第二話:学校生活三年目
あらすじ
高校に入学したばっかりの市ヶ谷 空。
いきなりリンチされちゃってますよ!
第二話
あの子をみたのは、入試の時だっただろうか?受付に最後の方であらわれて、走っていった子。
なぜかすごくかわいいと思ってしまった。ぼーっとする。
ふと下へと視線を向けると・・・、赤黒い生徒手帳が落ちていた。拾ってみると名前があり、写真が載っていた。
これはあの子のだ。そう思った瞬間に後ろから声をかけられた。
「さつき〜!何やってるの?」
「ひゃう!・・・、びっくりした〜。」
これは斑鳩リョウ。私の親友?で幼なじみだ。いろいろと噂好きで至るところで鋭い。
さりげなく私の天敵。
「で、なにしてるの〜?」
「えっ!?なっなにって・・・。」
なんでだかわからないけど、どもってしまった。その隙にリョウが行動してきた。
「ゲット〜〜〜〜!これは・・・生徒手帳?」
スリだ。絶対これはプロの域の技だ。手が全然見えなかったのは、気のせいではないだろう。
「そう。さっきの子のやつなんだけど・・・。返さないと困るよね?」
「そりゃもちろん!学校一もてるさつきからならうれしがると思うけど、かっこよかったから私が渡そうかなぁ〜。」
「う〜ん・・・、私が渡すよ。帰りに通ると思うから。」
他愛もない話をしながら、私は試験が終わるのを待っていた。
そして試験が終わりを告げた。
だけど、幾度も待てども彼はでてこない。気になり、試験会場に行ってみた。
歩いていく。誰ともすれ違わなかった。そして会場の目の前についた。
ドアをノックしてから開ける。あの子は確かにここだったのにいない。
「神隠し!?」
んなわけない!っておもいながら入っていった。
それでもいない。一度リョウのところに戻ってみた。
「さっき通っていったよ〜?ちょっと遅かったね。」
ついた瞬間、そう声をかけられがっくり来た。でも、なんであわなかったのだろう?
そう聞いてみた。
「なんか新入生代表の挨拶するらしいよ?あの子。」
新入生代表の挨拶・・・、今年もっとも成績がよかった人がやるものだ。
あの子がやるとは・・・。頭がいいのね〜。
今日は四月八日。
入学式があった。なぜか生徒会役員になっている私は、まえでいろいろと走り回っていた。
新入生代表の子がこない。さっきから私の頭を支配しているのはそのことだった。
「ただいまつきました!ついでに眠いです!」
なんでこんなこと暴露しているんだろう?ちょっと笑ってしまった。
でも笑っていたのは私だけで、ほかのみんなはしらけた目線を送っていた。
そのあとなんだかしゅんとなって、謝っているみたい。
その後呼ばれて、新入生代表の挨拶に行っちゃった。特にさしあたりないようなことを話している。
みんないろいろとあのこのこと噂しているみたい。確か名前は、市ヶ谷空君だよね。
うん!おぼえておこっと!
三年になっても退屈なままの話が終わり、私はみんなとサッカーの話をするために、ほかのクラスのところへ行った。
行く途中男子がみていた気がするけど、気にしないで行くことにした。
友達のところへ行くと、なぜかみんないなかった。私はきょろきょろして探した。そのときに声をかけられた。
「どうしたの?」
誰だったかは忘れたけど、一応答える。みんながいないこと、話をしに来たこと等々。
「さっき体育館裏に行ったみたいだよ?」
「ありがと!んじゃね。」
教えてもらうと、さっさと走る。今日は新入生が、部活見学にくるかもしれないのだ。
その相談をしないと!
体育館に行くと、土を盛り返したような痕があった。確かあの二人はウサギを飼育していたはず。
だから埋めに来たんだ。納得してここを立ち去ろうとする。
今思うと、どうしてさっさと帰らなかったのだろう。どうしてあの男が、不良集団の仲間だと、気づかなかったのだろう。
いきなり突き飛ばされた。感じられたのはそれだけだった。
「え・・・?」
突き飛ばされてショックのせいでよく聞こえない。なにを言っているの?
でも、そんなときに、彼の声は、聞こえた。
「先輩!早く逃げて!」
金縛りにあっていた、私を動かす呪文。それは私の奥深くまで響き渡ってきた。
心の中でありがとうと叫びながら、私は教室に戻って、着替えて荷物を持って部室へ行った。
そこで二人を見つけ、いろいろ話をしていた。
でも彼はどうしたのだろう?大丈夫かな?とか思いながら、飛び込んできたみたいだし、大丈夫!
と元気づけながら練習した。
部活が終わる時刻になり、一時も心を離れなかったことを考えていた。
上の空らしく、後輩に恋でもしてる?なんて言われる始末。
そしてあの子・・・空君を探しに行った。
そこに空君は倒れていた。ちょっと移動したのだろう。石の床の上で寝ていた。
「大丈夫?思いっきり怪我してんじゃん。ほら寝っ転がってて。」
私は持っていたガーゼを水に濡らしてから、顔の傷口につけた。
「きりづふぃふぇんふぁい?俺なら大丈夫・・・じゃないですね。」
うそをつきかけていたので、にらんでやった。そしてお礼を言う。
「助けてくれてありがとう!危なかった〜〜〜。それとさっき失礼なこと考えてなかった?」
「考えてませんよ?気にしないでください。ぼくが弱いから蹴られたんで。」
ぼく?もしかして俺って作って言ってたのかな?ぼくの方がこの子は似合ってる。
「ぼく?さっきまで俺って言ってなかった?まぁいいけど。」
一応聞いてみる。でもなんか不安な顔になっている・・・。
「かわいいよ?ぼくって言っているほうが。」
だから私は本心を告げた。上から見ていると、とてもきれいな瞳。俺って言っている時より、ぼくって言っているほうが、
もっときれいだとおもったから。
「ありがとうございます。先輩。」
「ありがとうを言うのはこっちの方よ!ありがとう!」
お礼を言ったときの顔がかわいくて、つい・・・。
「うわぁ!!!」
抱きしめてしまった。そしてしっかりと介抱する。
そんなこんなで、波瀾万丈の一日は終わりを告げた。
「守ってくれてありがとう・・・。」