第三話:転校生登場
第三話
あの後、俺は傷を拭かれて、ガーゼがなくなり、ハンカチで最後押さえたという始末。
どれだけ出血してたんだ?
1週間。今は4月15日、午前10時。俺はあの日から風邪と偽って、学校へ行っていない。
後一週間は安静にしてないといけないらしく、暇なので家にある図書室で本を読みあさっていた。
図書室といってもたいそうなものではない。だいたい4畳半くらいのスペースに本が置いてあるだけだ。
主に医学関係と、スポーツ関係。後ファンタジーも好きなのでそれもある。
それすら終わると本当に暇になる。何回もあの部屋の本は読み切ったし、その他にはすることがない。
暇暇暇暇暇。今の俺の状態はこんな感じだ。
(勉強をしないといけないかもしれない。)
そう思ってしまうのはふつうだろう。そう自分にいいわけをしながら、俺は勉強をした。
-------------------紙の上に走らせるシャーペンの音が聞こえる。------------------------
そろそろ休憩するか。そう思い立ち時計をみる。
10時00分。
見た瞬間固まった。もしかして12時間も???
その通り12時間もやっていた。あり得ない集中力だ。確か英語の単語暗記・予習と、数学の予習と、社会の予習と、etc・・・・
やっていた。
この内容からして、正直1ヶ月くらい皆より進んでしまったらしい。
俺は馬鹿だ。一日にしてせっかくの勉強するということを、終わらせてしまったらしい。
先ほどまでの馬鹿な俺に叫びたくなった。
ばっかやろう!と。そしてそのまま、寝てしまった。
今までバイトしていた金で次の日、本を買い込み読みまくる。
図書室に本がまた増えたけど気にしない。
そしてさらに一週間経過した。
やっと学校へ行ける日。今日まで本を読みあさったせいで、無駄に知識が増えてしまった。
三回目の風景。特に考え事をしているわけではなく今まで読んでいた本の内容が頭を巡る。
そして徒歩。歩いていく。
学校でなにをしようか考えながら歩いていくと、前の人とぶつかった。
「すいません!えっ?」
「あ・・・大丈夫ですよ。あれ?」
何の因果か偶然か、ぶつかったのは霧月先輩だった。
「あ・・・、おはようございます。」
「おはよ〜、傷はもう大丈夫なの?」
といいながら、俺の顔を見てくる。ちょっとどきどきしてしまった。
「うん!傷は残ってないみたいね。」
先輩はぼくのことを気にかけているみたい。ちょっとうれしい。
先輩に傷の手当てをしてくれたお礼を言わないといけない。そう思って切り出した。
「この前のことですけど・・・。」
その瞬間、先輩の顔が固まった。それを無視して続ける。
「手当てしてくれてありがとうございます。お礼と言うには及ばないですけど、これあげます。」
言葉が進むごとに、先輩の顔は柔らかくなっていく。そして俺が家庭の医学・怪我という題名の本を出したとき、笑われた。
その笑みは見惚れるほど、きれいだった。
「ありがとう。でもなんでこんな本なの?」
俺は話した。先輩はこの前手当てするとき、ガーゼで拭いただけで後はなにも出来なかったこと。
自分の家にはいろいろ本があってもう暗記したから渡したと言うこと。
「先輩女子サッカー部なんですから、この本使うことになるかもしれませんよ?」
一応言っておく。その後学校に着いた。
今日登校したとき、霧月先輩といたのはもう伝えられている。学校ネットワーク恐るべし。
いろいろ質問されたが受け流して、退屈な授業を受けた。
特に親しい友はいない。一人でのんびりとすごす。
授業が始まったようだが、窓の外を見る。
じ〜〜〜〜っとみていると、車が来た。高い車だ。
やっている内容は分かり切っているので、暇だ。
そして放課後、校長室の前を通ると、聞いたことある声がした。
「・・・のクラスにして!そこ以外だったらあんまはいりたくない!」
この声は誰の声だろう?気になって待ってみた。
どなりあいをしながら、決まったようだ。おそらく希望していたクラスに入れたのだろう。
ドアが開く。
でてきた人物をみて、固まる。
「栄介と健介!?」
「おう!空じゃん!」
「久しぶりにみたけど変わってねえなぁ」
上から順に、空、栄介、健介だ。区別が付きにくいので健介には〈〉をつける。
ってだれに俺は話しているんだ?
『そうそう、俺たち転入するから。お前のクラスに。』
爆弾発言。俺の脳内を空襲する。そしてそのことがリピートされた。
とてもうれしい。いつから入って来るのかを聞いてみる。
「いつからくるんだ?」
『明日から。』
二度目の爆弾。投下される。
うれしいことを聞いてしまった。今日はいいこと目白押し!
そして問いかけてみる。
「なんでさっさとこなかったんだ?」
「そりゃ・・・お前の入った高校突き止めるためだよん。」
そういったとたん真剣な顔に二人ともなる。
『お前まだあのこと引きずっているんだろ?』
昔のことを知っている人間がいるのは、ほっとすると同時に悲しくなる。
昔のことは時に包み込む布となり、時にすべてを切り裂く刃となるのだから。
「いや・・・わかんない・・・。実際今まで考えたことがなかったし。」
「おいおい・・・。心配しているんだからYESorNOだろ。」
「悪かったな・・・・。」
空気が暗くなりかけたところで、一気に吹き飛ばすように、栄介が声を出す。
「まぁ、引きずってなかったらそれはそれでここでの生活楽しめるし!」
『というわけで市ヶ谷空君!』
二人そろって声をかけるときは、ろくなことがない。逃げようとしたが服を捕まれる。
冷や汗が流れる。
『ではこれからいろいろと教えてもらおうか!ふふふ・・・』
「これから授業あるのに〜〜〜!!!」
次は数学か・・・。あの先生ならなにも言われないだろう。
そして俺は屋上へ強制連行された。
俺とこいつらが仲がいいのは・・・
小学校のころの親友だからだ。
屋上で誘導尋問にしっかり引っかかり、ぼろぼろになりながら帰宅する俺だった。