第二十四話:価値観のずれ
第二十四話
人には隠したいことはたくさんある。もちろんぼくもそうだ。
傷口をえぐるのはやめて!同情なんて・・・。どうせ誰にも分からない。だから、ぼくは心を閉ざした。
それより眠い・・・。おやすみ・・・。
ぴぴぴぴっ!ぴぴぴぴっ!
目覚ましの音が聞こえる。その音で俺は目を覚ます。はぁ・・・。昨日は大変だった・・・。梓先輩・・・結局そう呼ぶことにした。いまさらあ〜ちゃんなんて恥ずかしいし。
仲直り・・・でいいのかな?とりあえず、少しずつもとの状態に戻っていくように努力する。二人でそう決めた。
ぼくが心を開かない限り、難しいけど・・・。
「少しずつ、一歩でもいいから進む・・・かぁ。難しいこと言ってくれたもんだ。」
花梨が置手紙をしていった。内容は今俺が言ったとおり。ついでにおじさんも似たようなことと、
『いつでも待っているぞ!さっさとスカウトしたいしな!』
んな馬鹿な。俺がスカウトされるほどの選手なわけないだろう!なんで俺を誘うかな・・・。
テーブルの上にはなんかいろいろ書いてある紙があったし。
「先輩・・・、きたんかぁ〜。話したくないな・・・。」
とりあえずがっこへ行こう。のんびりと支度をして外へ出る。
「ちーす!空!」
「・・・・・・・。」
バタン!
扉を閉めた。そして恐る恐るもう一度あける。
「急に閉めんなよ!」
「・・・ちょっとびびったけどさぁ。」
「黙れ、えいすけんすけ!」
「「つなげんな!」」
目の前にいたのは珍しく、栄介と健介だった。こいつら朝練ないのか?まぁ、今年はもう野球部の夏は終わってるけどさぁ。
「なんでここにいんだ?」
「おいおい・・・。この前もそうだったけどほんとに学校の行事忘れてんな・・・。」
「前置き長い。」
ぐっさぁ!
栄介は地面に座り込んで、いじけた。そして健介に目で問うた。すぐに答えてくれて疑問が氷解する。
「期末テストの一週間前だ。忘れんなよ・・・。それと、お前は一応特待生で入学してるんだろ?」
痛いところをついてくる。その通り、俺は推薦入学というやつで、学期ごとにテストで平均5番を維持しなければならない。だから次の期末は一位をとる必要がある。
最近は真面目にやってるし大丈夫だろう。・・・多分。
「ああ、そうだな。じゃあこれからお前の家に入り浸る。助っ人も呼ぶし。」
「んじゃあ、そうすっか。ほら行くぞ!」
健介は、栄介の襟をつかみながら歩き出した。「ぐえ」って聞こえたけど気のせいだな。とりあえず・・・、いくか。
そして学校へと歩き出す。気分重いけど。
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「はぁ〜〜。眠い・・・。」
この言葉は学生にとっては口癖だろう。睡眠不足ってわけじゃないんだけど・・・。無理がたたったかな?
「でも・・・先輩に会いたくないなぁ・・・。」
そう、このことで俺は気分が重い。なんか気まずいし。俺が一方的に持ってるだけではないはずだ。先輩も昨日うちに来た。って言うことは花梨から少なからず説明を受けた、っと言うことになる。
だから・・・会いたくない。
「そんなこといってもさ!無駄無駄!お前は会わないとダメだよ。お前は、過去の鎖を断ち切らないと。」
「んなこと言われなくても分かってるよ。はぁ・・・。」
栄介は軽々言うけどなぁ。お前が身軽になったからって、こっちは身軽なわけじゃないんだけどな・・・。一番理解しているやつに言われると、ちょっと気分が重い。
わかってんだけどなぁ。
「理解はできてる。・・・だけど心が認めたくない、って感じなんだよなぁ。」
「ま、そんなこともある。結局最後は自分の力で断ち切らないといけないんだ。いくら失敗しても、立ち上がって、過去から逃げない。」
久々に栄介が真面目モードになる。このときのこいつの言葉は、重い。俺よりはましな人生だったけど、それでもこいつは絶望を見たことがある。
だから、俺はこいつを信用してる。・・・聞く価値があるかどうかは別だけど。
とりあえず、俺はどうするか?それが問題だ・・・。微妙にシェイクスピア・・・。
さつきside
今は昼休み。私は彼になんていえばいい?
廊下であったときなんか露骨に避けられていたし。もうやだ・・・。
「ねぇ、リョウ。どうすればいいと思う?」
「前から思ってたけどその脈絡ない話ヤメロ。」
「ゴメンゴメン。なんかさぁ、空君に避けられちゃって。」
私はどうすればいいの?軽く問うたつもり。だけどなんかリョウが真剣になって答えた。
「無理やり聞き出すか。特にそんなことに対してのトラウマは、ないみたいだからな。」
そう!無理やりは良くないけど、やっぱそうやるべきよね!ふふふ・・・。
「ふふふ・・・。」
「ごめん、あんたがなに考えてるか時々理解できないや。」
あきれたようなリョウの声が、私の耳を通り脳へと伝わった。・・・けれどそれを私の脳は、ただの音としか認識しなかった。
とりあえず私は放課後、昇降口で待ち伏せした。もうテスト週間、部活はない。だからみんな集まってくる。
いた!
私はこっそり後ろへと周り、後をつける。話してる内容が聞こえた。
「じゃあ花梨呼ぶか。どうせあいつ暇だし。」
「・・・そっか。栄介にほとんどとられたりするもんな。あいつは後で個別で見てもらおう。」
「そうすっか!」
「俺のことそんな風にいうな〜!!!」
・・・面白い。ちょっと感性変かもしれないけど。
あ、後ろ振り向いた。ちょっとその顔はないんじゃないの?微妙に傷つくわよ?
「せ、先輩・・・。」
「はい、ちょっときなさい。」
そうやって校舎裏に連れて行った。周りの生徒の目は、気にしないことにしよう。
校舎裏に行くと、空君はこちらに顔を向ける。微妙に顔が赤い。そんなことは気にせず一気に本題へと入る。
「なんで今日避けたのかしら?」
空君は答えない。目をそらして「何のこと?」って言うオーラを出している。ばればれなんだけどね・・・。
「とりあえず分かりきってるから逃げないで答えなさい。」
「逃げないかぁ・・・。やっぱ難しいもんですね。言ってもいいですけど・・・。」
「今すぐ言いなさい!」
彼はびくっと肩を揺らし、こちらを見る。なんか無表情ね。
「やっぱ言いません。っと言おうかと思いました。・・・けど、少しずつ進まないといけないんで、ちょっと努力してみます・・・。」
なんか最後のほうで声がちっちゃくなったし。それさえなければかっこいいんだけどね。
「先輩は父さんのことは知ってるんですよね?」
「ええ。」
「俺はですね、一つ考えていたことがあるんですよ。」
そういって一回言葉を切る。ものすごくためらっている感じね。
「同情するのは、愚者の行い。次を考えるのは賢者の行い、って。所詮他人、誰にも人のことは分からない。」
それがどう関係するの?まったく分けがわからない。
「まったくわけのわかんないって顔してますね。俺にとっては先輩の行動が「愚者の行い」に見えたんですよ。俺は愚者は嫌いだから避けていたんです。まぁ、決心がついてなかっただけ、って言われればそれまでかもしれませんが。」
まったく分からなかった。空君はどれだけの秘密を抱えているのだろう?
私は・・・、もっと彼のことが知りたい・・・!
全然ダメですね・・・。
今ぼろぼろです。
もっと精進します。