きっと無意識のうちに向かっていたのだろうけど、実際そんなことが起こると驚くばかり。

いつの間に着いたんだろう?リョウは怒ってしまっただろうか?

自分が悪かった。ということは分かっているのだから、あとで謝りに行こう。


今は試合に集中するだけ――。


試合前のウォームアップを終わらせて、顧問の先生のところへ集まる。

私は順当にフォワードで呼ばれた。梓もディフェンダーとして呼ばれている。

試合が始まる直前に、梓が声をかけてきた。


「先輩、空はどうしたんです?空の性格なら応援には絶対来ると思うのですけど……」

「空が行方不明なのは知ってるでしょ……? まだ見つかってないのよ」

「あのうわさは本当だったんですか!?」


知らなかったの? あれほど仲よさそうだったのに。誰も教えてあげなかったのかしら?


「ええ。だから今探しているのだけれど……」


そう言ってこの場を離れた。今は試合に集中したかった。

いつもどおりに試合会場に足を踏み入れる。

踏み入れたときに襲う緊張と高揚感。そして、大きな歓声。

でも、今日は高揚感がなかった。……どうしてだろう?


その原因はすぐに分かった。

それは直せない。直すために必要なピースが抜けているから。

きっと心の中では期待していた。きっと空君は来てくれるって。

彼は、こなかった。


「先輩!しっかり動け!」


梓の声が聞こえる。分かってると返事を返すも、集中できない。

結局決定的シーンでミスをしてしまった。

ハーフタイムに入る。私は自己嫌悪を繰り返しながら、スポーツドリンクを少し飲む。


「先輩。やる気ないなら下がってくれませんか?あの気の抜けたプレーは一体何です?」

「ごめん梓……」


梓がさらに怒ろうとしたところに、顧問がやってくる。


「梓!あんまり言うな。俺からもさつきには言うことがある」


そういって私のほうへと向き直る。


「さつき。後半になって動きがよくならないようならすぐ代えるぞ。わかったな?」

「はい。わかりました」


今は0対1で負けている。どうやって動けばいいかをイメージして、その時の最良の動きを探す。

だけど、その最良が見つからない。今の自分じゃ何もできない気がする。


「はぁ・・・」


ため息をついて空を見上げる。暗雲が立ち込めている。そろそろ雨が降り出しそう。

そんなことを考えている場合じゃないのに!


考えがまとまらないまま、ぎすぎすした空気のまま、後半のキックオフを迎えた。

後半5分、また決定的なチャンスをはずした。先生がベンチでアップの指示を出すのが見えた。

交代するのは嫌なのに、どうして体が思い通りに動かないの?

泣きたくなってくる。こらえてボールが動き出すのを見ようとしたとき。


――待ち望んだ声が、私の耳に届いた。


「先輩!!!がんばれ!!!」


この声は――紛れもない空君の声。鳴り響いた声は、私に力を与えてくれる。

声のした方向を見ると、そこには確かに空君がいた。

心配したような顔で、だけど期待を持った顔で。

心の枷が消えうせた気がした。


いつの間にか試合は終わっていた。気を失っていたわけじゃない。体感時間が少なくなった感じで、とても充実していた。

まだまだやりたかった。

結果として4対1。私が一人で4点入れた。けれど、先生や梓に怒られた。

曰く、恋人が来たからといってやる気を出すのはどうなのか。

まとめると、この一点に尽きてしまった。

最後に先生の言ってくれたことはありがたかったけど。


「行方不明だった彼氏がいるんだろ?さっさと会いに行ってきな?」

「え……?いいんですか?」

「その代わり、反省文としごき覚悟しとけよ」

「は……はい……」


しごきはともかく反省文は……。あれはやめてほしい。

先生に礼をして、私は空君のところへと走っていった。


空side

ずっとずっと、僕の意識は戻らなかった。……いや、戻ってはいたんだ。

ずっとあいつにのっとられていただけで、中から見ていた。

何が起こっているのかも理解していた。

『おい、まだ体をのっとってんのか?』

『理解するまでだ。あくまで借りているだけだしな』


それに、と続ける。


『今お前の生殺与奪は俺が握っているんだ。あんま迂闊なことは避けたほうがいいと思うが?』

『それは心配すべきことじゃないと思うな』


そう僕は『俺』に告げる。


『さすがは俺、わかってるじゃないか。もともとの主人格を殺すのは無理だからな。だけど、そろそろ俺も終わりだ』

『どーゆーこと?』


それには答えず、強制的に僕の意識を落としていった。


気がついたときはグラウンドにいた。ここは先輩たちが試合をするグラウンドのはず。


『なんでここにいるんだ?』

『そろそろお前に代わるころなんだよ』

『どーゆー意味だ?』


怪訝な表情――顔は見えてないと思うがで問うてみる。

苦笑した雰囲気がした。


『あくまでさつき先輩が好きなのは俺ではなくて僕だ。だから、そろそろ返してやるよ』

『意味わかんない!何でそんなことやってんだよ』


何で僕の体をのっとったんだよ?


『そろそろ俺にも目を向けるときだ。思い出せよ。俺が誰なのか』


そう、この態度はどこか自分に近しいものを感じている。僕の人格変容が行われてしまうようなとき……。

あのときか……?


『ご名答。俺はお前が逃避するために作った二重人格だ。別に恨んじゃいないがな、俺とお前は根幹的な部分が共通なんだよ』


つまり、と俺は続ける。


『俺もさつき先輩のことが好きだ。だけど先輩は俺じゃなくて、お前のことが好きなんだ。それが分かってるからこそ、俺は引く』

『何でだよ……。僕とおまえは同じなんだから、一緒にいればいいだろ?』

『だからそろそろお前に代わるころなんだ』


疑問が次から次へとわいてくる。


『なぜ?』

『俺が俺であることの限界。そろそろお前はすべてを見るべきだ。じゃあな』


そう言って消えた。見えはしないけど確かに消えていくのを感じた。

そして、すべてを思い出す。


どうして親が殺されたのか、どうして僕も襲ったのか。断片的ではなく、すべてが流れ込んでくる。

あいつは、こんなもんまで背負っていたのか。それに比べて、僕はここまでもろい。

心の中へ向かって呟く。


ありがとう


返事は、なかった。


意識が浮上していく。目の前には試合中のグラウンドがある。

先輩がいた。とても苦しそうにしているのが分かる。

声を出さずにいられなかった。


「先輩!!!がんばれ!!!」


その言葉をいい、試合を傍観した。

先輩の鬼神のごとき活躍で、先輩たちは勝利した。


そして僕は分かったんだ。言葉にはしにくいけど、しっかりと心に刻んだ。


試合が終わった後、少しボーっとしていた。あのかっこいい先輩が好きだ。

この気持ちは変わることがないと思う。


「空君!!」


衝撃。その後押し倒され、美人の顔が目の前にあった。僕の大好きな人。


「どうしたんですか?先輩」

「どうしたもこうしたも……心配したんだから!!!」


分かっている。僕は昔に比べたらとても恵まれているんだ。見守ってくれる人がいて、一緒に楽しく遊べる人もいる。


「ごめんなさい。そして先輩、ひとつ言いたいことがあるんですけど」

「何?言いたい事って?」

「ずっと乗っかったまんまですか?ほんとに言いたいことが言えないんですけど……」


そういうとしぶしぶといった感じで、僕の上から降りてくれた。

そして、改めて見つめなおす。


「ヤダ、恥ずかしいじゃない」


そんなつもりはなかったんだけど……。

無視して言葉を発する。


「先輩。僕はあなたのことが――」



記憶の鎖は途切れることなく、二人の心の間をつなぐ。

鎖でつながれた心は離れることなく、常に一緒に歩み続ける――

すみません!受験とその後における予習復習一次考査に手間取ってぜんぜん書き進められませんでした。

もし読もうと思っていた方がいらっしゃるなら、本当に申し訳ありません。

この場でお詫びします。

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