第二十七話:心の欠片
第二十七話
さつきside
ピーンポーン
チャイムを鳴らし私は待った。でも待っていると空君のこと思い出してしまう・・・。なんで空君はあんなこといったの・・・?結局はそこに行き着く。
がちゃり
ドアが開いた音がして目の前にぼさぼさの髪をしたリョウが現れた。頑張って表情を隠しているけどねぇ・・・。正直言って自分で「寝起きです」って主張している顔だけど・・・。
「リョウ、髪ぼさぼさよ?」
「え!ほんと!?すぐ直す!あがってて!」
そう言うとリョウはすぐにどたばたと洗面所へ行った。
私・・・きつい・・・。でも、気遣ってほしいわけじゃない・・・。話を聞いて・・・!
リョウがどたばたと戻ってきた。髪型は元に戻り首の後ろでくくっている。いつもの調子に。
「んで、どうしたの?その暗い顔は。」
「やっぱ暗く見える・・・?はぁ〜あ。」
天を仰ぐ。見えたのは白色の壁紙。今の私の心は空虚。あんまり考えたくないなぁ・・・。
「なにかあったの?それも重大なこと。」
リョウが真剣な口調になる。空気がピンと張った音が聞こえた感じがした。
口を開く。あったことを告げるために。
「あのね・・・、さっき空君に「別れて下さい。」って言われたの・・・。」
それを聞いてリョウの表情が変わった。驚きの表情となり、怒りの表情へと変わる。
その変化はごくわずかなものだったが、私の目にはしっかりと分かるくらいはっきりとした変化だった。
そして、最後は嫌悪の表情になり、表情は固定された。そしてリョウが口を開いた。
「話してみな?何でも聞いてあげるから。」
私の気持ちは軽くなった。言葉一つで人を変えることもあるって実感した。
そしてためていた感情を一気に吐き出す。
「空君のバカァ〜!!!」
「いきなりそれ!?」
きょとんとした顔で振り返る。なんで突っ込まれたの?
またいろいろな感情があふれ出てくる。
「どうして別れるなんていったの!!!」
「だからなんでハイテンション!?」
またもや突っ込まれる。もう見栄を張る気力もない。
涙が、ぽろぽろ二つの目から流れ落ちる。少し、泣き止むのを待った。
「なんかね、大事な話があるって言われて公園に行ったの。そしたらなんかすごく無理しているように見えて。」
そこできる。息を吸った。
「そしたらね、いきなり別れてくださいって言われたの。どうして?なんでそこまで無理して言ったの?教えてよ・・・!」
「甘ったれんな!」
パチィィン!
いきなりリョウがきれた。私の頬にびんたする。そのことを理解するのに数秒。どうしてはたかれたの?
リョウはその茫然自失の間に、息を整えている。
「どうして・・・?」
「アンタは自分勝手か!?いっちーが無理しているって分かっているんでしょ!?なんで救わない!」
「無理しているかはどうかは分からないの!!!そんなの無理でしょ!」
気がついたら息が荒くなっていた。なんとか押さえようと努力する。
「まぁ・・・、それもそうだけどね。」
「そうでしょ?そうなの!」
無理やりその意見を通そうとしているのが、自分でも分かる。私はいつからこんな嫌なやつになっちゃったの?
「まぁいいや。とりあえず調べてみたこと教えるけど。」
そう。これが聞きたかった。私にどうしてあんな態度をとったか、それが分かる手がかりになるかもしれない。
「父親のことは言ったとおり、それ以外に何もつかめなかった。それと母親のこと。」
いったん間を空けて、私を見つめる。
「母親は一回脱獄したらしい。それで、もう死亡届が出されている。」
「嘘!・・・そんな・・・。」
ここでリョウが推論だけど、と付け加えて続きを言う。
「おそらく死刑にされたのだと思う。違う可能性もあるけどね。」
「・・・・・。」
何もいえなかった。口を開いても、脳が言葉を理解しない。理解したくない!
「その話が本当なら、空君はどれだけひどい人生を送ってたの・・・?」
私達は、何もしゃべることができなかった。それが、酷すぎて。
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栄介side
「起きろ!!!」
「うわっ!驚かすなよ!」
そういいながら俺は起き上がった。正直俺は朝に弱い。いくら直そうとしても直らない・・・。
「ほら!朝ごはんもできてるから!さっさと起きて準備しろ!」
「う〜い。分かったって。」
のんびりと着替え始めて、俺はリビングへと歩いていく。テーブルの上には目玉焼きと納豆とご飯。
朝だからボケボケで、湯飲みを持ち上げる。
「うわっちゃ!」
「お前馬鹿だろ・・・。っていまさら言うまでもないか・・・。」
そんなことを言いながら、健介が俺にタオルを渡した。
この、いつも通りの日常は唐突に壊れた。
ぴ〜んぽ〜ん
間抜けなチャイムが鳴り、健介がでる。
「誰ですか〜?って空か。どうした?」
なにを話しているかは聞こえない。だけど少しずつ、健介の表情がこわばる。
「わかった。今日はおまえは休め。家にいろ。」
そして健介が話すのをやめた。こっちを振り向き口を開く。
「空がやばい。」
「・・・!なにがあったんだ?」
「そこまでは・・・。だから俺かおまえ今日休むぞ。でないと・・・、あいつが壊れる。」
そこまで重傷か!気づいたら声を発していた。俺が休む!と。
「そっか。じゃあ今日は俺が行くから。学校で色々聞いてくる。」
「了解した。じゃあ勉強を教えてもらうか!」
スコーン!
そんな音がして頭に痛みが走る。
「はいはい、分かってますよ・・・。」
「さっさとしろ!ったく・・・、これじゃどっちが兄だかわからねえよ・・・。」
だいぶひどいな・・・。まぁいいや!
そして、俺は空の家に向かった。たった十秒だけど。
勝手にドアを開けて入った。そこには目がうつろな、まったく考えていない人形のようなものがいた。
でも、・・・俺には、なにもできない・・・。単なる傍観者でしかありえなかった俺には。
いつも、それだから争いごとにはかかわらない。だから楽。
「今回ばかりはそれを呪うよ・・・。」
そう、小さくつぶやいた。その声は、誰にも届かない。
空side
俺は何を求めている?
君はぼくを求めている。
君は誰だ?
ぼくは君。でも君はぼくじゃない。だからこそぼくを求める。
意味が分からない。何を望む?俺の望みは、・・・なんなんだ?
「「どうすればいい・・・?」」
ココロの声が重なった。俺の、ぼくの、心の中では答えは出ていない。
何年も前から、ずっと。
まだまだ遅れます
すいません・・・