第二十二話:約束の指切り
第二十二話
まず、小学校へと向かった。たいした思い出はないけど。
「あれ・・・?」
校庭を覗き込むと、何か違和感がある。なんだ?
「校舎が・・・大きくなってる。」
工事でもされたのか?6年はやっぱり長い。歩いているときも考えたような気がするが、気のせいだと思いたい。ここにはいい思い出が特にない。いじめられてたし。
「どうでもいいか・・・。とりあえず一つ目、だ。」
どうでも言いなんていっちゃだめか。もっと強くならないと。ここへ来た目的は、もう果たした。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴った。丁度授業が終わったのだろうか?でも・・・、もう俺には関係ない。
「後二つかぁ・・・。」
そう独り言をつぶやきつつ、俺は自分の家に戻り始めた。
信号を渡り、右へと曲がり、入り組んだ路地を抜ける。抜けたところには、一軒家が建っていた。
俺と、父さんと母さんが住んでいた家、感傷はない。
持ってきていた鍵を使ってドアを開ける。
ガチャリ
普通にあいた。入り込む。記憶の中で思い浮かべた映像と違う点はまったくない。
木製のテーブルに椅子。野球のポスター。
それらの全てが“きれい”になってそろっている。
・・・・・・・?何かおかしい。きれいになっている?
6年間も放置したんだぞ!?なんできれいなままなんだ?なんで記憶と一致するんだ?
だめだ・・・。データがなくて全然分からない・・・。
だけど・・・。この様子からして毎日上がりこんでるようだな。そう思い立った俺は、一回鍵を閉め、電気を消した。
無論、侵入者を捕らえる。
「腹減った・・・。それと仏壇に行かないと・・・。」
考えるのを忘れていたが二つ目の目的、ばあちゃんの仏壇をしっかりと拭かないと。
そして俺は別の部屋へと移った。廊下をゆっくりと歩く。
ばあちゃんの仏壇の前で手を合わせ、黙祷する。しばらくして、目を開ける。なぜかお供え物がおいてある仏壇を拭く。
・・・っといっても、ほとんど掃除なんかする場所がない。汚れていないのだ。
「なんでだよ・・・。明らかに不法侵入じゃないか。」
いったい誰なんだ!?物を盗むのではなく、掃除をしていくのは変人だ。この家の中には、父さんの私物が多々残っているのだから。
ガチャリ!
ドアが開いた音がする。身体の緊張。
侵入者だ!
そ〜っと玄関のほうへ近づいていく。電気がついている。念のために木刀を持ち、リビングへと歩いていく。
「〜〜〜♪」
鼻歌を歌っているようだ。そして姿を見る。
暗いところから明るいところへと出した目は、少し細めてそれの姿を見る。
何かものすごい見覚えのあるシルエットですが・・・。気のせいだろ!
完全に目がなれたところで、俺は木刀を中段で構えながら近づく。
「なにしているんですか?」
しっかりとにらみを利かせ、平坦な声で問いかける。
それはこっちを振り向き俺は目を見開く。・・・あっちもそうだったけど。
「あ・・・、梓先輩!!!!!?」
「市ヶ谷くん!????」
俺たち二人の声は、そこらじゅうに響きわたった。
「すごく驚いたじゃないですか。人の家でなにしてるんですか?」
「こっちも驚いたわよって・・・人の家?ここって市ヶ谷君の家じゃないでしょ?」
はい???確かに表札は市ヶ谷じゃないし、ここでは市ヶ谷って名乗ってなかったけど。なんで昔のことを知ってる口で話す?あまりにもおかしい。
「ここのことをどうして知ってるんですか、泥棒さん?それに、俺は確かにここに住んでいたんで。」
「なんで知っているっていわれても・・・。私は泥棒じゃなくて、ここを掃除しに来たんだけど?」
ナンデスト!?
「じゃあなんでここの鍵もってるんですか?」
「それは・・・鍵をもらったのよ。お母さんがここの家の主人と知り合いで、私がここの子と知り合いだったからね。」
「じゃあとりあえず、警察へ突き出します。」
「なんで!?」
そりゃ不法侵入者がいたら突き出すでしょ。そんくらいわかれ。でも一応家へともってくか。
「一応家の人にいってからにしますね。」
そういって俺は先輩の襟をつかみ、外へと連れ出した。
「離せって!」
「全く・・・、先輩が犯罪者になるとは・・・。で、家はどっちですか?」
「あっちだけど・・・。犯罪者じゃない!」
こんな会話を続けながら、俺は先輩の家にたどり着く。結構近場にあった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・、どうしたの?」
「・・・なんで・・・。」
結論から言うと、そこはいわゆる僕の充電所。
あ〜ちゃんの家だった。
どうして?あ〜ちゃんは引っ越したのか?そしてもう一つ、俺の頭に仮説が浮かぶ。可能性を一つずつ潰す。
「いつから此処にいますか?」
ついつい切迫した口調になる。空気が変わる。
「いつって・・・、生まれたときは此処にすんでたし、引っ越しはしてないわよ?」
後もう一つ。データがそろいさえすれば解がわかる。
「じゃあ最後に一つ質問。梓先輩の名字は・・・「高梨」ですか?」
それを告げた瞬間、梓先輩は目を見開いた。言わなくてもわかる。「なんで知ってるの!?」って思ってることだろう。
そして俺は、梓先輩の家へと乗り込んでみた。
「ちょ、ちょっと!」
なんか聞こえたけど・・・。
「おかえり〜ってなにしに来たのかしら?あなたは誰?」
その辺においてあった棒をつかみながら、俺に向ける。俺は両手をあげ反抗の意志がないことを示し、問いかける。
「高梨瑞穂さんですよね?久しぶりです。俺は・・・、僕は、赤桐空です。覚えていますか?」
「!!!???」
カランカラン
驚いてる。棒落としちゃったし・・・。とりあえず約束を果たさないと。あ〜ちゃんとの。
「あの〜・・・。」
「えええええええええええ、え〜と・・・、なに?」
「ちょっと梓先輩と話させてくれませんか?」
「いいけど・・・。なにする気?」
そんな怖い目でにらまなくてもいいのに。ぼくは好きであんなことをしたんじゃない。
「市ヶ谷くん?なにしてるの?」
後ろから声がかかる。後ろへと振り向き用件を告げる。
「ちょっと話があるんですけどいいですか?」
「いいけど・・・。」
瑞穂さんを追い出し、俺は梓先輩と向かい合う。
「久しぶりですね。梓先輩。」
「久しぶりって・・・、さっきもあったじゃない!」
「まぁ、気付いたのがついさっきですし。僕の名前は赤桐空。覚えていますか?6年前のことを。約束のことを――――。」
少しばかりの沈黙。俺と先輩は動かない。降着をうち破ったのは俺だった。
俺は寝っ転がる。梓先輩も引き寄せる。
「ちょ・・・、ちょっと!離してって!」
俺はその要求を聞かず、畳の上で目を閉じた。
「おやすみ・・・。」
僕がした約束。また一緒になにかをやろうって。指切りしたんだ。
そして俺は眠りについた。深い――安心できる眠りに。
梓side
誰かと思ったらあの空なの!?
赤桐空って・・・、あの子のことかぁ。大きくならなかったみたいね・・・。
そんなことを考えていると私は引き寄せられた。
「ちょ・・・、ちょっと離してって!」
もしかしてなにかされる!?どうしよ!
声を上げようとしたとき空はつぶやいた。弱々しい、懐かしい声を。
「おやすみ・・・。」
空が泣いている。私の前では決して泣かなかったのに・・・。
私の頬に液体が流れる。約束したよね。彼の小指と私の小指を絡ませて、私はつぶやきはじめる。
「指切った・・・。」
一人でやる指切り。これは私の罪。彼を笑顔に出来なかった・・・。
関係はないだろうけど空がつぶやいた。
「ありがとう・・・。」
私も疲れた・・・。今日こそは約束をしっかり守る。
掛け布団を持ってくる。今日はそこまで暑くない。
空にかけてあげて、その中に私も入る。男の子にしては華奢な体が体に当たる。
そこで目を閉じながらつぶやいた。
「おやすみ・・・空。」
そして私も眠りについた。
これにて第1章終幕〜。
つかれた〜でも楽しかった〜!
第二章は一章より短くなる予定ですあくまでも予定なので〜
更新ペースがしっかり守れていませんが今後も見に来てくださ〜い